これまでの不動産投資では、「借入金利は低いもの」という前提で収支計画を立てていたオーナー様も少なくありません。特に、アパートローンや投資用マンションローンを変動金利で借りている場合、低金利の恩恵を受けながら賃貸経営を続けてきた方も多いのではないでしょうか。
しかし、近年は金利環境が大きく変わりつつあります。不動産投資において金利上昇は、単に「毎月の返済額が少し増える」という話だけではありません。キャッシュフローの悪化、修繕資金の不足、追加融資の難化、売却タイミングの判断など、賃貸経営全体に影響を与える重要なテーマです。
そこで今回は、変動金利で借入をしている不動産オーナー様が、金利上昇時代に確認しておくべきポイントを分かりやすく解説します。
なぜ今、変動金利の確認が必要なのか
これまで日本では長期間にわたり低金利が続いてきました。そのため、不動産投資を始める際にも「金利はしばらく大きく上がらないだろう」という前提で、変動金利を選択した方は多いと思います。
変動金利は、固定金利に比べて借入当初の金利が低く設定されていることが多く、毎月の返済額を抑えやすいというメリットがあります。購入時の収支シミュレーション上も、変動金利を前提にすると手残りが多く見えるため、投資判断をしやすくなる面があります。
一方で、変動金利には当然ながら「金利が上がるリスク」があります。金利が上昇すれば、毎月の返済負担が増え、当初想定していたキャッシュフローが圧迫される可能性があります。
特に不動産投資の場合、マイホームの住宅ローンとは異なり、家賃収入からローン返済、管理費、修繕費、固定資産税、保険料などを支払う必要があります。金利上昇によって返済額が増えた場合、その分だけ手残りが減り、物件によっては収支が赤字に転じることもあります。
まず確認すべきは「現在の借入条件」
金利上昇への対策を考える前に、まずは現在の借入条件を正確に把握することが大切です。意外と多いのが、「金利が何%か」「残債がいくらか」「金利見直しのタイミングがいつか」を曖昧にしたまま賃貸経営を続けているケースです。
最低限、以下の項目は確認しておきましょう。
- 現在の借入残高
- 現在の適用金利
- 金利タイプが変動金利か固定期間選択型か
- 毎月の返済額
- 元金と利息の内訳
- 返済期間の残り
- 金利見直しのタイミング
- 繰上返済手数料の有無
- 借り換え時の違約金や事務手数料
特に重要なのは、毎月の返済額のうち「元金」と「利息」がどの程度の割合になっているかです。金利が上がると、同じ返済額の中でも利息部分が増え、元金の減り方が遅くなる場合があります。
つまり、表面上の毎月返済額がすぐに大きく変わらなかったとしても、内部では利息負担が増え、将来的な総返済額が膨らんでいる可能性があります。

金利が上がった場合の返済額を試算する
次に行うべきことは、金利が上がった場合の返済額を試算することです。
たとえば、現在の金利が1.0%だったとしても、将来的に1.5%、2.0%、2.5%になった場合に、毎月の返済額がどの程度変わるのかを確認しておく必要があります。
ここで大切なのは、「少し上がったらどうなるか」だけでなく、「想定より大きく上がった場合でも耐えられるか」を見ることです。
不動産投資では、ローン返済以外にもさまざまな支出があります。空室が出れば家賃収入は減りますし、退去があれば原状回復費がかかります。築年数が進めば、給湯器、エアコン、水回り、外壁、屋上防水などの修繕費も発生します。
そのため、金利上昇後の収支を確認する際には、満室時だけでなく、空室が出た場合や修繕費が重なった場合も想定しておくことが重要です。
確認したいシミュレーション例
- 金利が0.5%上がった場合
- 金利が1.0%上がった場合
- 金利が2.0%上がった場合
- 1室空室が出た場合
- 家賃が下落した場合
- 大規模修繕が発生した場合
- 固定資産税や保険料が上がった場合
このように複数のパターンで確認しておくことで、「どこまでなら耐えられるか」「どの時点で対策が必要か」が見えてきます。
キャッシュフローが黒字でも安心とは限らない
不動産投資では、毎月の家賃収入からローン返済や管理費などを差し引いた後に、手残りが出ていれば一見問題ないように見えます。
しかし、金利上昇時代には「今のキャッシュフローが黒字だから大丈夫」とは言い切れません。
たとえば、毎月3万円の手残りがある物件でも、金利上昇によって返済額が2万円増えれば、手残りは1万円になります。さらに退去が発生し、原状回復費や広告料がかかれば、年間収支では一気に赤字になる可能性があります。
また、築年数が経過している物件では、突発的な修繕が発生するリスクも高まります。給湯器交換、エアコン交換、漏水対応、共用部設備の修理などは、いつ発生してもおかしくありません。
つまり、金利上昇時代に見るべきなのは、単なる毎月の黒字額ではなく、「金利上昇や突発支出があっても耐えられる余力があるか」です。
返済比率を確認する
変動金利で借りているオーナー様が必ず確認しておきたい指標の一つが、返済比率です。
返済比率とは、家賃収入に対してローン返済額がどの程度を占めているかを示すものです。
たとえば、毎月の家賃収入が30万円で、ローン返済が18万円であれば、返済比率は60%です。家賃収入のうち6割が返済に回っている状態です。
返済比率が高い物件は、金利上昇や空室の影響を受けやすくなります。反対に、返済比率が低い物件は、多少金利が上がっても収支に余裕が残りやすいといえます。
もちろん、適正な返済比率は物件の種類やエリア、築年数、修繕状況によって異なります。ただし、現時点で返済比率が高い場合は、金利上昇に備えて早めに対策を検討した方がよいでしょう。

借り換えを検討すべきケース
金利上昇が気になる場合、選択肢の一つとなるのが借り換えです。
借り換えによって、現在より低い金利に変更できたり、固定金利に切り替えることで将来の返済額を安定させたりできる可能性があります。
ただし、借り換えには事務手数料、保証料、登記費用、印紙代などの諸費用がかかります。そのため、単純に金利だけを見て判断するのではなく、借り換えによって総返済額がどの程度変わるのかを確認することが大切です。
借り換えを検討したいケース
- 現在の金利が相場より高い
- 残債が多く、返済期間も長く残っている
- 金利が上がるとキャッシュフローが大きく悪化する
- 固定金利にして返済額を安定させたい
- 金融機関との条件交渉が難しい
一方で、残債が少ない場合や返済期間が短い場合は、借り換えメリットが小さいこともあります。借り換えを検討する際は、複数の金融機関に相談し、諸費用を含めた総額で比較することが重要です。
繰上返済は慎重に判断する
金利上昇への対策として、繰上返済を考えるオーナー様もいるでしょう。借入元本を減らせば、将来の利息負担を抑えることができます。
ただし、不動産投資における繰上返済は、必ずしも最優先とは限りません。
なぜなら、手元資金を大きく減らしてしまうと、空室や修繕、税金、設備交換などへの対応力が落ちるからです。特に賃貸経営では、突発的な支出に備えた資金を残しておくことが非常に重要です。
たとえば、手元資金をすべて繰上返済に回した直後に、大規模修繕や複数戸の退去が発生すると、追加借入や自己資金の持ち出しが必要になる可能性があります。
繰上返済を行う場合は、以下の点を確認しましょう。
- 繰上返済後も十分な手元資金が残るか
- 今後1〜2年以内に大きな修繕予定がないか
- 空室が発生しても返済を続けられるか
- 繰上返済手数料がかからないか
- 期間短縮型と返済額軽減型のどちらが適しているか
金利上昇への不安だけで焦って繰上返済をするのではなく、物件全体の資金計画を見ながら判断することが大切です。
家賃の見直しも重要な対策
金利が上がると、支出面ばかりに目が向きがちですが、収入面の見直しも重要です。
特に、長期間同じ家賃のまま貸している物件や、周辺相場よりも低い賃料で入居が続いている物件は、家賃見直しの余地があるかもしれません。
もちろん、既存入居者に対して簡単に家賃を上げられるわけではありません。賃料増額には法的な要件や入居者との合意が必要になるため、慎重な対応が必要です。
しかし、退去後の再募集時であれば、周辺相場や設備状況を踏まえて、適正賃料に見直すことができます。
たとえば、近隣の同条件物件より家賃が低い場合、設備交換や内装改善を行うことで、家賃アップを狙えるケースもあります。特に、エアコン、独立洗面台、モニター付きインターホン、宅配ボックス、無料インターネットなどは、入居者ニーズに直結しやすい設備です。
金利上昇時代には、支出を抑えるだけでなく、物件の収益力を高める視点も必要です。

空室期間を短くすることが最大の防衛策になる
金利が上がって返済負担が増えたとしても、安定して家賃収入が入っていれば大きな問題にならないケースもあります。
反対に、空室が長引くと、金利上昇以上に収支へ大きなダメージを与えます。
たとえば、家賃10万円の部屋が3か月空室になれば、単純計算で30万円の収入減です。さらに、原状回復費や広告料がかかれば、実際の負担はさらに大きくなります。
そのため、金利上昇時代の賃貸経営では、「空室を出さない」「空室期間を短くする」ことが非常に重要です。
空室対策で確認したいポイント
- 募集賃料が相場に合っているか
- 写真や間取り図が魅力的に見えるか
- 募集条件が競合物件に負けていないか
- 内見時の印象に問題がないか
- 設備が古くなりすぎていないか
- 管理会社から改善提案があるか
金利上昇に備えるというと、金融機関との交渉や借り換えばかりを考えがちですが、実際には日々の賃貸管理の質が収支を大きく左右します。
売却という選択肢も早めに検討する
金利上昇によって収支が厳しくなる物件については、売却も選択肢の一つです。
不動産投資では、「持ち続けること」が必ずしも正解とは限りません。築年数が進み、修繕費が増え、家賃下落リスクが高まり、さらに金利負担も増えるようであれば、早めに出口戦略を考える必要があります。
特に以下のような物件は、今後の保有継続について慎重に見直した方がよいでしょう。
- 金利上昇でキャッシュフローが赤字になる
- 築年数が古く、大規模修繕が近い
- 空室期間が長期化している
- エリアの賃貸需要が弱くなっている
- 家賃下落が続いている
- 今後の追加投資に見合う収益改善が見込めない
売却は、収支が完全に悪化してから検討するよりも、まだ物件の評価が残っている段階で検討した方が選択肢は広がります。
「今すぐ売る」という意味ではなく、「持ち続けた場合」と「売却した場合」を比較しておくことが重要です。
管理会社に相談すべきこと
金利上昇への対応は、金融機関だけでなく、管理会社にも相談する価値があります。
なぜなら、管理会社は日々の賃貸運営を通じて、家賃相場、空室状況、入居者ニーズ、修繕履歴、募集条件などを把握しているからです。
オーナー様が金融機関に相談すると、どうしても借入条件や返済計画の話が中心になります。一方、管理会社に相談することで、物件の収益力を上げるための具体的な改善策を検討できます。
管理会社に確認したい内容
- 現在の家賃は相場に合っているか
- 退去後に賃料アップできる可能性はあるか
- 空室期間を短くするための改善点は何か
- 今後発生しそうな修繕は何か
- 優先すべき設備投資は何か
- 管理内容に改善余地はあるか
- 売却した場合の査定感はどうか
金利上昇時代には、単にローン返済を見直すだけでなく、物件そのものの運営力を高めることが重要です。

まとめ:金利上昇時代は「確認」と「早めの対策」が重要
変動金利で借入をしている不動産オーナー様にとって、金利上昇は避けて通れないテーマです。
ただし、金利が上がること自体を過度に恐れる必要はありません。大切なのは、現在の借入条件と物件収支を正確に把握し、どの程度の金利上昇まで耐えられるのかを事前に確認しておくことです。
確認すべきポイントは、現在の金利、残債、返済額、返済比率、空室リスク、修繕予定、家賃見直しの余地、借り換えや繰上返済の可能性など、多岐にわたります。
特に、金利上昇によってキャッシュフローが大きく悪化する物件は、早めの対策が必要です。借り換え、繰上返済、家賃見直し、空室対策、修繕計画の見直し、場合によっては売却まで含めて検討することが大切です。
不動産投資は、購入して終わりではありません。金利、家賃、修繕費、空室率、税金など、さまざまな要素を見ながら、状況に応じて運営方針を見直していく必要があります。
これからの時代は、低金利に頼った不動産投資ではなく、収支管理と賃貸運営の質がより重要になります。
変動金利で借入をしているオーナー様は、ぜひ一度、現在の借入条件と物件収支を見直してみてください。早めに確認しておくことで、金利上昇時代でも落ち着いて賃貸経営を続けることができます。
