「アパートの維持費や修繕費が上がっているから、次の更新で家賃を少し上げたい」 そう考えたとき、安易に入居者へ値上げの通知を送るのは実は危ない選択かもしれません。
特に築10年を過ぎたアパートでは、一歩間違えると収益改善どころか、優良な入居者の退去という大きな損失を招くリスクがあります。
【数字で見る】築10年以上のオーナーを襲う「物価・修繕費高騰」と家賃のギャップ
アパートを新築してから10年、15年と経過すると、外壁塗装や屋根の防水工事、給湯器やエアコンといった住宅設備の交換ラッシュが必ずやってきます。特に昨今の経済環境は、個人オーナー様の賃貸経営を大きく揺さぶっています。
📊 賃貸経営を取り巻くリアルな数字
- 物価全体の動向: 総務省統計局発表の「2025年平均消費者物価指数(2026年1月発表)」では、総合指数は前年比で上昇基調を維持。エネルギー価格や各種サービス料金の高騰が続いています。
- 修繕・内装コスト: 民間不動産調査機関の「修繕コスト動向(2025年12月時点)」によると、アパートの大規模修繕費用や、退去時の原状回復における内装資材(クロスやクッションフロアなど)の仕入れ価格、職人の人件費は、ここ数年で約15%〜25%も高騰しています。
支出(修繕費や設備交換費)は右肩上がりに激増しているのに対し、収入である家賃は10年前のまま据え置かれているのが実態です。
【現在の賃貸経営のゆがみ】
▼ 修繕コスト・資材・人件費:約15%〜25%激増(右肩上がり)
▲ 既存入居者の契約家賃 :10年前のまま据え置き(横ばい)
特に「地方都市だから値上げなんて言ったらすぐ退去されてしまう」と諦めて放置しているオーナー様ほど、長期的なキャッシュフローがじわじわと削られ、将来の大規模修繕資金が不足するという「空室より怖い放置の落とし穴」に嵌まり込んでいます。

【実は危ない】「周辺相場が上がったから」だけで突撃して失敗する法的リスク
「ネットのポータルサイトを見たら、近くの似たようなアパートがうちより高く募集されていた。だから、うちも次の更新で3,000円値上げしよう」 このように、十分な裏付けがないまま、更新時期に「次回から家賃を値上げします」という通知を一方的に送りつけてしまうのは、よくある失敗の典型例です。
- 日本の法律(借地借家法第32条「借賃増減請求権」)の壁 土地建物の価格変動や経済事情の変動、近隣物件との比較によって「家賃が不相当となったとき」には、将来に向かって家賃の増額を請求できます。しかし、ここで最も注意しなければならないのは、「オーナー側が一方的に金額を決定して強制できるわけではない」という点です。
- SNSで交わされる入居者のリアルな本音 X(旧Twitter)やInstagramの投稿(2025年〜2026年の傾向)を分析すると、オーナーから急な値上げを要求された入居者が、「退去費用が高すぎる」「大家から高圧的な通知が来た」「納得いかない」といった不満を爆発させ、消費者センターや専門家に駆け込んでいるケースが目立ちます。
法的には、入居者が値上げの金額に納得しない場合、入居者は「自分が相当と認める金額(=これまでの家賃)」を支払い続ければ、そのままその部屋に住み続ける権利が守られます(借地借家法第32条第2項)。
オーナー様が「値上げに応じないなら出ていってくれ」と強制退去させることは原則不可能です。
感情的なアプローチで突撃すると、交渉が決裂するだけでなく、長年家賃を滞納せずきれいに使ってくれていた「優良な入居者」との関係が完全に破綻してしまいます。
家賃値上げ交渉の「明暗を分けた」2つのリアル事例
築10年超のアパート経営において、家賃改定の明暗を分けた実際のトラブル事例と成功事例を見てみましょう
【失敗事例】地方都市で強気交渉が裏目に……空室期間4ヶ月、50万円の損失
地方都市のロードサイドに建つ築12年の2LDKアパートを所有するC様。インフレによる管理費の上昇を理由に、2年ごとの更新を迎える入居者に対し、高圧的な通知を自ら作成して郵送しました。
- オーナーC様の一手: 「次回から一律4,000円値上げします。合意できない場合は更新できません」
- 入居者の反応: 「築年数も経って設備も古くなっているのに、事前の相談もなく値上げ、拒否なら出ていけというのは不誠実だ!」
入居者は交渉の余地なく退去を選択。地方都市特有の「次の入居者が決まりにくい」環境も災いし、物件は4ヶ月間の空室に。さらに次の募集のために原状回復や最新エアコンへの交換、広告費(AD)の支払いなどで、合計約50万円の急な持ち出しが発生しました。4,000円の値上げで年間約5万円の増収を狙った結果、数十万円の赤字を出すという、まさに「その判断、本当に大丈夫ですか?」と言わざるを得ない大失敗となってしまいました。
【成功事例】築15年でも円満改定!客観データと「おもてなし」で勝ち取った増収
一方、同じく地方都市で築15年のワンルームアパートを経営するD様。固定資産税の負担増と、外壁塗装の計画を控え、家賃を2,000円値上げしたいと考えました。D様は自分で動かず、まずは管理会社に相談しました。
- 管理会社が用意した書類:
- 近隣競合アパートの「実際の成約家賃データ」
- 直近の物価上昇指数のグラフ
- 確実に実施した「エアコンの最新型への交換」という物件の付加価値向上の事実
- 入居者へのアプローチ: 更新の半年前という早い段階で、感謝の言葉とともに書類を提示。「建物の安全性を維持し、今後も快適に暮らしていただくためのメンテナンス費用として、大変心苦しいですが2,000円のご協力をお願いしたい」と誠実に説明しました。
入居者も「いつもトラブル時にすぐ動いてくれる大家さんだし、根拠もあるなら」と納得し、スムーズに値上げでの更新が成立しました。
【トラブルになる物件の共通点】交渉前に確認したい「3つの絶対条件」
家賃交渉で揉める物件には、明確な共通点があります。それは、「事前のデータ収集」と「これまでの管理状態」への配慮が致命的に不足しているという点です。トラブルを未然に防ぐため、以下の3つの条件をクリアしているか必ず確認してください。
値上げの「正当な動機」を客観的な数字で提示できるか
単に「物価高だから」という大雑把な理由では、入居者の納得は得られません。第三者が見ても「値上げはやむを得ない」と思える、以下のような具体的なエビデンス(証拠)を手元に揃えましょう。
- 必要となる具体的な数値・データ
- 固定資産税の増税通知書(公租公課の増大証明)
- 直近で行った共用部修繕や設備交換の領収書・見積書(維持管理コストの証明)
- 管理会社が保有する「周辺の類似物件の実際の成約事例」(相場との乖離の証明)
入居者からの「設備の不具合連絡」を放置していないか
築10年を過ぎると、経年劣化によるマイナートラブルが目に見えて増えてきます。これらを「まだ一応動くから」と後回しにしている状態で値上げを切り出すと、入居者の不満が爆発して泥沼のクレームに発展します。日頃の誠実な管理・対応こそが、交渉成功の絶対的な土台です。
- 築10年超で放置されがちな設備トラブルの例
- 浴室やトイレの換気扇からの異音・吸い込み不良
- モニター付きインターホンのカメラの映りが出ない・声が途切れる
- エアコンや給湯器の効きが悪い、または作動時の異音
地方都市ならではの「退去リスク」を天秤にかけたか
特に地方都市では、一度退去されると次の入居者を見つけるまでに数ヶ月かかるケースが珍しくありません。目先の数千円の値上げにこだわるあまり、大きな損失を出していないか、以下のリターンとリスクを冷静にシミュレーションする必要があります。
- 天秤にかけるべき「収益」と「損失」の計算
- 【リターン】 値上げによって得られる「年間の増収分」
- 【リスク】 拒絶されて退去された場合の「一瞬の損失」
- 本当に「今」切り出すべきリスクかどうか、管理会社と事前に利害得失を計算することが不可欠で
実は危ない!家賃値上げ交渉のトラブル事例集
家賃値上げ交渉における最大の失敗は、オーナー様と入居者様の間に横たわる「認識のギャップ」に気づかないまま突き進んでしまうことです。現場で頻発する3つの危険な事例を見てみましょう。
事例①:相場だけを盾にした「唐突な一方的通告」
【概要】 近隣の類似物件やポータルサイトの相場が上がっていることを知り、文面だけで「来月から5,000円値上げします」と通知。入居者との関係性が一気に冷え込み、退去届が届いてしまったケース。
オーナーの言い分
💬「ネットで調べたら、うちのマンションは周辺の相場より5,000円も安い。
今まで損をしていたわけだし、相場に合わせるのは大家としての当然の権利。
わざわざ個別に説明しなくても、書面をポストに入れておけば伝わるだろう」
入居者の本音
💬「更新時期でもないのに、いきなり手紙1枚で『来月から値上げ』って何?
これまで何年も綺麗に部屋を使って、家賃も一度も滞納したことがないのに……。
長く住んでいる入居者をないがしろにするような大家の物件、もう出ようかな」
🔍 現場のリアル&解説
多くのオーナー様が「相場」を絶対的な正義と考えがちですが、入居者様にとってそれは「他人の事情」に過ぎません。特に、契約期間の途中で突如として値上げを言い渡されるのは、家計の計画を大きく狂わされる死活問題です。
また、日本全国の地方都市などでは、一度退去されると次の入居者が決まるまでに数ヶ月を要することも珍しくありません。相場に合わせようとして5,000円の値上げを要求した結果、家賃8万円の部屋が3ヶ月空室になれば、それだけで24万円の損失です。さらに次の募集のためのリフォーム費用や仲介手数料を考えれば、数年分の値上げ益など一瞬で吹き飛んでしまいます。
事例②:不具合を放置した状態での「義務と権利のハザード」
【概要】 入居者から「共用灯が切れている」「エアコンの効きが悪い」といったプチクレームや要望が出ているにもかかわらず、対応を後回しにした状態で、オーナー側の都合のみを理由に値上げを打診してしまったケース。
オーナーの言い分
💬「物価も上がっているし、修繕費の積立や固定資産税の負担も本当に大変なんだ。
多少、共用部の掃除が行き届いていなくても、部屋は問題なく使えているんだから、
これくらいのご時世、値上げに応じて負担を分かち合ってくれてもいいじゃないか」
入居者の本音
💬「こっちが何度も『エアコンの風が弱い』『共用灯が切れてて暗くて怖い』って
管理会社を通じてお願いしている時は『まだ動くから』って無視したよね?
自分の義務は果たさないのに、お金だけ多く取ろうとするなんて、虫が良すぎる!」
🔍 現場のリアル&解説
賃貸借契約において、オーナー様には「物件を快適に使用させる義務」があり、入居者様には「対価として家賃を支払う義務」があります。このバランスが崩れている状態での値上げ交渉は、入居者様に「強い搾取感」を抱かせます。
現場でトラブルになる際、入居者様が頑なに値上げを拒絶する理由は「金額の高さ」ではなく、オーナー様や管理会社への「日頃の不満の爆発」であることがほとんどです。不具合の放置は、値上げ交渉における最大の足かせになります。
事例③:更新時期ギリギリの「駆け込み交渉」
【概要】 更新期限の1ヶ月前(または数週間前)になって、更新書類と一緒に「次の更新から家賃を3,000円上げます。同意できない場合は更新できません」と伝えたところ、入居者が猛反発。へそを曲げてしまい、交渉自体が完全にストップしたケース。
オーナーの言い分
💬「契約の更新は、お互いの条件が一致して初めて成立するものでしょ?
こちらが提示した新しい家賃が気に入らないなら、契約満了なんだから
出ていってもらうのは大家の自由だし、次の人を募集すればいいだけだよ」
入居者の本音
💬「次の更新まであと1ヶ月しかないのに、今さら急に言われても困る!
引っ越しを考える時間もないし、初期費用を出す予算だって準備してない。
そもそも、合意しなくたって法律上は今の家賃のまま住み続けられるはずだ!」
🔍 現場のリアル&解説
日本の「借地借家法」は、借主の権利を非常に強く保護しています。
「家賃の値上げに同意しないなら出ていけ」というオーナー様の主張は、法律上、基本的には通りません。
もし入居者様が値上げを拒否し、そのまま更新期限を迎えた場合、契約は「法定更新」となってしまいます。
こうなると、期間の定めのない契約となり、オーナー様側から解約を申し入れることはさらに困難になります。更新間際の駆け込み交渉は、オーナー様自らカードを捨てるようなものです。
入居者を逃がさない!収益を改善する具体策
では、入居者様に「これなら納得できる」「退去するよりも住み続けたい」と思ってもらいながら、確実に収益を改善するにはどうすればよいのでしょうか。現場で実際に効果を上げている3つの具体策を提示します。
1. 3〜6ヶ月前からの「予告型・相談型」アプローチ
値上げ交渉を成功させるための鉄則は、「時間を味方につけること」と「命令ではなく相談の形をとること」です。
【更新の6ヶ月前】
管理会社を通じて、現在の社会情勢や物件維持費の状況について、事前に緩やかな「お知らせ」を届ける。
「次回更新の際、大変心苦しいのですが、若干の家賃改定についてご相談させていただく可能性がございます
【更新の3ヶ月前】
具体的な金額を提示し、正式な「ご相談」を行う。
「物価高騰による共用部電気代や修繕費の上昇に伴い、月額2,000円の値上げをお願いしたく存じます」
💡 成功のポイント
- 心理的猶予を与える: いきなり突きつけられると反発したくなるのが人間ですが、数ヶ月前から「相談」ベースで話を通しておくことで、入居者様も心の準備(家計の見直しや、本当に引っ越すべきかどうかの比較検討)ができます。
- 地方都市での効果: 特に地方都市では「引っ越すとなると、敷金・礼金や引越し業者代で20万〜30万円かかる。それなら毎月2,000円(年間2.4万円)上がっても、ここに住み続けた方がトータルで安いか」という冷静な計算が働きやすくなります。
2. 「設備投資セット型」の値上げ交渉
単にお金を多く払ってもらうのではなく、入居者様側にも「生活の質が向上する」という明確なメリット(対価)を提供する手法です。
| 提案内容 | オーナー様のコスト | 入居者様のメリット | 期待できる家賃アップ |
| モニター付きインターホン新設 | 約2万〜3万円(工事費込) | 防犯性の向上、来客の確認が容易に | +1,000円〜1,500円 / 月 |
| 温水洗浄便座(ウォシュレット)設置 | 約3万〜4万円(工事費込) | 衛生面・快適性の向上 | +1,000円〜1,500円 / 月 |
| インターネット無料(一括導入) | 初期費用+月額数千円 | 毎月の通信費(約4,000円)が浮く | +2,000円〜3,000円 / 月 |
💡 成功のポイント
- 「損をしていない」感覚: 入居者様からすると、「ただの出費増」が「最新設備へのアップグレード」に変わるため、承諾のハードルが劇的に下がります。特にネット無料などは、入居者自身の個人契約を解約できるため、「家賃が2,000円上がってもトータルで毎月2,000円得をする」という逆転現象が起きます。
- 将来への資産形成: この設備は、今の入居者様が退去した後も物件に残り続けます。つまり、次の募集時にも「高い家賃のままスライドして募集できる」ため、物件力そのものが底上げされる持続可能な空室対策になります。
3. 「更新料・更新手数料」の見直しや減免措置
毎月のランニングコスト(家賃)を上げる代わりに、一時金(更新料など)を減額して、入居者様の「目先のキャッシュアウト」を抑えるテクニックです。
オーナーからの提案イメージ
💬「毎月の家賃を3,000円(年間3.6万円)アップさせていただけないでしょうか。
その代わり、今回の更新時にお支払いいただく『更新料(家賃1ヶ月分)』を
今回は【完全に免除(0円)】とさせていただきます」
💡 成功のポイント
- 引っ越しの抑止力: 更新時に入居者様が退去を考える最大の理由は、「更新料」というまとまった出費が嫌だからです。ここを「免除」または「半額」にすることで、退去の引き金自体を抜いてしまいます。
- 長期的な収益シミュレーション:
- 従来: 家賃8万円 × 24ヶ月 = 192万円 + 更新料8万円 = 計200万円
- 新提案(家賃3,000円アップ+更新料免除): 家賃8.3万円 × 24ヶ月 = 計199.2万円
- 一見、2年間でのトータル収入はわずかに下がっているように見えますが、3年目以降(長期入居)になれば毎月3,000円のプラスがそのままオーナー様の純利益として積み重なります。何より、「退去されて空室になるリスク」をほぼゼロに抑え込める点が非常に強力です。

まとめ:収益改善への近道は「入居者をファンにすること」
家賃値上げの現場を数多く見てきて確信しているのは、「家賃値上げの成功率は、日頃の管理の質に比例する」ということです。
入居者様が「この物件はいつも共用部が綺麗だし、困ったことがあっても大家さんや管理会社がすぐに対応してくれる。居心地が良いから、多少値上がりしてもここに住み続けたい」と思ってくだされば、交渉は驚くほどスムーズに進みます。
成功する家賃値上げの3大原則
- 時間の余裕を持つ(3〜6ヶ月前からの相談)
- 理由の透明性(なぜ上げるのかを明確に説明する)
- 還元の姿勢(設備追加や一時金減免で誠意を見せる)
目先の数千円を追いかけるあまり、優良な入居者様を失ってしまっては本末転倒です。ぜひ、パートナーである管理会社と二人三脚で、物件の「価値」を高めながら、入居者様にも喜ばれる持続可能な収益改善を目指しましょう。
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