少子高齢化時代の賃貸経営は「高齢者向け賃貸住宅」に注目
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- 賃貸経営得情報
少子高齢化は、 日本社会や経済全般に大きな影響を与えている課題の1つです。
もちろん賃貸住宅市場や賃貸経営も例外ではありません。
これから賃貸経営を始めようと検討している人や、オーナー様の中には、
「人口減少により、賃貸住宅が過剰になるのではないか?」
「家賃が低下したり、空室が増えたりするのではないか?」
と不安を抱いている人も多いのではないでしょうか。
賃貸経営は長期にわたるビジネスなので、将来の人口動態や人口構成に影響を受けることは避けられません。
少子高齢化が進むと、賃貸住宅へのニーズが変化したり、市場での競合が激しくなったりする可能性があるでしょう。
しかし見方を変えれば、少子高齢化時代に応じた賃貸経営をすれば、優良なマーケットを獲得することが可能です。
賃貸住宅市場では、「高齢者向け賃貸住宅」が成長市場として注目されています。
そこで
■高齢者向け賃貸住宅のマーケットの将来性
■高齢者向け賃貸住宅の要件
■高齢者向け賃貸住宅の種類
■高齢者向け賃貸住宅の補助金や公的支援
について解説。
少子高齢化時代を乗り切る賃貸経営方策の1つとして、「高齢者向け賃貸住宅」が気になっている人は、ぜひ参考にしてください。
少子高齢化による賃貸住宅の問題
少子高齢化と人口減少が進行すると、賃貸住宅市場には、次のような問題が生じると考えられます。
人口減少による空室の増加
賃貸住宅経営の主なターゲットは、学生や社会人の単身者や持ち家購入前のファミリー層で、いわゆる生産年齢人口に該当する人です。
少子高齢化が進行すると、こうした人の絶対数が減少するため、賃貸住宅への入居希望が減少し、空室が増加するおそれがあります。
高齢者の賃貸住宅への入居希望の増加
厚生労働省の推計によると、2040年には65歳以上の高齢者は人口の35%を占めるとされています。
人口減少と高齢化はその後も進行し、2065年には総人口が9000万人に減少し、そのうち高齢者が占める割合は約40%に達すると見込まれています。
人口に占める高齢者の割合が増加すると、賃貸住宅に入居を希望する高齢者も増加していくでしょう。
その一方で、無職の高齢者、特に単身の高齢者は家賃滞納や孤独死のリスクが高いとされ、入居者審査で敬遠されています。
そのため、高齢者を受け入れる、あるいは高齢者が快適に生活できる賃貸住宅の数は少ないのが実情です。
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「高齢者向け賃貸住宅」の将来性
高齢者は
・定職がなく家賃滞納のリスクが高い
・孤独死のリスクがある
といった理由で、賃貸住宅市場からは敬遠されがちです。
しかし、高齢者の多くは
・公的年金という「安定した収入源」を持っている
・失業やリストラにより収入を失うリスクがない
・平均的に現役世代より多額の金融資産を保有している
という安定した経済基盤を持っている層も多いです。
高齢者に多いリスクを防止するために
・孤独死を防ぐセンサー等の設置
・定期的な見守り訪問サービスの実施
といった工夫を行うことで、高齢者に安心して賃貸住宅を契約してもらうことが可能です。
こうした「高齢者向け賃貸住宅」は、将来的に成長が見込まれる優良なマーケットであると言えるでしょう。
賃貸住宅へ入居を希望する高齢者の特徴
賃貸住宅へ入居を希望する高齢者は、自由度の高い生活を送りたいという方が多いです。
有料老人ホームや介護施設では、入局やリハビリなどの時間が決まっています。
高齢者向け賃貸住宅では、ご自身の思いどおりのスケジュールで生活できます。
また、賃貸住宅を希望する理由として
・以前住んでいた賃貸物件の建て替えによる引っ越し
・持家が広すぎるために住み替えた
などがあり、自立した生活を送りたいという思いもあります。
「高齢者向け賃貸住宅」の要件
少子高齢化社会の到来と、高齢者が住みやすい住宅を確保するために、2001年に「高齢者の居住の安定確保に関する法律」が制定されました。
これにより、下記のように高齢者が住みやすい優良な賃貸住宅の要件が示されました。
事故を防止するための間取りや仕様
・転倒などの事故を防止し、車椅子でも居住可能な間取りや広さ(床面積が25㎡以上)であること
・段差の解消や手すりの設置などバリアフリー仕様で作られていること
緊急事態の対処装備や見守りサービス
・緊急時に室内から外部へ通報可能な装置を設置していること
・もしくは、定期的な見守り訪問などの実施など孤独死防止対策が行われていること
「高齢者向け賃貸住宅」の種類
高齢者向け賃貸住宅は、設備やサービス内容などに応じて
・高齢者向け優良住宅
・サービス付き高齢者住宅(サ高住)
の2種類があります。
高齢者向け優良賃貸住宅
高齢者向け優良賃貸住宅は、バリアフリーなど高齢者が住みやすい仕様で作られており、
・緊急時の通報装置の設置が必要
・自立生活が可能で介護の必要がない人
・デイサービスなどの生活支援を受けている人
を主な対象にしています。
サービス付き高齢者向け賃貸住宅(サ高住)
サ高住は2011年からスタートした高齢者専用の賃貸住宅で、2019年には全国で約28万戸が運営されており、年々増加しています。
(参考:国土交通省「サ高住の現状と課題」より)
サ高住の特徴は、
・バリアフリー仕様で作られている
・介護士による生活支援サービスや毎日の安否確認を受けられる
ことが特徴です。
また、
・レストランやデイサービスの施設を併設している
こともあります。
介護が必要になった場合は、在宅介護サービスを利用し、重度の介護が必要になった場合は、外部の介護施設に入居するのが原則です。
ただし、介護事業者が運営するサ高住の中には、重度の介護や看取りを行うところもあります。
サ高住経営の問題点
全国で増加しているサ高住(サービス付き高齢者向け賃貸住宅)ですが、運営などにおいて
・運営の専門知識やノウハウが必要
・建築・運営の相談先が限定される
などの問題点があります。
運営の専門知識やノウハウが必要
通常の賃貸経営のほかに、介護に関する知識やノウハウも必要になります。
全国的に見ても実際に運営を行っているのは、介護系事業者が約7割を占めています。
(参考:国土交通省「サ高住の現状と課題」より)
建築・運営の相談先が限定される
高齢者の増加により、サ高住の需要は増えていますが、人手不足などの理由から介護事業者の倒産や経営破綻が増えています。
建築や運営の相談先として実績が豊富な事業者が見つかるまでは、苦労することが多いです。
高齢者向け賃貸住宅へのリフォームで気をつけること
現在所有している賃貸物件を高齢者向け賃貸住宅へ、リフォームしようと計画しているオーナー様もいると思います。
ここからは、バリアフリーのほかにもリフォームで気をつけることをご説明します。
床材はすべりにくいものへ取り替える
高齢者は、室内で転倒する事故が起こりやすいです。
フローリングなどのすべりやすい床材だと、転倒のリスクが高まります。
転倒を防止するために、すべりにくい床材である
・クッションフロア
・コルク
・フロアタイル
・タイルカーペット
などへ取り替えましょう。
断熱材や全館空調を導入する
入浴のときなど、温度の急激な変化には注意が必要です。
特に怖いのが、ヒートショック現象。
ヒートショック現象とは、温度の急激な変化により血圧が上下に変動し、湿疹や心筋梗塞などが起こる健康被害のことです。
室内の温度変化を少なくするためにも、断熱材や全館空調で対応しましょう。
扉は引き戸など使いやすいものへ取り替える
扉も引き戸タイプの方が、高齢者は操作しやすいです。
開き戸から引き戸へ取り替えることにより、高齢者の負担が少なくなります。
また、車椅子でも引き戸タイプだとスムーズに出入りしやすいです。
コンセントの位置を高くする
一般的なコンセントの高さは、床から20〜25cmとなります。
高齢者は、かがむことも負担になります。
床から40〜45cmまで高くすることで、負担が少ないです。
「高齢者向け賃貸住宅」への公的支援や補助金
増加する高齢者の住宅を確保し、在宅介護を推進するため、 高齢者向け賃貸住宅には様々な公的支援や補助金制度が設けられています。
高齢者向け優良賃貸住宅への公的支援
高齢者向け優良賃貸住宅には、自治体から家賃補助が行われます。
高齢者向け賃貸住宅はバリアフリー仕様など建築コストが高くなるため、通常の賃貸住宅より家賃設定を高くする必要があります。
ただし、自治体からの家賃補助を受けることで、入居者負担が減り、入居しやすくなっています。
自治体による家賃補助の具体的な内容や要件は、以下の例のとおりです。
サ高住への公的支援と補助金制度
サ高住は、高齢者向け優良賃貸住宅より、公的補助が充実しており
・建設費への補助金支給
・不動産取得税、固定資産税減免などの税優遇
・入居者への家賃補助などの支援策
が設けられています。
例えば大阪府では、所得制限などの要件をクリアした場合に、入居者に月額2万円の家賃補助が出ます。
まとめ
高齢者向け賃貸住宅は、建設や運営に関して介護事業者などとの提携が必要な場合が多く、通常の賃貸住宅より手間とコストがかかります。
ただし、高齢者向け優良賃貸住宅や、サ高住は、高齢化が進行するにつれて需要が増える成長市場であることは間違いありません。
「将来の賃貸経営に不安を抱いている」
というオーナー様は、高齢者向け賃貸住宅の経営を検討されてはいかがでしょうか。