“良かれと思った相続対策”が否認される時代へ
「相続税対策をしています。」
最近、オーナー様やご相談者様からこの言葉を聞く機会が非常に増えました。しかしその一方で、“節税したつもりが税務署から否認される”ケースも増えています。
特に不動産オーナー様の場合、
- 生前贈与
- タワマン節税
- 名義変更
- アパート建築
- 現金移動
など、「昔は通用した方法」が現在では厳しくチェックされる時代になっています。
今回は、実際によくある“税務署に狙われやすい節税”について、分かりやすく解説していきます。
なぜ最近、税務署は厳しくなっているのか?
結論から言うと、「露骨な節税」が増えたからです。
相続税は、資産を多く持つ方ほど大きな金額になります。そのため、「少しでも税金を減らしたい」と考えるのは当然のことです。
しかし近年、インターネットやSNSなどで、
- “簡単にできる節税”
- “誰でもできる相続税対策”
- “合法的に相続税ゼロ”
といった情報が大量に出回るようになりました。
当然、税務署側も警戒を強めています。特に現在は、「形式ではなく実態を見る」という流れが非常に強くなっています。
つまり、書類上は問題なく見えても、「実際には相続税逃れでは?」と判断されると、否認される可能性があるのです。

要注意① 名義預金
相続税調査で非常に多いケースです。
名義預金とは?
簡単に言うと、“名義だけ家族にしている預金”のことです。
例えば、
- 子供名義の通帳
- 孫名義の口座
- 妻名義の預金
などが代表例です。
しかし実際には、
- お金を入れているのは親
- 通帳を管理しているのも親
- 印鑑も親が持っている
- 子供は存在すら知らない
このような状態の場合、税務署は「実質的には親の財産」と判断する可能性があります。
「子供名義なら大丈夫」は危険
以前は、「とりあえず子供名義にしておけばOK」という認識の方も少なくありませんでした。しかし現在は違います。
税務署は、
- 入出金履歴
- 通帳管理者
- 印鑑管理
- 資金移動の経緯
などを細かく確認します。特に相続発生前後で不自然な動きがあると、かなりチェックされやすくなります。

要注意② 生前贈与の勘違い
生前贈与は非常に有効な相続対策ですが、やり方を間違えると危険です。
毎年110万円贈与しているから安心?
よくあるのが、「毎年110万円以内だから非課税ですよね?」というケースです。
確かに、年間110万円以下の贈与には基礎控除があります。しかし問題は、“本当に贈与が成立しているか”です。
例えば、
- 毎年同じ時期
- 同じ金額
- 同じ口座へ振込
- 契約書なし
このような場合、税務署から「最初からまとめて贈与する予定だったのでは?」と判断されることがあります。
これを“定期贈与”と呼びます。定期贈与と判断されると、後からまとめて課税される可能性があります。
贈与は「渡した」だけではダメ
贈与は、
- あげる人
- もらう人
双方の合意が必要です。
つまり、子供が認識していない時点で、そもそも贈与が成立していない可能性があります。
さらに、
- 通帳管理が親
- 印鑑も親
- 引き出し自由なのも親
この状態では危険です。
要注意③ タワマン節税
ニュースでも話題になった「タワマン節税」。一時期、非常に人気がありました。
なぜ節税になったのか?
相続税では、不動産は「時価」ではなく、
- 路線価
- 固定資産税評価額
などを基準に評価します。
そのため、市場価格1億円の物件でも、相続税評価額が5,000万円程度になるケースもありました。
つまり、“現金より不動産の方が相続税評価が低い”という状況だったのです。
特にタワーマンション高層階は市場価格との乖離が大きく、節税商品として利用されていました。
しかし現在は厳格化
国税庁も当然、この流れを把握しています。そして近年、「行き過ぎた節税」について厳しく見られるようになりました。
特に、
- 高齢で購入
- 購入後すぐ相続
- 明らかに節税目的
などの場合は注意が必要です。
実際に裁判でも、「著しく不適当」として税務署側の主張が認められたケースがあります。

要注意④ 相続直前の現金移動
相続直前に、
- 大量出金
- 家族への送金
- 現金化
などを行うケースがあります。しかしこれも非常に危険です。
税務署は銀行口座の履歴を確認できます。そのため、「亡くなる直前に急に資金が消えた」となると当然チェックされます。
「現金で渡した」は通用しない
特に危険なのが、“証拠が残らない現金移動”です。
例えば、
- タンス預金
- 現金手渡し
- 家族保管
など。
本人は「もう渡したから自分の財産じゃない」と思っていても、客観的証拠がなければ認められないケースがあります。

要注意⑤ アパート建築による節税
不動産オーナー様で多いのが、「相続税対策としてアパートを建てませんか?」という提案です。
確かに、土地活用によって相続税評価が下がるケースはあります。しかし、“節税だけ”を目的にすると危険です。
建てた後に苦しむケースも多い
実際には、
- 空室増加
- 修繕費増加
- 金利上昇
- 家賃下落
などで、相続対策どころか「収支が悪化する」ケースもあります。
特に最近は、人口減少や供給過多エリアも多く、“建てれば安心”という時代ではありません。
税金だけで判断してはいけない
本当に重要なのは、「その不動産が将来も収益を生むか」です。
節税だけを優先すると、次世代に大きな負担を残す可能性があります。
税務署が本当に見ているポイント
税務署は単純に、「節税=悪」と言っているわけではありません。問題なのは、“不自然かどうか”です。
例えば、
- 実態があるか
- 合理性があるか
- 説明できるか
- 継続性があるか
これらが非常に重要になります。
「みんなやっている」は危険
相談現場でも非常によく聞くのが、「知り合いもやってるから大丈夫」という言葉です。
しかし税務は“個別判断”です。他人が問題なかったからといって、自分も安全とは限りません。
家族構成も違えば、財産状況も違います。

本当にやるべき相続対策とは?
重要なのは、「税金だけを見る」のではなく、“家族全体の将来”を見ることです。
例えば、
- 誰が不動産を引き継ぐのか
- 管理できる人はいるのか
- 空き家にならないか
- 修繕費を負担できるか
- 家族が揉めないか
こうした視点の方が、実ははるかに重要です。
不動産オーナーこそ“早めの整理”が重要
特に不動産は、現金と違って簡単に分けられません。
そのため、
- 共有名義問題
- 管理問題
- 売却問題
- 空室問題
などが発生しやすくなります。
さらに高齢化により、家族が物件状況を把握していないケースも増えています。

まとめ|「節税」より大切なこと
相続対策は非常に重要です。しかし、“やり方を間違えると逆効果”になることがあります。
特に現在は、税務署も
- 名義預金
- 生前贈与
- タワマン節税
- 不自然な資金移動
などを厳しくチェックしています。
だからこそ大切なのは、「本当に意味のある対策か?」を考えることです。
相続は、単なる税金の話ではありません。
- 家族
- 不動産
- 将来の管理
- 次世代への承継
すべてが関係してきます。
目先の節税だけで判断せず、“家族にとって本当に良い形”を考えることが、最も重要なのかもしれません。

相続・不動産管理のご相談について
当社では、不動産オーナー様向けに、
- 相続前の不動産整理
- 管理状況の確認
- 空室対策
- 家族承継の整理
- 売却・活用相談
なども行っております。
「うちは大丈夫かな?」
という段階でも問題ありません。お気軽にご相談ください。
