家賃滞納が起こったときの5つの対応。裁判から時効まで徹底解説
blog02
- 賃貸経営得情報
入居者の家賃滞納は、賃貸経営の大きなリスクです。
しかし家賃滞納を理由に入居者を強制的に立ち退きさせた場合、オーナー様が違法行為を問われることもあります。
そのため家賃滞納は、解決に手間がかかる厄介な問題なのです。
さらにコロナ禍による生活困窮者の増加で、家賃滞納のリスクはさらに増えるおそれも。
そこで、ここからは
■家賃滞納が起こったらどうする?5つの対応
■家賃滞納の対応で注意すべき4つのポイント
■家賃滞納が起こる3つの原因
■家賃滞納を未然に防ぐ4つの対策
をご紹介します。
「家賃を滞納している入居者がいて困っている」
「滞納家賃を払ってもらうには、どう対応するべき?」
「滞納家賃を回収するときに、気をつけるべきポイントは?」
など、家賃滞納にお困りの賃貸経営オーナー様は必見です。
コロナ禍で、家賃滞納件数が増えるおそれ
2021年の日銀の調査によれば、コロナ禍前(2019年)に比べて収入が「減った」と答えた人の割合は約40%(※1)にのぼります。
多くの人が生活に打撃を受けている状況がうかがえます。
またコロナ禍以降、失業などによって家賃支払が困難になった人に、国が家賃を補助する「住居確保給付金制度」の利用者数も激増(※2)しています。
全国社会福祉協議会によると、コロナ前の2019年は1年間で4,000件だった利用者が。
コロナ後の2020年は、4~10月の上半期だけで約11万人にのぼりました。
つまりコロナ前に比べて、家賃支払に困難を感じている人の数は約30倍に増加していると考えられるのです。
今後はさらに、家賃滞納の発生件数が増えていくおそれがあります。
(※1)2021年4月 日本銀行情報サービス局「生活意識に関するアンケート調査 第85回」より
(※2) 2020年12月 全国社会福祉協議会「生活困窮者自立支援における
新型コロナウイルス感染症の影響と対応について」より
コロナ禍による家賃滞納の増加状況
コロナ禍の発生以降、賃貸住宅の2ヶ月以上・家賃滞納発生率は、全国平均で0.9%から1.1%に上昇しています。
これは、件数ベースに直せば、家賃滞納はコロナ禍前の約20%増加していることを示しています。
家賃支払いを滞納していない人でも、住居確保給付金や持続化給付金などの公的支援で持ちこたえているケースは少なくないでしょう。
コロナ禍の影響は様々な業種にわたって、長期間に及んでいます。
これまで入居者審査を厳格に行っていたオーナー様も、入居者の家賃滞納問題と直面する可能性が高くなると思われます。
コロナ禍が賃貸住宅市場に与えた影響と賃貸ニーズの変化
入居者が家賃滞納したらどうする?5つの対応
入居者の家賃滞納が発生した場合は、次の5つのステップを踏んで対応します。
1.入居者に連絡
2.連帯保証人に連絡
3.内容証明郵便の送付
4.退去要請の連絡
5.法的手段
なお
・管理会社に賃貸物件の管理業務を委託している
・入居者が家賃保証会社に加入している
場合は、こうした手続きは管理会社や保証会社が行います。
ここからは、それぞれの手続きについて解説します。
1.入居者に連絡
家賃を滞納している入居者にはまず、
●電話、書面、訪問などによって連絡
することで、滞納家賃の支払いを促します。
その際、
・滞納家賃の支払時期
を確認するのも忘れないようにしましょう。
2.連帯保証人に連絡
入居者に連絡をしても家賃が支払われない場合は、
●連帯保証人に連絡
します。
連帯保証人は入居者が家賃を滞納すると、代わって支払う義務を負っているので、滞納家賃は保証人に請求することが可能です。
3.内容証明郵便の送付
入居者や連帯保証人に連絡をしても、スムーズに家賃が支払われない場合は、
●内容証明郵便の送付
によって、滞納家賃の支払いを促します。
内容証明郵便には
・滞納家賃の支払督促と支払期限
・支払に応じない場合は、法的措置を行使する
ことを明記しておくことが必要です。
なお、悪質な入居者は内容証明郵便を受け取らないことがあります。
こうした場合に備えて
・同じ内容の督促書面を、特定記録郵便でも送付する
・連帯保証人にも、内容証明郵便を送付する
ことが有効です。
内容証明郵便によって支払を督促した履歴を残しておけば、後に裁判を起こした際の有力な証拠になります。
4.退去要請の交渉
内容証明郵便を送っても家賃滞納が続く場合は、家賃の回収にこだわるより、退去を要請する方がメリットが大きい場合もあります。
ただし入居者に賃貸契約の解除や退去要請を行う場合は、
・一方的な賃貸契約解除や強制退去はできない
・行き過ぎた要請は、オーナー側が違法行為を問われるリスクがある
ことに注意が必要です。
まずは入居者に、電話・訪問・内容証明郵便などで連絡し、退居を要請しましょう。
なぜ一方的な契約解除・強制退去はできない?
オーナー様と入居者の関係は債権者と債務者というだけではありません。
入居者の権利は、借地借家法に基づいて手厚く保護されています。
そのため、悪質な家賃滞納者であっても、一方的に契約を解除して強制的に退去させることはできないのです。
5.法的措置
話し合いで問題が解決しない場合は、最終手段として法的措置を取らざるを得ません。
家賃滞納の解決手段として用いられる法的措置としては、
・支払督促
・少額訴訟
・立ち退き訴訟
といった方法があります。
支払督促
支払督促は、債務不履行を理由に、裁判所から入居者に滞納家賃の支払督促状を送付してもらう方法です。
●支払督促のメリット
・実際に裁判を起こす必要はないので、時間や費用を抑えることができる
・支払督促に応じない場合は、給与や財産の差し押さえも可能
●支払督促のデメリット
・入居者に支払い能力がなければ、支払督促や差し押さえをしても効果がない
少額訴訟
少額訴訟は、60万円以下の金銭債権を回収するための裁判です。
●少額訴訟のメリット
・裁判所の審理は原則1回で、直ちに判決が出るので時間がかからない
●少額訴訟のデメリット
・入居者に支払い能力がなければ、支払督促や差し押さえをしても効果がない
立ち退き訴訟
入居者に支払い能力や支払う意思が無い場合に、強制的に立ち退きを求める訴訟です。
裁判で家賃滞納を理由とした立ち退き命令を出してもらうには、次の条件を満たしている必要があります。
・3ヶ月以上の家賃を滞納している
・入居者に家賃を支払う意思がないことの証明
(内容証明などによる支払督促の履歴などが証拠になる)
●立ち退き訴訟のメリット
・入居者が立ち退き命令に従わない場合は、裁判所に申し出て強制執行を行える
●立ち退き訴訟のデメリット
・訴訟を起こすための条件があり、証拠を揃える必要がある
・判決が出るまで通常半年以上かかり、50万円程度の費用が必要
家賃滞納への対応で注意すべき4つのポイント
家賃滞納への対応には、入居者や連帯保証人への連絡・内容証明郵便・法的措置など、様々なステップがあります。
家賃滞納に対応するにあたっては、オーナー様が知っておくべきポイントが4つあります。
1.家賃滞納には時効がある
2.支払督促・退去要請のルール
3.法的措置の注意点
4.家賃滞納への対応をスムーズに行うコツ
ここからは、家賃滞納が発生したときに知っておきたい4つのポイントをご紹介します。
1.滞納家賃の消滅時効は5年
滞納家賃は督促しなければ5年で消滅時効を迎えるので、放置していると回収できなくなります。
口頭による督促だけでは証拠として弱いため、内容証明郵便で支払いを督促しておくことが必要です。
2. 支払督促・退去要請のルール
入居者の権利は借地借家法に基づいて手厚く保護されているため、オーナ様側から一方的に入居契約の解除・強制退去させることはできません。
また滞納家賃の支払督促や入居者への退去要請にも、ルールが定められています。
オーナー様が「家賃を滞納する相手が悪い」と感情的になって執拗な督促や退去要請を行うと、オーナー様が違法行為を問われるリスクがあります。
支払督促のルール
次のような支払い督促行為は、違法とみなされるおそれがあります。
1)早朝や深夜(夜8時〜翌朝7時の間)に電話をしたり、入居者を訪問して督促する
2)同じ日に何度も電話や訪問を繰り返して督促する
3)威圧的・脅迫めいた言動で督促する
4)家賃滞納の事実を入居者以外の人に公表する
→ 玄関の扉や壁に督促状を張り付ける
→ 入居者の連帯保証人以外に督促・連絡する など
退去要請のルール
滞納が長期化したり、入居者に支払い意思がなければ退去を要請する必要があります。
その際、次のようなことを行うとオーナー様であっても犯罪行為になるおそれがあるので注意が必要です。
1)無断で入室する ⇒ 住居侵入罪
2)無断で荷物や家財を撤去する ⇒窃盗罪
3)無断で部屋の鍵を交換する ⇒器物損壊罪
3.裁判など法的措置をとる際の注意点
滞納家賃の回収や、入居者への退去要請に強制力を持たせるためには、裁判などの法的措置をとる必要があります。
しかし法的措置をとるにあたっては、次のような注意点もあります。
裁判には時間と費用がかかる
裁判を起こして退去命令や強制執行を求めても、長い時間と費用がかかります。
・判決が出るまでには半年以上
・弁護士費用と別に50万円近い裁判費用がかかる
など。
また裁判中は入居者を退去させられないので、その間に損失が大きくなっていくおそれもあります。
妥協点を見つけて話し合いで解決し、損失を最小限に
長期間滞納が続く場合は、なるべく早く入居者に退去してもらい、新たな入居者を探す方が損失を小さくできます。
そのため入居者と話し合って、退去につながる妥協点を探ることも重要です。
例えば早期に退去してもらう代わりに、滞納した家賃の支払いを免除するという条件を示してもよいでしょう。
家賃滞納者との妥協には、納得できないオーナー様もおられるかもしれませんが、決着までに時間や費用がかかる裁判は最後の手段です。
それよりも、妥協点を見つけて話し合いで解決し、損失を最小限に抑えるのが現実的なやり方と言えます。
公的支援制度の紹介も有効
入居者が生活に困窮している場合は、公的な生活支援制度の利用を促すのも、滞納家賃を回収するための1つの手段です。
例えば厚生労働省の「住居確保給付金」制度は、
・主たる生計維持者が離職・廃業後2年以内の場合
・もしくは個人の責任・都合によらず給与等を得る機会が、離職・廃業と同程度まで減少している場合
一定の要件を満たしていれば、実際の家賃額が原則3か月間(延長は2回まで最大9か月間)国から支給されます。 ※市町村によって上限額あり
ただしこうした国の補助制度にも、金額・期限などに上限があります。
法的手段以外のあらゆる手を尽くしても家賃滞納が解消されない場合は、裁判などで法的解決に臨む必要があります。
4.滞納家賃の回収は、専門家に任せるのがスムーズ
家賃滞納者への対応は手間暇がかかり、解決にも困難を極めます。
そのため
・賃貸管理会社
・家賃保証会社
・弁護士
など、交渉ノウハウや法的知識を有した専門家を通しておこなうのが一番安心です。
賃貸管理会社の中には、「滞納家賃の回収」「クレーム対応」など、賃貸管理の一部業務のみを委託できる場合も多いです。
自主管理をされているオーナー様も、家賃督促・クレーム対応など、厄介で専門知識が必要な業務については、賃貸管理会社に委託するのもおすすめです。
賃貸管理は自主管理が得?管理会社に委託するべき?
家賃滞納のおもな3つの原因
家賃滞納が発生する主な原因は次の3つです。
失念や不注意
家賃滞納の原因で最も多いのは、振り込みの失念など、入居者の不注意によるものです。
「集金」「振込」といった支払方法は、失念や不注意による家賃滞納リスクを増加させます。
金銭感覚の麻痺
金銭感覚が麻痺している人は、滞納家賃を督促してもすぐに支払わず、滞納が長期化するおそれがあります。
滞納家賃には時効があり、滞納から5年が経過すると回収できなくなります。
生活の困窮
コロナ禍などで失業したり、事業の不振によって生活が困窮し、家賃を支払えなくなる場合もあります。
過去に滞納歴のない入居者が突然滞納した場合は、生活困窮が理由として多い傾向にあります。
このような場合は、滞納の理由や支払い意思を確認した上で、一時的に家賃の支払いを猶予したり、公的な生活支援制度の利用を勧めてみましょう。
家賃滞納を未然に防ぐ4つの対策
家賃滞納は入居者側の問題とはいえ、オーナー様の側から、家賃滞納のリスクを減らす対策を講じることも可能です。
1.入居時の審査を強化する
家賃滞納のリスクを減らすには、入居契約時に十分な支払能力があるかどうかを審査する必要があります。
入居者と実際に面談して
・職業、年収、勤続年数などを確認する
・人柄や性格を慎重に見極める
ことが重要です。
【賃貸オーナー向け】入居審査でチェックすべき5つの基準
2.連帯保証人をつける
家賃滞納に備えて、入居契約時には必ず連帯保証人をつけてもらいましょう。
連帯保証人がいれば、入居者が滞納した家賃を請求することができます。
連帯保証人には、安定した職業や収入がある、入居者の親族を指定することが望ましいです。
3.家賃支払方法を見直す
家賃支払方法が「集金」や「振込」の場合は、入居者の失念や不注意による滞納を招きやすくなります。
家賃を確実に支払ってもらうためには、
・口座引き落とし
・クレジットカード払い
といった支払方法に変更するのがおすすめです。
賃貸経営の家賃管理をカンタン正確に!大家さん向け無料エクセル表とアプリ3選
4.家賃保証会社に加入する
入居契約時には、入居者に家賃保証会社に加入してもらいましょう。
家賃保証会社は、入居者が家賃を滞納した場合、入居者に代わってオーナー様に家賃を支払ってくれます。
家賃保証会社の利用料は入居者が支払うため、オーナー様の負担が増えることもありません。
近年では、家賃保証会社を利用する賃貸オーナー様が増えていて、2020年の利用率は80%というデータもあります。
家賃保証会社は、入居者への滞納家賃の督促といった対応のほか、強制退去に必要な訴訟費用なども保証してくれます。
さらに入居者が家賃を滞納し、家賃保証会社がオーナー様に滞納家賃を弁済すると、入居者は
・家賃滞納歴が信用情報機関に報告され、ブラックリストに登録される
・新規に銀行ローンやカードローンを組めなくなる
・クレジットカードを作成したり、更新できなくなる
・スマホの分割払いができなくなる
といったリスクがあります。
そのため入居者の家賃保証会社への加入は、家賃滞納の抑止力にもなるのです。
家賃保証会社は、入居者審査にも有効
家賃保証会社は、
・入居者の信用情報(過去のクレジット支払や公共料金などの滞納歴など)
・家賃と年収バランス
など専門的なデータを駆使して、精度の高い入居審査を行います。
入居希望者の人柄などは、オーナー様や賃貸管理会社の面接によっても見極められます。
しかし支払能力に関する審査は、過去の滞納歴などの信用情報を用いた、専門の家賃保証会社に任せるのが安心です。
オーナー様や賃貸管理会社が審査でOKを出した入居者でも、家賃保証会社の審査には落ちるというケースも存在します。
賃貸管理会社の弊社(株)アブレイズパートナーズでは、
・提携する大手保証会社による信用調査
・弊社による入居前の面接や電話での人柄調査
のダブルチェックによって、支払能力も人柄も重視した入居審査を行っています。
その結果、弊社管理物件では優良入居者が多くなり、家賃滞納やクレームなどのトラブルも少なくなっています。
家賃保証会社による審査を活用することで、 家賃滞納リスクが解消されるのはもちろん。
不良入居者を排除することにも繋がります。
まとめ
家賃滞納は賃貸経営の大きなリスクですが、コロナ禍によって今後は家賃滞納件数が増えることも予想されます。
家賃滞納が起こったときは、
●入居者に連絡
●連帯保証人に連絡
●内容証明郵便で連絡
●退去要請の交渉
●法的措置(支払督促・少額訴訟・立ち退き訴訟)
といった対応方法があります。
しかし
・一方的な賃貸契約の解除、強制退去はできない
・行き過ぎた支払督促や退去要請は、違法行為を問われる
ことに注意が必要です。
また法的手段をとるには、長い時間と労力・費用がかかります。
家賃滞納者との話し合いによって、妥協案を見出し解決するのも、損失を最小限に抑える方法として有効です。
入居者の家賃滞納の原因には
・失念や不注意
・金銭感覚の麻痺
・生活困窮
といったものがあります。
家賃滞納のリスクを未然に防ぐためには、入居契約時に
●入居審査を強化する
●連帯保証人をつける
●家賃支払方法を見直す
●家賃保証会社に加入してもらう
のが効果的です。
それでも家賃滞納が発生してしまったら、オーナー様独断で動かず、委託先の賃貸管理会社・家賃保証会社や、弁護士などに相談するのがスムーズです。
アブレイズパートナーズなら、 「滞納家賃の督促」 のみ委託もOK
賃貸管理会社の弊社(株)アブレイズパートナーズでは、「滞納家賃の督促」など、一部業務のみの委託管理もお受けしています。
実際に家賃滞納でお困りだったオーナー様に賃貸管理を委託いただき、無事解決に至った事例も。
■オーナー様の声(会社員 S・R様)
アブレイズ様には3年ほど前からお世話になっています。
以前から滞納が続く入居者がおり、その都度、アブレイズ様から督促を繰り返しして頂き、なんとか入金してもらうという状況でしたが、アブレイズ様から自動送金ができる保証会社への切替えのご提案をいただき、今は安定したスケジュールで家賃が入金されています。
切替えの手続きにおいても、本当にご尽力ありがとうございました。
他のオーナー様にも紹介させて頂きたいと思います。
家賃滞納でお困りのオーナー様は、ぜひ一度、弊社(株)アブレイズパートナーズにご相談ください。
オーナー様の健全で安定した賃貸経営に、一丸となって寄与させていただきます。