はじめに:2026年、グローバル化がもたらす「光と影」
円安の定着や日本の都市開発の進展、そしてアジア圏を中心とした富裕層の「資産分散」ニーズを背景に、日本の不動産市場における外国人投資家の存在感は2026年現在、かつてないほど高まっています。
都心のハイエンドマンションから、地方のニセコ・白馬といったスノーリゾート、さらにはインバウンド需要を見込んだ一棟ホテルまで、投資対象は多角化。不動産事業者にとって、外国人オーナーとの取引はもはや「特殊な事例」ではなく、日常のビジネスチャンスとなりました。
しかし、その輝かしいチャンスの裏には、国内取引の常識が一切通用しない**「致命的な落とし穴」**が潜んでいます。2024年以降の税制改正や、マネー・ローンダリング対策の厳格化、そしてデジタル化社会ゆえのコミュニケーションの複雑化など、リスクの形も進化しています。
「良かれと思ってやったことが、実は脱税の片棒を担いでいた」 「本人確認の不備で、会社が行政処分の対象になった」 「家賃送金のトラブルで、オーナーから巨額の損害賠償を請求された」
こうした悲劇は、正しい知識と2026年版の最新ルールさえ知っていれば未然に防げるものです。本コラムでは、プロフェッショナルが直面する課題を「契約・法律」「税務」「管理実務」の3つの軸で徹底解説します。
第1章:契約・法律面の落とし穴 ―― 2026年の「コンプライアンス」基準
取引の入り口である「本人確認」と「契約締結」。ここを甘く見ることが、会社を破滅させる最大のリスクとなります。
1. 「厳格な本人確認」は義務であり、防衛策である
2026年、FATF(金融活動作業部会)による第四次対日相互審査以降、日本の不動産業界に対する「犯収法(犯罪による収益の移転の防止に関する法律)」の遵守基準は極めて厳格化されています。
非居住者オーナーの場合、以下の書類を完璧に揃える必要があります。
- パスポートの写し: 有効期限内であることはもちろん、ICチップ情報の確認が求められるケースも増えています。
- 住所証明書: 本国の公的機関が発行した書類。2026年現在は、デジタル署名付きの公証書類が増えていますが、これに「アポスティーユ(外務省の証明)」が付与されているかどうかが、実務上の信頼性の分かれ目です。
- サイン証明書(宣誓供述書): 印鑑文化のない海外において、署名が本人のものであることを証明する必須書類です。
【落とし穴】 「以前取引があったから」「有名な投資家だから」という理由で書類を簡略化することは許されません。万が一、その資金が不適切なルートからのものであった場合、事業者は「2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金」といった刑事罰に加え、宅建業法に基づく「業務停止」という致命的なダメージを受ける可能性があります。
2. デジタル契約と「意思決定」の壁
2026年は電子契約が完全に普及していますが、外国人オーナーとの間では「プラットフォームの互換性」が新たな課題となっています。 時差がある中で、日本の電子契約システムに相手がアクセスできない、あるいは操作方法が伝わらないといった事態が、取引のスピードを削ぎ落とします。
また、言語の壁も深化しています。生成AIによる翻訳精度は上がりましたが、**「法的な解釈の齟齬」**はAIだけでは解決できません。「契約解除の条件」や「損害賠償の範囲」など、日本語のニュアンスが正確に英語(あるいは相手の母国語)に反映されているか。専門家による「リーガル・チェック済みの英文契約書」を用意しておくことが、2026年のプロの標準装備です。
3. 海外送金と「CBDC・暗号資産」の影
2026年、一部の国では中央銀行デジタル通貨(CBDC)の利用が進んでいますが、日本の不動産実務における着金は依然として銀行送金が主流です。
- 高額な仲介手数料・中継手数料: 一回の送金で1万円以上のコストがかかることもあります。
- 為替変動リスク: 決済日と着金日のタイムラグによる「手取り額の差」が、オーナーの不満に直結します。 これらを「どちらが負担するか」を契約書で明文化していないと、決済当日にトラブルに発展します。

第2章:税務面の落とし穴 ―― 「源泉徴収」という名の地雷
本稿で最も強調したいのが、この税務リスクです。ここでのミスは、オーナーだけでなく「管理会社」や「入居者」にまで直接的な金銭的損失を波及させます。
1. 源泉徴収義務:知らないと「自腹」を切ることに
日本の所得税法では、非居住者(海外オーナー)に対して賃料や売買代金を支払う際、支払う側が所得税を天引きして国に納付する「源泉徴収」の義務を課しています。
【ケースA:賃料の源泉徴収】 非居住者オーナーの物件を借りる「賃借人」には、原則として**20.42%**の源泉徴収義務があります。
- 例外: 借主が「個人」で、かつ「自分や親族の居住用」として借りる場合は免除。
- 地雷ポイント: 借主が「法人(社宅)」や、個人でも「事務所・店舗」として借りる場合は、源泉徴収が必須です。
管理会社が、借主(法人)から30万円の賃料を預かり、そのままオーナーに送金してしまった場合、後日、税務署は「納税していない借主(法人)」を追及します。借主は「プロである管理会社が教えてくれなかったせいで、追徴課税(不納付加算税・延滞税)を食らった」と激怒し、管理会社はその損害を賠償せざるを得なくなるのです。
【ケースB:売買代金の源泉徴収】 非居住者オーナーから物件を購入する「買主」には、売買代金の**10.21%**の源泉徴収義務があります。
- 地雷ポイント: 仲介会社が「買主から売主へ、代金全額を振り込んでください」と案内するのは、プロとして失格です。買主は代金の約10%を税務署に納め、残りを売主に支払わなければなりません。もし全額払ってしまったら、買主は海外にいる売主からその10%を回収しなければなりませんが、これは現実的に不可能です。結果、仲介会社への巨額の損害賠償請求へと発展します。
2. 「納税管理人」の選任と法的責任
2026年、税務当局による海外資産の捕捉精度は飛躍的に向上しています。非居住者オーナーが日本で確定申告を行うためには「納税管理人」の選任が不可欠です。
不動産管理会社が納税管理人を引き受けるケースは多いですが、これは単なる「郵便物の受け取り係」ではありません。
- 固定資産税の納付
- 所得税の確定申告(提携税理士との連携)
- 還付金の受け取り管理 これらを適切に行わないと、オーナーの資産が差し押さえられるリスクがあります。2026年の実務では、管理委託契約とは別に「納税管理人業務に関する契約書」を締結し、責任の所在と業務報酬を明確にすることが必須となっています。

第3章:管理実務面の落とし穴 ―― 「現場」で起きる摩擦
法律や税務がクリアになっても、日々の管理業務には「物理的な距離」と「文化の差」という壁が立ちはだかります。
1. 修繕対応の遅延と被害拡大
漏水やエアコン故障などのトラブルが発生した際、国内オーナーであれば即断即決が可能です。しかし、海外オーナーの場合、連絡がつくまでに半日、説明して納得を得るまでにさらに数日……。その間に被害が拡大し、下の階の入居者から多額の損害賠償を請求される事態が多発しています。
2026年の管理実務では、**「事前承認枠(プリ・オーソリゼーション)」**の設定が推奨されます。 「10万円以下の修繕については、管理会社の判断で行い、事後報告とする」といった特約を管理委託契約に組み込んでおくことが、入居者の満足度維持とリスク回避の唯一の道です。
2. 原状回復と「日本の常識」の不一致
退去時のクリーニング費用や、経年劣化による壁紙の貼り替え。これら「日本の慣習的な負担区分」は、海外オーナーにはなかなか理解されません。「なぜ使えるものを替えるのか?」「なぜ清掃代をオーナーが持つのか?」といった反論に対し、論理的なデータと英語でのエビデンス提示が求められます。
3. AI時代だからこそ求められる「信頼の可視化」
2026年、オーナーはスマホアプリ一つで物件の状態や収支をリアルタイムで確認できることを期待しています。 「連絡が遅い」「収支報告書が見づらい」といった不満は、即座に「管理会社の変更」に繋がります。外国人オーナー向けには、クラウド型の管理システムを導入し、透明性の高いコミュニケーションを維持することが、長期的な契約継続の鍵となります。

まとめ:リスクを「仕組み」で制し、2026年の勝者へ
外国人(非居住者)オーナー案件は、確かに手間がかかり、リスクも大きいものです。しかし、多くの競合が「面倒だから」「怖いから」と敬遠するこの領域こそ、専門知識を備えたプロフェッショナルにとっては「ブルーオーシャン」となります。
2026年の不動産ビジネスにおいて成功するための3か条を提案します。
- 「標準」を疑い、特約を磨く: 国内向けの雛形契約書を捨て、非居住者専用の管理委託契約・売買契約書を構築すること。
- 専門家ネットワークを武器にする: 非居住者税制に強い税理士、国際法務に強い弁護士、海外送金に強い金融機関との連携を「自社のサービス」として組み込むこと。
- 徹底したデジタル・ディスクロージャー: 物理的な距離を埋めるのは、誠実な報告と最新のITツールであると認識すること。
リスクを単なる恐怖として捉えるのではなく、適切に「管理・コントロール」できる仕組みを作ること。それができた時、あなたは外国人投資家から「日本で最も信頼できるパートナー」として選ばれるはずです。
株式会社アブレイズパートナーズは、こうした高度な専門知識と最新の市場動向を武器に、オーナー様の資産価値を最大化するお手伝いをいたします。本コラムが、皆様のグローバルなビジネス展開の一助となれば幸いです。
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