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「相続直前にアパートを買えば節税」は通用しない?2027年から変わる貸付用不動産の相続税評価|賃貸アパート・賃貸マンション経営の知識

「現金を不動産に換えると、相続税を抑えられる」

このような話を聞いたことがある賃貸物件オーナーも多いのではないでしょうか。

実際、不動産は相続税を計算する際、売買価格そのものではなく、国税庁が定める方法によって評価されます。そのため、現金で保有するよりも相続税評価額が低くなるケースがあり、不動産の購入やアパート建築が相続対策として活用されてきました。

しかし、令和8年度税制改正の大綱では、貸付用不動産の市場価格と相続税評価額の差を利用した、相続直前の不動産購入に対する見直しが示されました。

一定の貸付用不動産については、2027年1月1日以後に発生する相続や贈与から、従来よりも市場価格に近い金額で評価される方針です。対象となる物件では、これまで想定していたほど相続税評価額が下がらない可能性があります。

今回は、賃貸アパートやマンションを所有しているオーナーに向けて、何が変わるのか、どのような物件が対象になるのか、今後どのような準備が必要なのかを分かりやすく解説します。

※本記事は2026年7月時点で公表されている情報をもとに作成しています。具体的な税額や制度の適用については、税理士などの専門家へご確認ください。

目次

なぜ不動産の購入が相続税対策になるのか

今回の改正を理解するためには、まず、これまで不動産が相続対策として利用されてきた理由を知っておく必要があります。

現金は基本的に額面どおり評価される

例えば、相続が発生した時点で預貯金を1億円保有していた場合、原則として、その1億円が相続税を計算する際の財産額になります。

一方、不動産については、実際に売却できる価格ではなく、相続税上の評価方法に従って計算します。

土地は路線価や評価倍率などをもとに評価され、建物は固定資産税評価額をもとに評価されます。そのため、購入価格や市場での売買価格と、相続税評価額との間に差が生じることがあります。

この差を利用し、現金でアパートやマンションを購入することで、相続税の対象となる財産額を圧縮する方法が広く知られてきました。

賃貸中の不動産はさらに評価が下がることがある

所有者が自由に使用できる自宅とは異なり、入居者がいる賃貸物件は、所有者の都合だけで自由に利用したり、入居者を退去させたりすることができません。

このような利用上の制限があることから、賃貸中の建物やその敷地は、一定の割合を差し引いて評価されます。

現行の一般的な評価方法では、アパートなどの建物は、固定資産税評価額から借家権割合と賃貸割合を考慮した金額を差し引きます。

土地についても、貸家の敷地として使用されている「貸家建付地」に該当する場合、自用地としての評価額から、借地権割合、借家権割合、賃貸割合を考慮した金額を差し引いて評価します。

そのため、同じ不動産であっても、自分で使用している場合と入居者に貸している場合とでは、相続税評価額が異なる可能性があります。

これまで問題視されてきた「相続直前の不動産購入」

不動産の相続税評価は、一定のルールに基づいて計算されます。

一方、実際の不動産価格は、立地、築年数、賃料、利回り、建物の状態、周辺の取引事例など、さまざまな要素によって決まります。

このため、取得したばかりの収益物件について、購入価格と相続税評価額の間に大きな差が生じるケースがありました。

例えば、高額な賃貸物件を購入した直後に相続が発生した場合、相続人が実質的には高い価値の不動産を引き継いでいるにもかかわらず、相続税上は購入価格よりも相当低い金額で申告できる可能性があります。

こうした市場価格と相続税評価額の差を利用した対策について、課税の公平性という観点から見直しが進められることになりました。

今回の改正は、賃貸経営そのものを否定するものではありません。主に、相続や贈与の直前に不動産を取得し、短期間で評価額を大きく下げる対策を抑えることが目的と考えられます。


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2027年から貸付用不動産の評価はどう変わるのか

令和8年度税制改正の大綱では、貸付用不動産の市場価格と相続税評価額との乖離を踏まえ、新しい評価方法を導入する方針が示されています。

相続前5年以内に取得・新築した物件が対象

新しい評価方法の対象となるのは、被相続人などが相続や贈与の課税時期前5年以内に、対価を伴う取引によって取得または新築した一定の貸付用不動産です。

分かりやすくいえば、亡くなった方が相続発生前の5年以内に購入した賃貸アパートや賃貸マンション、または新築した一定の賃貸建物などが対象になる可能性があります。

ここでいう「課税時期」とは、相続の場合は原則として被相続人が亡くなった日、贈与の場合は財産を取得した日です。

取得から5年を超えて所有している貸付用不動産については、今回示されている5年以内取得の見直しの対象からは原則として外れます。

したがって、2027年以降、すべてのアパートやマンションの相続税評価が一律に高くなるわけではありません。

市場価格に近い金額で評価される

対象となる貸付用不動産は、課税時期における「通常の取引価額に相当する金額」で評価する方針です。

また、課税上の問題がない場合には、取得価額をもとに地価の変動などを考慮して算定した金額の80%相当額で評価できるとされています。

従来の路線価や固定資産税評価額を中心とした評価よりも、実際の購入価格や市場価格に近い評価になる可能性があります。

その結果、相続直前に物件を購入しても、以前ほど大きな評価差が生まれず、期待していた相続税の圧縮効果が得られないケースが考えられます。

ただし、「購入価格の80%で必ず評価される」という単純な仕組みではありません。

実際の評価では、取得価額、取得後の地価変動、物件の状況、今後公表される通達の内容などを確認する必要があります。物件ごとの判断が必要になる点には注意が必要です。

適用は2027年1月1日以後の相続・贈与から

新しい評価方法は、2027年1月1日以後に相続や贈与によって取得する財産の評価に適用する方針です。

基準になるのは、原則として物件を購入した日ではなく、相続や贈与によって財産を取得する日です。

例えば、2026年中に賃貸物件を購入した場合でも、2027年以後に相続が発生し、その物件が相続前5年以内に取得した貸付用不動産に該当すれば、新しい評価方法の対象になる可能性があります。

「2026年中に買えば従来の評価方法がずっと使える」とは限らないため、購入時期だけで判断しないことが重要です。

所有している土地にアパートを建築する場合はどうなるのか

今回の見直しは、完成済みの収益物件を購入する場合だけでなく、アパートなどを新築する場合も対象に含まれています。

ただし、一定の経過措置も示されています。

改正内容を通達に定める日までに、被相続人などが5年以上所有している土地の上に新築した家屋や、その時点で建築中の家屋については、今回の5年以内取得に関する新しい評価方法を適用しない方針です。

そのため、以前から所有している土地にアパートを建築するケースと、土地と建物を一括して新たに取得するケースでは、取り扱いが異なる可能性があります。

ただし、建築契約を締結した日、着工日、建築中と判断される状況、土地の所有期間などによって結論が変わることが考えられます。

「自分の土地に建てるから対象外」と一律に判断せず、計画段階で税理士などに確認することが大切です。

不動産小口化商品も見直しの対象

今回の改正では、現物のアパートやマンションだけでなく、一定の不動産小口化商品についても評価方法を見直す方針が示されています。

不動産小口化商品とは、複数の投資家が出資し、一つまたは複数の不動産から得られる収益などを分配する仕組みの商品です。

比較的少ない資金から不動産に投資できることや、現物不動産よりも管理の手間が少ないことなどから、相続対策として案内されることもあります。

しかし、一定の不動産特定共同事業契約や信託受益権に関する金融商品取引契約に基づく商品については、取得時期にかかわらず、課税時期の通常の取引価額に相当する金額で評価する方針です。

現物の貸付用不動産に設けられる「相続前5年以内」という基準が、不動産小口化商品には必ずしも適用されない点に注意が必要です。

すでに保有している場合や購入を検討している場合は、商品の契約形態や評価方法を確認しておきましょう。


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「アパートを買っても相続対策にならない」という意味ではない

今回の改正によって、アパートやマンションを購入する相続対策が、すべて無意味になるわけではありません。

重要なのは、「不動産を買えば必ず大幅な節税になる」という考え方を見直すことです。

5年を超えて保有する物件は原則として対象外

今回示されている見直しは、課税時期前5年以内に取得または新築した一定の貸付用不動産が主な対象です。

長期間保有し、実際に賃貸経営を続けてきた物件まで、一律に取得価格をもとに評価する内容ではありません。

長期的な資産形成や安定した家賃収入を目的として不動産を所有することと、相続直前の評価額圧縮だけを目的として購入することは、分けて考える必要があります。

借入金の債務控除がなくなるわけではない

金融機関からの借入れを利用して物件を取得した場合、相続時点で被相続人が負担している一定の借入金は、相続財産から差し引ける場合があります。

今回の見直しは、主に貸付用不動産の評価方法に関するものであり、借入金などの債務を遺産総額から差し引く債務控除の仕組みそのものを廃止するものではありません。

ただし、借入れを増やせば必ず相続税が下がるわけではありません。

物件価格が下落した場合や、空室によって家賃収入が減少した場合でも、借入金の返済は続きます。金利上昇や修繕費の負担も含めて、無理のない資金計画を立てる必要があります。

小規模宅地等の特例とは別の制度

一定の貸付事業に使用されている土地については、「小規模宅地等の特例」により、一定の要件を満たした場合に評価額の減額を受けられる可能性があります。

ただし、相続開始前3年以内に新たに貸付事業に使用された土地は、原則として貸付事業用宅地等の対象から除かれるなど、別の要件が設けられています。事業の継続や土地の保有継続なども必要です。

今回の「5年以内に取得した貸付用不動産の評価見直し」と、小規模宅地等の特例における「3年以内貸付宅地等」のルールは別の制度です。

数字が似ているため、混同しないよう注意しましょう。

賃貸物件オーナーが確認しておきたい4つのポイント

1.所有物件の取得日と取得価額を整理する

まずは、現在所有している貸付用不動産について、次の資料を整理しておきましょう。

・売買契約書
・建築請負契約書
・土地と建物の取得価額が分かる資料
・購入時の諸費用に関する資料
・固定資産税評価証明書
・借入金の残高が分かる資料
・賃貸借契約書
・入居状況や賃料が分かる一覧表

新しい評価方法では、取得価額をもとに計算する可能性があるため、購入時の書類が重要になります。

相続が発生してから家族が資料を探すのは大きな負担です。所有者本人が元気なうちに、物件ごとに資料をまとめておくことをおすすめします。

2.相続税評価額だけで購入を決めない

「相続税が下がると言われたから」という理由だけで、急いで賃貸物件を購入することは避けた方がよいでしょう。

賃貸不動産は、購入後も継続的な経営が必要です。

家賃収入だけでなく、空室期間、管理費、修繕費、固定資産税、保険料、借入金の返済などを考慮しなければなりません。

相続税が多少下がったとしても、稼働率が低く、大規模修繕が必要な物件を取得してしまえば、相続人に大きな負担を残す可能性があります。

節税効果だけではなく、「相続後も安定して運営できる物件か」という視点が欠かせません。

3.将来物件を引き継ぐ人と話し合う

親が良い相続対策だと考えてアパートを購入しても、子どもが賃貸経営を希望しているとは限りません。

複数の相続人で共有すると、修繕、賃料の見直し、借換え、売却などの場面で、意見がまとまらない可能性もあります。

誰が物件を引き継ぐのか、借入金を返済できるのか、管理を誰に任せるのかなどを、生前に話し合っておくことが大切です。

不動産の価値は、相続税評価額だけでは判断できません。家賃収入、管理状態、修繕履歴、売却のしやすさなどを含めて、家族が引き継ぎやすい状態を整えておきましょう。

4.空室と募集状況を適切に管理する

長期保有している物件など、従来の評価方法が適用される場合には、相続発生時点の賃貸状況が評価に影響することがあります。

原則として、実際に賃貸されている部分の床面積に基づいて賃貸割合を計算します。

ただし、継続的に賃貸されていた部屋について、退去後速やかに募集を行っていること、空室期間が一時的であること、その後も継続的に賃貸されていることなどの状況が確認できれば、相続発生時に一時的な空室であっても、賃貸中として取り扱われる場合があります。

募集開始日、広告掲載の履歴、申込みの状況、退去日、次の入居日などを記録しておくことが重要です。

空室対策は家賃収入を確保するためだけでなく、相続時に物件の利用状況を説明するうえでも意味があります。


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今後の相続対策は「節税額」より「経営の持続性」が重要

これまでの不動産を活用した相続対策では、「現金を不動産に換えると評価額がいくら下がるか」が注目されがちでした。

しかし、今後は、評価額の圧縮だけを目的とした短期的な不動産購入について、より慎重な判断が求められます。

相続対策として賃貸物件を取得する場合でも、次のような点を総合的に確認することが重要です。

・相続後も安定した家賃収入が見込めるか
・周辺の賃貸需要が今後も維持されるか
・将来どの程度の修繕費が必要になるか
・借入金を無理なく返済できるか
・相続人が物件を引き継ぐ意思を持っているか
・必要なときに売却しやすい物件か
・管理会社から適切な提案や報告を受けられるか

相続税を抑えることができても、相続後の経営が不安定になれば、家族にとって良い資産承継とはいえません。

税務上の効果と、賃貸経営上の収益性・安全性を切り離さずに考える必要があります。

まとめ

2027年1月1日以後の相続や贈与から、相続前5年以内に取得または新築した一定の貸付用不動産について、市場価格に近い金額で評価する方針が示されています。

これまでのように、相続直前にアパートやマンションを購入すれば、必ず大きな評価差を得られるとは限りません。

一方で、すべての貸付用不動産の評価方法が変わるわけではなく、5年を超えて保有している物件や、一定の経過措置に該当する建物などは、取り扱いが異なる可能性があります。

大切なのは、制度改正を理由に購入や売却を急ぐことではありません。

まずは、所有物件の取得時期、取得価額、借入金、入居状況、収益性、修繕履歴などを整理し、現行制度と新しい制度の両方で影響を確認することが重要です。

税金に関する具体的な判断は税理士などの専門家へ相談し、物件の収益性、空室対策、修繕計画、将来の管理体制については、管理会社と一緒に検討するとよいでしょう。

相続対策を単なる「節税」で終わらせず、次の世代が安心して引き継げる賃貸経営を準備していくことが、これからの不動産オーナーに求められます。


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