「ローン金利が上がったら、毎月の手残りはどこまで減るのか」「物件価格や家賃が上がっているなら、今までどおりの運営でも問題ないのか」と不安を感じている賃貸物件オーナー様も多いのではないでしょうか。
金利上昇局面では、借入返済額だけに目が向きがちです。しかし、実際の賃貸経営では、家賃収入、空室期間、修繕費、管理コスト、借入条件が複合的に影響します。
そのため、金利の動向を予測するだけではなく、物件ごとの収支を見直し、利益が残りやすい運営体制へ切り替えることが重要です。
この記事では、2026年の市場環境を踏まえながら、金利上昇時代に不動産投資の収益を守り、改善していくための具体的な考え方を解説します。
2026年の不動産投資は「価格上昇」と「収支悪化」が同時に起こり得る
政策金利の上昇は融資条件にも影響する
日本銀行は2026年7月31日の金融政策決定会合で、無担保コールレートを1.0%程度で推移させる方針を決定しました。
同時に公表された経済・物価情勢の展望では、2026年度後半以降の消費者物価上昇率が、2%を明確に上回る水準まで高まるとの見通しが示されています。今後の経済や物価の動きによっては、金利環境がさらに変化する可能性も考えておく必要があります。
金融機関の不動産投資ローンは、日本銀行の政策金利と完全に同じ動きをするわけではありません。
ただし、短期金利や長期金利、金融機関の資金調達コストが上昇すれば、新規融資や変動金利型ローンの条件に影響が及ぶ可能性があります。
地価や募集家賃が上がっても手残りが増えるとは限らない
国土交通省の2026年地価公示では、全国平均の全用途、住宅地、商業地がいずれも5年連続で上昇しました。東京圏と大阪圏では、地価の上昇幅も拡大しています。
また、アットホームが公表した2026年6月の募集家賃動向では、首都圏の賃貸マンションが全エリア・全面積帯で前年同月を上回りました。東京23区のシングル向けマンションは、25か月連続で2015年1月以降の最高値を更新しています。
このような数字だけを見ると、不動産投資にとって追い風のように見えます。
しかし、物件価格の上昇は購入利回りを低下させ、金利や修繕費の上昇は毎月の支出を増やします。募集家賃が上昇していても、所有物件の賃料をすぐに同じ割合で上げられるとは限りません。
これからの賃貸経営では、「資産価格が上がっているか」だけではなく、「実際にいくら手元に残っているか」を重視する必要があります。
まず確認したいのは金利上昇による収支への影響
0.5%の金利差でも年間収支は変わる
たとえば、借入残高5,000万円、返済期間25年、元利均等返済、ボーナス返済なしと仮定します。
金利1.5%の場合、毎月の返済額は約20万円です。金利が2.0%になると約21万2,000円となり、月額では約1万2,000円、年間では約14万4,000円の負担増となります。
一棟だけで見れば、吸収できる金額に感じるかもしれません。しかし、借入額が大きい物件や複数棟を所有している場合は、年間の手残りに与える影響が大きくなります。
また、金利上昇と同時に空室や設備故障が発生すれば、資金繰りが急に厳しくなることもあります。
※上記は一定の条件による概算です。実際の返済額は、借入条件や返済方法によって異なります。
借入契約の内容を一覧にする
収支改善の第一歩は、借入条件を正確に把握することです。次の項目を物件ごとに整理しましょう。
- 現在の借入残高と適用金利
- 固定金利か変動金利か
- 金利の見直し時期
- 毎月の元金返済額と利息額
- 固定金利期間の終了時期
- 繰上返済手数料や違約金
- 団体信用生命保険や保証料の有無
返済予定表を保管していても、複数の融資を一覧化していないケースは少なくありません。
借入状況を表にまとめることで、どの融資が金利上昇の影響を受けやすいか、どの時期に返済額が変わる可能性があるかを確認できます。

収益改善は「家賃を上げる」だけではない
賃料改定は部屋ごとに判断する
金利や物価が上昇したからといって、すべての入居者に一律で家賃の値上げを求める方法は、慎重に考える必要があります。
周辺相場よりすでに高い部屋で値上げを進めれば、退去につながり、結果として収益が下がる可能性があるためです。
まずは、部屋ごとに次の内容を比較します。
- 現在の賃料と共益費
- 同じ建物内の新規募集賃料
- 周辺の類似物件の募集条件
- 入居期間と過去の賃料改定履歴
- 設備、階数、向き、広さなどの条件差
- 更新時期と入居者の状況
周辺相場と比べて明らかに割安な部屋については、更新時期などをきっかけに、根拠を示しながら丁寧に相談する方法が考えられます。
一方、相場との差が小さい場合は、無理に賃料を上げるよりも、長期入居を優先した方が収益面で有利な場合があります。
空室期間を短くする方が効果的なケースもある
月額家賃が10万円の部屋で、賃料を3,000円上げることができれば、年間収入は3万6,000円増えます。
しかし、値上げや募集条件が原因で空室期間が1か月延びれば、10万円の家賃収入を失います。
この例では、3,000円の増額分で空室による損失を取り戻すまでに、約2年9か月かかります。賃料単価だけではなく、空室期間を含めて判断しなければなりません。
募集開始の遅れ、写真の不足、図面の見づらさ、仲介会社への情報共有不足などは、家賃を下げなくても改善できる項目です。
退去連絡を受けてから募集を開始するまでの日数や、原状回復工事が完了するまでの日数も確認しておきましょう。
家賃以外の収入も見直す
物件によっては、家賃以外の付帯収入を改善できる可能性があります。
駐車場やバイク置場の料金が長期間据え置かれている場合は、周辺相場との比較が必要です。空いているスペースを駐輪場、トランクルーム、宅配ボックスの設置場所などに活用できるケースもあります。
ただし、新たな設備投資を行う際は、「便利になりそう」という理由だけで決めるのではなく、設置費用、維持費、想定収入、回収期間を計算することが大切です。
修繕費は「削る」のではなく「使い方を変える」
緊急修繕が続く物件は計画修繕へ切り替える
金利上昇局面では、支出を減らすために修繕を先送りしたくなることがあります。
しかし、給排水設備、防水、外壁、消防設備などの不具合を放置すると、被害が拡大し、結果的に工事費が高くなる可能性があります。
修繕費を抑えるためには、必要な工事を行わないのではなく、緊急対応を減らすことが重要です。
過去3年から5年程度の修繕履歴を確認し、故障が繰り返されている設備や、築年数から更新時期が近い設備を洗い出します。
そのうえで、工事を次のように分類します。
- 今すぐ対応する必要がある工事
- 1年以内に検討する工事
- 数年後に予定する工事
工事の優先順位が明確になれば、突然の大きな出費を抑えやすくなり、資金も準備しやすくなります。
見積金額だけで判断しない
複数社から見積もりを取ることは大切ですが、最も安い会社を選べばよいとは限りません。
工事範囲、使用する材料、保証期間、追加費用の条件が異なれば、単純な金額比較はできないためです。
見積書では、工事項目が「一式」だけになっていないか、どこまでが含まれているか、工事後の保証や不具合対応がどうなるかを確認します。
管理会社からオーナー様へ見積もりを提示する際も、金額だけではなく、工事の必要性や実施しない場合のリスク、代替案が説明されていることが重要です。
借換えや繰上返済は総額で比較する
表面金利が低いだけでは判断できない
金利上昇への対策として、借換えや繰上返済を検討するオーナー様もいるでしょう。
ただし、借換えには事務手数料、保証料、登記費用、既存融資の繰上返済手数料などがかかる場合があります。
新しい金利が低くても、諸費用を含めると効果が小さいこともあります。借換え前後の毎月返済額だけではなく、残りの返済期間に支払う利息と諸費用の合計で比較しましょう。
また、手元資金を使い切って繰上返済をすると、突発的な修繕や空室に対応できなくなる可能性があります。
返済額を減らすことと、経営の安全資金を残すことのバランスが必要です。
金利上昇を想定した収支シミュレーションを行う
現在の金利だけではなく、金利が0.5%、1.0%上昇した場合の収支も計算しておきましょう。あわせて、空室率の上昇や修繕費の増加も想定します。
たとえば、次の3つのケースを作ると判断しやすくなります。
- 現在の家賃、空室率、金利が続くケース
- 金利が上昇する一方、賃料改定や空室改善が進むケース
- 金利上昇、空室増加、修繕発生が重なる厳しいケース
厳しいケースでも資金が回るかを確認しておけば、借換え、賃料改定、修繕時期の判断を早められます。
これから物件を購入する場合は「出口」まで確認する
利回りよりも金利上昇後の手残りを見る
物件情報に掲載されている表面利回りは、年間家賃収入を物件価格で割った数字です。
ローン返済、管理費、修繕費、固定資産税、空室損失などは反映されていません。
購入時には、現在提示されている金利だけではなく、将来の金利上昇を織り込んだ収支を確認する必要があります。
家賃についても、満室想定だけではなく、現在の入居状況や、実際に成約が見込める賃料を基準に判断します。
購入後に家賃を上げることを前提とした収支計画を立てる場合は、周辺相場や建物の競争力を十分に確認しなければなりません。
売却しやすい物件かも確認する
金利が上がると、買主側の借入負担も増えます。その結果、将来売却する際に、買主が希望価格で融資を受けられない可能性があります。
駅からの距離、建物の管理状態、修繕履歴、入居率、賃料設定、土地の形状などは、保有中の収益だけでなく、売却時の評価にも影響します。
購入時点から、将来どのような買主に、どのような条件で売却できそうかを考えておくことが大切です。

金利上昇時代にオーナー様が行うべき5つの確認
金利上昇への対応は、金利が上がってから始めるのではなく、余裕のある時期に準備することが重要です。
具体的には、次の5つを確認します。
- すべての借入について、残高、金利タイプ、見直し時期を一覧にする
- 部屋ごとの現行賃料と周辺相場を比較する
- 空室期間、募集開始までの日数、原状回復工事の期間を確認する
- 今後数年間の修繕計画と必要資金を整理する
- 金利上昇や空室増加を想定した収支シミュレーションを行う
これらを定期的に見直すことで、家賃を上げるべき部屋、長期入居を優先する部屋、修繕を先行すべき設備、借入条件を相談すべき融資が見えやすくなります。
まとめ
金利上昇は、不動産投資の収益を圧迫する要因の一つです。しかし、賃貸経営の収益は金利だけで決まるものではありません。
家賃設定、空室期間、募集方法、修繕計画、借入条件を一つずつ見直すことで、返済負担の増加を補い、手残りを改善できる可能性があります。
反対に、地価や募集家賃が上がっているという理由だけで従来どおりの運営を続けると、売上は大きく変わらないのに、支出だけが増える状況になりかねません。
まずは、所有物件ごとの実際の収支を把握し、「どこで収入を増やせるか」「どの支出を適正化できるか」「どのリスクを先に抑えるか」を整理することが大切です。
借入条件、賃料相場、空室状況、修繕計画をまとめて確認したい場合は、金融機関だけでなく、日常の募集状況や入居者対応を把握している管理会社にも相談することで、より実務的な改善策を検討しやすくなります。
