1. はじめに:ペット可物件が増える中で起きる“新たな課題”
近年、賃貸市場では「ペット可物件」が確実に増えています。とくにコロナ禍以降は、在宅時間が増えたことや、家の中での癒しを求めるニーズから、犬や猫を飼育する世帯が大きく増加しました。その結果、ほかの物件との差別化を図る方法として、多くのオーナーがペット可物件への転向を検討する時代になっています。
しかし同時に、ペット可物件ならではの“新しいトラブル”も確実に増えています。鳴き声、匂い、室内の破損、近隣住民との摩擦、そして無断飼育など、ペットをめぐる問題は感情的になりやすく、一度こじれると長期化しやすい特徴があります。また、ペットに関するルールは契約書の書き方で大きく対応が変わるため、「知らなかった」「想定していなかった」でオーナー側が損をするケースも少なくありません。
本コラムでは、不動産オーナーが押さえておくべきペット関連トラブルの実態と、その対処方法、さらにトラブルを防ぐための予防策を体系的にまとめていきます。「ペット可はトラブルが多そうで不安」というオーナー様はぜひ最後までご覧ください🐶
2. よくあるペット関連トラブルの全体像
ペット関連のトラブルにはいくつかのパターンがありますが、多くは以下の5つに分類できます。
- 騒音トラブル(鳴き声・走り回る音)🐕
- 匂いの問題(排泄・ケージ周りの管理不足)💩
- 設備・内装等の破損
- ほかの入居者・近隣住民からの苦情
- 無断飼育(ペット不可物件での飼育)
- 犬・猫以外のペットで予期せぬトラブル
これらが同時に複合して起こることも多く、例えば「鳴き声」から近隣の苦情が入り、そこから調査すると「匂いや部屋の損傷もある」というように、トラブルが連鎖しがちです。また、ペットに対する考え方は人によって大きく異なるため、感情的なトラブルに発展しやすい点も特徴です。オーナーは、単なる設備トラブルとは違う“特有の難しさ”を理解しておく必要があります。

トラブル① 騒音:鳴き声・足音問題とその対処
ペット関連トラブルで最も多いのは、犬の鳴き声や走り回る音による騒音です。特に小型犬は吠える声が高音で響きやすく、鉄骨造や木造の物件では隣室や下階に音が伝わりやすい傾向があります。また、飼い主が不在の時間帯に「無駄吠え」が発生するケースも多く、本人が気づきにくいという特徴があります。
対処の基本は、まず“事実確認”です。
・何時頃に、どのくらいの頻度で鳴いているのか
・継続性があるのか
・苦情は一人からか複数からか
こうした情報をきちんと整理することで、感情論ではなく実態に基づいた対応ができます。
次に、入居者本人へのヒアリングと注意喚起を行います。ここで重要なのは「当事者同士を直接会わせない」ことです。飼い主はペットを家族同然に可愛がっているため、指摘されると感情的になりやすく、逆に苦情側も「我慢の限界」となりやすいからです。管理会社またはオーナーが間に入り、書面での注意や改善依頼を行うのが安全です。
改善に向けては、
・防音マットの設置
・ケージの位置を壁から離す
・留守番時間の見直し
・しつけ教室の利用
など、具体的な提案が効果的です。鳴き癖のある犬でも、飼い主が改善方法を知るだけで行動が落ち着くケースは多くあります。
もし注意を重ねても改善が見られない場合は、賃貸借契約の「善管注意義務違反」として是正を求めることも可能です。エスカレートする前に、早めに対応することが重要です。
トラブル② 匂い・汚損:発見が遅れやすい問題
匂いの問題は、飼い主本人が慣れてしまい気づきにくいという特徴があります。特に猫はマーキングが習性としてあるため、壁紙に尿がしみ込むと強い臭気が残り、通常の清掃では取れません。また、ケージ周りの清掃不足や、換気の悪さによって匂いが廊下に漏れ、他の入居者からの苦情につながるケースもあります。
対処としては、まず入居者への状況確認を行い、改善を依頼します。多くの場合、掃除の頻度向上やケージの配置換えだけで匂いが改善されます。
退去時の原状回復では、ペット飼育の場合、通常よりもクリーニング範囲を明確にすることが重要です。
・全室の消臭施工
・壁紙交換
・フローリング補修
これらを事前に契約書やペット飼育規約で明示しておくことで、退去時のトラブルを大幅に減らせます。
ペット可物件は退去後の清掃に時間がかかりがちですが、空室期間を短くするには「消臭施工のスピード」と「作業業者の品質」がとても重要です。対応が遅れるほど、においが染みつき、入居募集に影響します。日ごろから信頼できる業者を確保しておきましょう。
トラブル③ 設備・内装の破損
ペットによる室内の破損もよくある問題です。壁紙の爪跡、ドアのかじり跡、柱の傷、フローリングのへこみなど、見た目だけでなく修繕費にも大きな影響があります。とくに猫の爪とぎは、放置すると壁紙全面交換が必要になることも多く、数万円~10万円以上の費用になるケースもあります。
ここで重要なのが入居時の写真記録です。入居時に部屋の状態を写真で残しておけば、退去時の負担額を公平に判断できます。写真がなければ「もともとあった傷かどうか」が曖昧になり、トラブルに発展しやすくなります。
また修繕費の負担は、国交省の「原状回復ガイドライン」を基準に判断する必要があります。経年劣化はオーナー負担、故意過失・通常を超える使用による損傷は入居者負担となるため、「何が入居者負担になるのか」を契約書と飼育規約で明確にしておくことが重要です。
トラブル④ 無断飼育への対処
ペット不可物件での無断飼育は、実は非常に多いトラブルです。「一時的に預かっているだけ」「小型だから大丈夫だと思った」など、入居者側は軽い気持ちの場合が多いですが、オーナーにとっては大きな問題です。
発覚のきっかけは鳴き声や匂い、郵便物、ペット用品の搬入など様々です。対処としては、まず証拠を確認し、事実を明確にした上で正式に警告します。その際、即時解約を求めるか、違反を解消する猶予期間を与えるかの判断が必要です。
無断飼育は立派な契約違反ですが、いきなり強硬措置に出ると、逆に大きなトラブルに発展することがあります。状況によっては「是正のチャンス」を1回与える形で収めた方が、全体としてスムーズに解決することもあります。
トラブル⑤ 他の入居者との関係悪化
ペット可物件であっても、別の入居者から「鳴き声が気になる」「共用部で会ったときに怖い」といった苦情が来ることがあります。また、ペット不可住戸を混在させている物件では、不公平感が生まれやすい点にも注意が必要です。
対処のポイントは、共用部の利用ルールを明確にすることです。
・廊下・エレベーターでは抱きかかえる
・マーキングが起きたら速やかに清掃
・ベビーカーや他の犬猫と遭遇した際の配慮
こうしたルールを“事前に書面で”共有しておくことで、トラブルは大幅に減ります。
トラブル⑥犬・猫以外のペットで予期せぬトラブル
● ハムスター・ウサギ・フェレット
・かじり癖による木部・巾木・柱の破損
・砂浴び・牧草・餌による床の細かい傷
・フェレットは独特の“強い体臭”が残留
・尿のアンモニア臭が床材に染み込みやすい
ウサギはトイレを覚えるものの、個体差が大きく「床が広範囲で変色」する例も。
● 鳥類のリスクは“音”と“汚れの飛散”
インコ・オウムは人気ですが、思った以上に声量があります。
・早朝から鳴く習性で近隣クレームが出やすい
・羽根や餌殻の飛散により、換気口やクロスが汚れやすい
・大型オウムは噛む力が非常に強く、建具破損の例も
“不動産あるある”として、鳥飼育の部屋は壁紙の貼り替え割合が高い傾向があります。
●爬虫類は静かだが…管理面のリスクが大きい
ヘビ・トカゲ・カメは鳴かないため静かですが、オーナー視点では別の不安があります。
・ケージの脱走による住民騒動
・電熱器具の長時間使用による火災リスク
・大量の水換えで床が傷む、湿気やカビの増加
・餌(冷凍マウス等)保管のトラブル
その結果、設備トラブルが起きやすいペットと位置づけられます。
●魚・水棲生物は“水漏れ”が最大のリスク
アクアリウムは癒し効果がある反面、建物管理としては最も事故が多いジャンル。
・水槽の破損や転倒による階下漏水
・フィルターからの滲み漏れ
・水換え作業での床鳴り・歪み
・湿気によるクロスの剥がれ
水漏れは保険対応でも負担が大きく、事故後に解約につながりやすいのが現実です。
●昆虫(カブトムシ・クワガタ・コオロギ・爬虫類の餌用昆虫)
① コバエ・害虫の大量発生
飼育ケースからの脱走だけでなく、
餌(ゼリー・野菜)を放置することで
コバエ・ダニが繁殖
② 餌用のコオロギ・ミルワームの脱走
トラブルを招くのが「爬虫類の餌としての昆虫」。
- 音(コオロギの鳴き声)
- 床下・壁内への侵入
- 共用部で見つかって騒動
など、住民の心理的ダメージが大きい。
3. オーナーがすぐに実行できる「ペットトラブルの予防策」
ペット可物件はトラブルを完全にゼロにすることはできませんが、事前の工夫で大半を予防できます。
(1)契約面の予防
- 種類・頭数・体重を明記
- 「しつけ・鳴き癖・トラブル時の対応」などを細かく規定
- 退去時のクリーニング・消臭費用の基準を明示
- 共用部のルールは別紙規約で管理
契約書に曖昧な部分を残さないことが重要です。
(2)入居審査の強化
ペット歴、しつけ状況、留守番時間などのヒアリングを行うことで、問題の起きにくい入居者を選定できます。「ペットよりも、飼い主の性格」でトラブル発生率が大きく変わります。
(3)建物面の工夫
- クッションフロアへの張替え
- 消臭効果の高いクロス
- 玄関まわりの防臭対策
- 高級物件ではペット用足洗い場も有効
小さな設備投資でトラブルを大きく減らすことができます。

4. ペット可物件を“価値ある商品”にするための視点
ペット可にするだけで競争力は上がりますが、さらに収益性を高めるには「ペット共生」を意識した付加価値が有効です。
・足洗い場
・防音性の高い床
・消臭設備
・ペット向け収納
こうした設備を揃えると、ペットを大事にいしたいという入居者が長期入居しやすくなり、安定した収益につながります。とくに築古物件では、ペット共生をコンセプト化することで、他物件との差別化がしやすく、家賃アップも期待できます。

5. まとめ:トラブルを恐れず、運用に活かす視点を持つ
ペット可物件には確かにトラブルが付きものですが、その多くは“事前の準備”で予防可能です。契約書の整備、入居審査、設備の工夫を丁寧に行えば、むしろ安定した賃貸経営につながります。ペット市場は今後も確実に拡大していきます。オーナーとして正しい知識を身につけることで、ペット可物件は強力な武器になります。トラブルを恐れず、ぜひ賃貸経営に活かしていきましょう。
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