「まだ動いているから、交換する必要はないだろう」
賃貸物件のエアコンについて、このように考えているオーナー様も多いのではないでしょうか。
確かに、故障していない設備を交換するとなれば費用がかかります。できるだけ長く使用したいと考えるのは、賃貸経営のコストを抑えるうえでは自然なことです。
しかし、近年の夏の暑さを考えると、エアコンについては単純に「壊れるまで使う」という考え方が必ずしも得策とはいえなくなってきました。
気象庁によると、2025年7月の日本の平均気温は、統計を開始した1898年以降で最も高くなりました。また、政府も2026年夏について厳しい暑さへの注意を呼びかけています。2025年5月から9月には、熱中症による救急搬送者が10万人を超え、過去最多となりました。
いまやエアコンは「あると便利な設備」というより、夏の生活を維持するために欠かせない設備になりつつあります。
今回は、賃貸物件オーナーが知っておきたいエアコンの交換時期や故障リスク、夏本番を迎える前に行っておきたい設備管理について解説します。
真夏のエアコン故障は、単なる設備故障では済まない
エアコンが故障した場合、まず必要になるのは修理や交換です。
しかし、真夏の場合はそれだけでは済まないことがあります。
例えば、7月や8月の猛暑日に入居者から、
「エアコンをつけても冷えません」
という連絡が入ったとします。
管理会社が状況を確認して業者を手配したものの、繁忙期のため訪問できるのは数日後。
ようやく確認できても、
「部品交換が必要ですが、取り寄せになります」
「年式が古く、部品がありません」
「修理より本体交換になります」
ということもあります。
そこから新しいエアコンを発注し、工事業者の日程を確保するとなれば、さらに時間がかかる可能性があります。
実際、政府広報でも、夏本番になるとエアコンの修理や設置工事が混み合うため、暑くなる前に試運転を行い、不具合がないか確認することが推奨されています。
つまり、エアコンが壊れたときに考えるべきなのは、
「修理代はいくらか」
だけではありません。
「入居者が何日間エアコンを使えなくなる可能性があるのか」
まで考える必要があります。
貸主設備のエアコンは、故障したら対応が必要になる
特に確認しておきたいのが、そのエアコンが賃貸借契約上どのような扱いになっているかです。
貸主側が設置したエアコンが「設備」として契約されている場合、通常、入居者の故意・過失などによる故障でなければ、貸主側で修繕を検討することになります。
国土交通省の「賃貸住宅標準契約書」でも、貸主には賃貸住宅を使用するために必要な修繕を行うことが示されています。
一方、前の入居者が置いていったエアコンなどを「残置物」として扱っているケースでは、契約内容によって取り扱いが異なることがあります。
そのため、
- エアコンは「設備」なのか
- 「残置物」なのか
- 修理・交換について契約上どのような取り決めになっているのか
をあらかじめ確認しておくことが大切です。
また、エアコンが長期間使えない状況になると、入居者から賃料について相談される可能性もあります。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会の「貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン」では、エアコンが作動しない場合について、賃料減額割合10%、免責日数3日という一つの目安が示されており、季節・地域・間取り・設置台数などによって調整するとされています。
もちろん、このガイドライン自体に法的拘束力があるわけではなく、実際の取り扱いは契約内容や故障状況などによって異なります。
それでも、真夏のエアコン故障は、単なる「数万円の修理問題」ではなく、入居者対応や賃料、物件への印象にもつながり得る問題だということは認識しておきたいところです。

エアコンは何年使ったら交換を考えるべき?
では、エアコンは何年程度使用したら交換を検討すればよいのでしょうか。
一つの参考になるのが、本体に表示されている**「設計上の標準使用期間」**です。
エアコンは、経年劣化による事故を防ぐための「長期使用製品安全表示制度」の対象となっており、製造年や設計上の標準使用期間、注意事項などが表示されています。
この期間はメーカーや製品によって確認する必要がありますが、家庭用の壁掛けエアコンでは「10年」を設計上の標準使用期間としているメーカーが多くあります。例えばパナソニックや三菱電機でも10年を一つの基準として案内しています。
ただし、これは「10年経過したら必ず壊れる」という意味でも、「10年間は絶対に故障しない」という意味でもありません。
使用頻度、設置環境、メンテナンス状況などによって状態は変わります。
そのため、築年数だけではなく、
「そのエアコンがいつ製造され、何年間使用されているのか」
を把握しておくことが重要です。
「壊れていないから使う」だけで判断しない
例えば、賃貸物件に設置しているエアコンが製造から12年経過していたとします。
現在は問題なく動いています。
この場合、
「まだ動いているのだから交換はもったいない」
と考えることもできます。
一方で、翌年の7月に突然故障し、修理業者を手配したところ、
「古い機種なので修理部品がありません」
となれば、急きょ本体交換です。
真夏の繁忙期で施工まで時間がかかれば、その間の入居者対応も必要になります。
反対に、退去して原状回復工事を行っているタイミングで、
「このエアコンは12年使用しているので、今回交換しておきましょう」
と判断すれば、入居者がいない状態で工事できます。
室内へ入るための日程調整も必要ありません。
原状回復業者の工事とスケジュールを合わせることもできます。
さらに、新しいエアコンを募集図面や募集コメントでアピールできる場合もあります。
つまり、同じ「エアコン交換」であっても、
故障してから慌てて交換するのか、計画的に交換するのかでは、オーナーと管理会社の負担が大きく変わる
ということです。
交換を検討したい5つのサイン
年数だけで交換時期を決める必要はありません。
次のような状態が見られた場合は、点検や交換を検討するタイミングと考えてもよいでしょう。
1.設置から10年前後経過している
まず確認したいのが製造年です。
長期間使用しているエアコンについては、「まだ動くか」だけではなく、故障した場合に修理できるのかという視点も重要です。
部品供給の状況によっては、故障してから修理ではなく交換になることがあります。
2.以前より冷えにくくなっている
設定温度を下げてもなかなか室温が下がらない、以前より冷房能力が落ちたように感じる場合には、フィルター汚れなど簡単な原因の場合もあれば、機器側に問題があるケースもあります。
入居者からこうした連絡があった場合には、単純に「設定温度を下げてください」で終わらせず、状態を確認することが重要です。
3.異音や異臭がする
通常とは違う音や振動、焦げたような臭いなどがある場合には注意が必要です。
経済産業省も、設計上の標準使用期間が近づいた製品について、異常な音や振動、臭いなどの変化に注意するよう案内しています。
異常がある場合には、無理に使い続けず専門業者へ相談することが大切です。
4.過去に何度も修理している
一度修理したエアコンを、その後も繰り返し修理している場合には、修理を続けるより交換した方がよいケースもあります。
「今回の修理費」だけを見るのではなく、
これまでいくら修理費がかかっているのか。
今後何年間使えそうなのか。
交換した場合はいくらなのか。
こうした点を総合的に判断する必要があります。
5.退去・原状回復のタイミングを迎えた
入居中にエアコン交換を行う場合、入居者との日程調整や室内への立ち入りが必要です。
一方、退去後であれば比較的スムーズに工事できます。
そのため、退去時はエアコン交換を検討する絶好のタイミングでもあります。
原状回復工事の見積もりを取る際に、
「エアコンの製造年も確認してください」
と管理会社へ依頼してみるのもよいでしょう。

猛暑時代は「設備台帳」が重要になる
複数の部屋を所有しているオーナー様ほどおすすめしたいのが、設備の設置時期を一覧で管理することです。
例えば、
- 101号室 エアコン 2022年交換
- 102号室 エアコン 2015年製
- 103号室 エアコン 2018年交換
- 201号室 給湯器 2021年交換
といった形で記録しておきます。
エアコンだけでなく、給湯器、換気扇、温水洗浄便座、インターホンなどについても記録しておけば、
「そろそろ交換を検討する設備」
を事前に把握できます。
賃貸経営では、設備が故障してから初めて製造年を調べるケースも少なくありません。
しかし、それでは設備管理がすべて「故障待ち」になってしまいます。
設備台帳を作り、
故障対応型の管理から、予防型の管理へ変えていく
ことが重要です。
夏前に管理会社と確認しておきたいこと
特にエアコンについては、夏になってから確認するのではなく、春から初夏にかけてチェックしておくことをおすすめします。
確認したいポイントは大きく5つです。
- 長期間使用しているエアコンがないか
- 過去に不具合の報告があった部屋はないか
- 退去予定の部屋で交換した方がよい設備はないか
- 故障時にすぐ対応できる業者が確保されているか
- 設備の製造年・交換履歴が管理されているか
もちろん、すべてのエアコンを一定年数で一斉交換する必要はありません。
物件数が多ければ、交換費用も大きくなります。
大切なのは、
「壊れたら考える」のではなく、「壊れた場合に困る設備から計画を立てる」
ことです。
例えば、使用年数が長いエアコンのうち、退去が発生した部屋から順番に交換する方法もあります。
これなら一度に大きな費用をかけず、少しずつ設備を更新できます。
新しい設備への交換は空室対策にもなる
設備交換は単なる修繕費ではありません。
募集条件によっては、新しいエアコンへの交換が物件の印象を良くすることもあります。
入居希望者が内見した際、古く変色したエアコンが設置されている部屋と、新しいエアコンが設置されている部屋では、受ける印象が変わります。
特に築年数が経過した物件の場合、
「建物自体は古いが、室内設備はきちんと更新されている」
という状態をつくることは、物件の競争力を維持するうえでも重要です。
ただし、設備を新しくすれば必ず家賃を上げられる、必ず空室が決まるというものではありません。
物件の立地、家賃帯、競合物件、入居者層などを踏まえて、どこに費用をかけるべきか判断する必要があります。
だからこそ、原状回復工事の際には、
「壊れているところを直す」
だけではなく、
「次の入居者に選ばれるために、今回どこまで手を入れるべきか」
という視点で管理会社と相談することが大切です。

まとめ|エアコンも「壊れてから直す」から「壊れる前に考える」時代へ
これまでの賃貸設備管理では、
「壊れたら修理する」
という考え方が一般的でした。
しかし、夏の暑さが厳しくなり、エアコンが生活に欠かせない設備となっている現在では、真夏に突然故障すると、入居者にもオーナーにも大きな負担が発生します。
特に注意したいのは、
- 長期間使用しているエアコン
- 過去に不具合があったエアコン
- 異音や異臭などがあるエアコン
- 修理を繰り返しているエアコン
です。
こうした設備については、退去や原状回復工事のタイミングなどを利用して、計画的な交換を検討するのも一つの方法です。
また、エアコンだけでなく、給湯器や換気扇なども含めた設備の交換履歴を管理しておけば、突然の故障に慌てるリスクを減らすことができます。
賃貸経営では、修繕費を抑えることももちろん重要です。
しかし、「設備を長く使うこと」と「設備費を効率的に使うこと」は必ずしも同じではありません。
壊れるまで使った結果、真夏に緊急交換となり、入居者対応まで必要になれば、結果として管理負担が大きくなることもあります。
「所有物件のエアコンが何年前のものか分からない」
「次の退去時にどの設備を交換したらよいか迷っている」
「最近、設備故障の連絡が増えてきた」
という場合には、一度、物件全体の設備状況を整理してみてはいかがでしょうか。
管理会社と設備の交換履歴や今後の修繕計画を共有し、故障してから対応する管理ではなく、故障を予測しながら備える管理へ切り替えていくことが、これからの安定した賃貸経営につながります。
