相続が発生すると、多くの人がまず直面するのが「遺産を引き継ぐべきかどうか」という問題です。相続と聞くとプラスの財産を受け取るイメージが強いものの、実際には不動産の維持管理や固定資産税、さらには被相続人が抱えていた借金など、負担の大きいマイナス要素が含まれているケースも少なくありませ
特に近年は、空き家問題の深刻化や地方不動産の流通停滞などを背景に、「相続したくない不動産」が増えています。2026年現在、相続放棄の件数は年々増加傾向にあり、家庭裁判所への相談件数も右肩上がりです。
では、相続放棄をすると不動産はどうなるのでしょうか。最終的に国庫へ帰属する可能性があるとはよく言われますが、その過程は決して単純ではありません。本コラムでは、2026年の最新情報を踏まえながら、相続放棄後の不動産の行方と注意点を分かりやすく解説します。
1. 相続放棄とは何か ―「最初から相続人でなかった」扱いになる制度
相続放棄とは、法定相続人が被相続人の財産・負債を一切引き継がないと家庭裁判所に申し立てる制度です。放棄が認められると、その相続人は「最初から相続人ではなかった」ものとみなされます。
相続放棄が選ばれる主な理由
- 不動産の維持管理が困難
- 固定資産税などの負担が重い
- 借金やローンなどの負債が多い
- 遠方の不動産で管理ができない
- 相続人同士のトラブルを避けたい
特に不動産に関しては、収益性が低い、老朽化が進んでいる、売却が難しいなどの理由から「負動産」と呼ばれるケースが増えています。

2. 相続放棄後の不動産はどうなる? ― 次順位の相続人へ移る仕組み
相続放棄をすると、その相続人は不動産を含む遺産に関する権利義務を一切持ちません。しかし、不動産が自動的に国に引き取られるわけではありません。
相続の順位に従って次の相続人へ
民法では相続順位が決まっており、上位の相続人が全員放棄すると、次の順位の相続人に権利が移ります。
相続順位の基本
- 第1順位:子(代襲相続の場合は孫)
- 第2順位:直系尊属(父母・祖父母)
- 第3順位:兄弟姉妹(代襲相続の場合は甥・姪)
つまり、子が全員放棄 → 親へ 親も放棄 → 兄弟姉妹へ 兄弟姉妹も放棄 → 甥・姪へ …という流れで相続権が移っていきます。
2026年の実務で増えているケース
近年は、
- 親族全員が相続を望まない
- そもそも疎遠で連絡が取れない
- 相続人が高齢で管理ができない といった理由から、相続人全員が放棄するケースが増加しています。
この場合、不動産の行方はさらに複雑になります。

3. 相続人全員が放棄した場合 ―「相続財産管理人」が登場する
相続人が誰もいなくなると、不動産を含む遺産は宙に浮いた状態になります。そこで家庭裁判所が選任するのが「相続財産管理人」です。
相続財産管理人の役割
- 不動産の管理
- 財産の調査
- 債務の清算
- 不動産の売却や処分の検討
- 最終的な財産の帰属先の決定
管理人は弁護士や司法書士などの専門家が選ばれることが一般的です。
管理人の費用は誰が負担する?
原則として遺産から支払われますが、遺産が少ない場合は利害関係人(自治体や債権者)が予納金を負担することもあります。 2026年現在、予納金の相場は最低でも20〜40万円程度が一般的で、地域によってはさらに高額になることもあります。
4. 不動産は最終的に国庫へ帰属するのか?
相続人全員が放棄した場合、最終的に不動産が国庫に帰属する可能性があります。しかし、これは「自動的に国が引き取る」という意味ではありません。
国庫帰属までの流れ
- 相続人全員が放棄
- 相続財産管理人が選任される
- 不動産の売却を試みる
- 売却できない場合、自治体や公的法人への引き取りを検討
- それでも引き取り手がない場合、財務省に申請
- 財務省の審査を経て国庫帰属が認められる
このプロセスは数年単位でかかることもあり、管理人の負担も大きくなります。
国庫帰属が認められないケースもある
2023年に施行された「相続土地国庫帰属制度」では、
- 老朽化が著しい建物
- 境界が不明確な土地
- 管理に過度な費用がかかる土地 などは国が引き取らない可能性があります。
2026年時点でもこの基準は維持されており、「国庫帰属は最後の手段」という位置づけは変わっていません。

5. 相続放棄を検討する際の注意点(2026年版)
① 相続放棄の期限は「相続開始を知った日から3か月」
期限を過ぎると放棄できなくなるため、早めの判断が必要です。
② 放棄しても「一時的な管理責任」が生じることがある
相続財産管理人が選ばれるまでの間、
- 空き家の倒壊
- 雑草の放置
- 近隣トラブル などが発生すると、放棄した相続人が責任を問われる可能性があります。
③ 親族への影響を考える必要がある
自分が放棄すると、次順位の相続人に負担が移ります。 事前に話し合っておかないと、後々トラブルになることもあります。
④ 不動産の状態を早期に把握することが重要
- 売却可能か
- 修繕が必要か
- 境界が確定しているか
- 賃貸に出せる状態か
これらを早めに調査することで、放棄以外の選択肢が見えることもあります。

6. 相続放棄以外の選択肢(2026年の実務で増加)
2026年現在、相続放棄以外にも以下のような選択肢が注目されています。
① 相続土地国庫帰属制度の活用
一定の条件を満たせば、相続した土地を国に引き渡すことができます。 ただし、審査が厳しく、建物付き土地は原則対象外です。
② 不動産の売却(買取・仲介)
老朽化物件でも、買取専門業者が買い取るケースが増えています。
③ 空き家管理サービスの利用
管理コストを抑えつつ、将来の売却や活用に備える方法です。
④ 賃貸運用
収益化できれば、相続放棄よりメリットが大きい場合もあります。

7. まとめ ― 相続放棄は「不動産の行方」を理解して慎重に判断を
相続放棄は、負担の大きい不動産や負債を引き継がないための有効な手段です。しかし、放棄すればすべてが解決するわけではなく、不動産は相続順位に従って次の相続人へ移り、最終的に相続財産管理人が処理を行うことになります。
国庫帰属はあくまで最終段階であり、そこに至るまでには時間も費用もかかります。 2026年の現在、相続放棄を選ぶ人が増えている一方で、制度の複雑さからトラブルが発生するケースも少なくありません。
相続が発生したら、まずは不動産の状態を把握し、家族や専門家と相談しながら最適な選択肢を検討することが重要です。 相続放棄は「最後の手段」ではなく、「選択肢のひとつ」として冷静に判断することが求められます。
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