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賃貸アパートが事故物件になったらどうする?告知義務から損害賠償・保険まで徹底解説

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2021.12.06
  • 賃貸経営得情報

・入居者の家族や職場から「連絡が取れない」「出社してこない」と連絡が入る

・近隣住民から、異臭や天井・壁のシミなど、異変について連絡が入る

賃貸アパートでは、そうした連絡をきっかけに、大家さんや賃貸管理会社が入居者死亡を発見するケースが多いです。

病気・事故・自殺・事件など、何らかの事情により入居者が死亡した物件を、「事故物件」と言います。

最近は有名人が運営する事故物件検索サイトや、その部屋で起きた心霊現象が書籍化や映画化されるなど、事故物件が一躍話題に。

中には事故物件を調べて、好んで入居する人もいると言います。

しかし人が亡くなった事故物件というのは、一般的には避けられやすいもの。

清掃費や原状回復に費用がかかったり、入居率が下がるため家賃値下げが必要になるなど、事故物件は賃貸経営のリスクにもなります。

賃貸物件が事故物件となったとき、大家さんはどのような対応をすべきなのでしょうか?

そこで、

■事故物件の定義

■賃貸契約における事故物件の告知義務

■事故物件になったとき大家さんが取るべき対応

■事故物件になったら損害賠償請求できるのか

■賃貸経営の事故物件リスクに備える保険

について解説。

2021年10月には、国土交通省により事故物件に関するガイドラインが策定されました。

ガイドラインの内容を基に、事故物件の正しい定義や、大家さんとしての適切な対応、損害賠償請求の可否や保険といったリスク管理方法まで、詳しくご紹介します。

ガイドラインで示された事故物件の定義

これまで、「事故物件」についての明確な定義はありませんでした。

人の死には、火災・転落などの事故から自殺、殺人などの事件、病気などによる自然死まで、様々な理由があります。

入居者の死亡理由のどこまでを事故物件とするのか、

・ある仲介業者は、共用部分のエレベーター内で入居者が病死した件を事故物件として告知したり

・ある仲介業者は、10年前に部屋内で起きた自殺を、現在では告知していなかったり

事故物件の判断基準が曖昧であったため、不動産会社によって借主への説明はバラバラに行われていました。

そのため事故物件の事実が隠されていたと、契約後に借主から損害賠償を求められるケースが起こるなど、円滑で安心な不動産取引に弊害が生じていました。

また近年は少子高齢化による高齢者の1人暮らしの増加で、入居者が孤独死するケースも増えています。

入居者死亡による事故物件化を避けるあまり、単身高齢者の賃貸住宅への入居が困難になるといった弊害も起きていました。

そこで2021年10月、国土交通省は「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定。

人の死が生じた不動産取引について、借主や買主に「事故物件」として告知が必要なケースを明確にしました。

賃貸契約における事故物件の告知義務について

国土交通省のガイドラインでは、人の死が生じた不動産取引について、事故物件として告知が不要・必要な事例を具体的に示しています。

告知要否の基準となるポイントは、

■死の原因(自然死・不慮の死か、自殺・他殺かなど)

■死の発生または発覚からの経過期間

■死の発生場所(物件内か、共用部分か、隣接住戸かなど)

■特殊清掃の有無

といった点です。

また原則として、取引の相手方に重要な影響を及ぼす場合は告知が必要としているのもポイントです。

告知要否の基準は「賃貸借」「売買」かで異なるため、ここでは賃貸借契約の場合の基準をご紹介します。

告知が「不要」の事故物件

■自然死(老衰や病死など)、日常生活の中での不慮の死(転倒事故や誤嚥など)

■自殺や他殺でも、事案発生から3年経過したもの

■自然死・不慮の死で特殊清掃が行われた場合でも、事案発覚から3年経過したもの

■隣接住戸や通常使用しない共有部分での死(自殺や他殺を含む)

上記の場合、宅地建物取引業者は、借主に事故物件であることの告知をする必要はありません。

例えば病死、風呂場での溺死、階段からの転倒による事故死などは、「自然死・不慮の死」なので、事故物件として借主に告知する必要はありません。

また自殺や他殺などでも、3年経過すれば告知義務は不要とされています。

ただし上記に当てはまる場合でも、事件性・周知性・社会に与えた影響が大きい事案の場合は、借主に告知が必要とされています。

たとえ3年経過していても、事件として大きく報道されたり、異臭騒ぎなどで近隣にその事案が広く知られることとなった場合は、告知が必要と考えられます。

告知しなければ、後に借主から訴訟を起こされた場合、告知が必要な事案だったと判断される可能性もあります。

告知が「必要」な事故物件

■自殺や他殺(事案発生から3年以内)

■自然死・不慮の死でも、特殊清掃が行われた場合(事案発覚から3年以内)

■告知不要とした事案でも、事件性・周知性・社会に与えた影響が高く、取引の相手方の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合

自殺や他殺などの場合は、告知が必要です。

また自然死や不慮の死でも、孤独死などで発見が遅れ、特殊清掃が必要になった場合は告知が必要です。

賃貸借契約の場合はこれらのケースでも、3年経過すれば告知不要となりますが。

不動産売買の場合は、経過期間に関わらず告知が必要です。

告知する事項

事故物件であることを借主に告知する場合は、事案の

■発生時期(特殊清掃が行われた場合は発覚時期)

■場所

■死因

■特殊清掃が行われた場合はその旨

を告げる必要があります。

ただし亡くなった方や遺族のプライバシーに配慮し、氏名・年齢・家族構成や、具体的な死の態様・発見状況までは詳細に告げる必要はないとしています。

賃貸アパートが事故物件になった時、大家さんがとるべき対応は?

経営する賃貸アパートで入居者死亡が起こった場合、大家さんは具体的にどのような対応をとればよいのでしょうか。

具体的には、

・警察や連帯保証人に連絡

・賃貸借契約の解約、家賃などの精算、家財や遺品整理

・特殊清掃

・原状回復

・次の入居者募集開始にあたって告知

・損害買収請求などの協議

といった対応が必要になります。

賃貸管理会社に連絡すればおおよその対応を任せられますが、大家さんも流れについて知っておくと、事案への対応がスムーズになります。

警察に連絡

入居者安否の確認のため賃貸物件への立ち入りが必要になった場合や、入居者死亡が発見された場合は、まずは警察に連絡しましょう。

警察立ち会いの元、入居者死亡が確認された場合は、事故や事件に巻き込まれたのか、自殺なのか、病死なのか。

その後の諸々の適切な対応のためにも、死因をきちんと捜査してもらう必要があります。

入居者の親族や連帯保証人に連絡

賃貸借契約時に指定されている緊急連絡先や連帯保証人に連絡し、入居者死亡の事実を伝える必要があります。

また賃貸借契約の解約、家賃・敷金などの精算、家財や遺品整理など、各種手続きについて、連帯保証人や相続人と協議します。

場合によっては、損害賠償請求について協議する必要もあります。

特殊清掃や原状回復

孤独死で発見がかなり遅れた場合や、酷暑の時期、風呂場での溺死、自殺や殺人など。

死亡時の状況によっては、室内の汚れの除去や消臭といった、特殊清掃が必要になる場合があります。

また特殊清掃を請け負う業者を探して、手配する必要もあります。

特殊清掃が終わったら、床や壁紙などを貼り替えたり設備を交換するなど、通常の原状回復を手配します。

次の入居者募集にあたって告知

入居者死亡がガイドラインで定められている事案に当てはまる場合、次の入居者募集にあたっては、借主・買主に事案の告知が必要になります。

また正しい告知を行うため、宅地建物取引業者は、貸主に事故物件の事案について告知書に記載を求めることが調査義務とされました。

つまり大家さんは、事故物件を所有している場合、不動産仲介会社から事案についてのヒアリングや告知書への記入を依頼される可能性があります。

ガイドラインでは、事故物件で発生した事案の「発生時期・場所・死因・特殊清掃の有無」などを告知する必要があるとしています。

もし入居希望者が契約を辞めることを恐れて、事故物件の事案を正しく告知しなければ、告知義務違反として借主から損害賠償を求められる可能性もあります。

賃貸アパートが事故物件になったら、損害賠償請求できる?

入居者死亡が起こると、特殊清掃に費用がかかったり、本来得るはずだった家賃収入が途絶えたり、物件価値が下がりその後の家賃を大幅に下げる必要があったり…

大家さんには様々な損害が発生します。

これらの損害は、入居者の連帯保証人や相続人と協議に賠償請求することができます。

しかし入居者死亡の理由によって、損害賠償請求が認められるケース・認められないケースがあります。

入居者死亡が自殺の場合

自殺は、入居者の故意による死亡のため、特殊清掃費用・原状回復費用・家賃損失などの損害買収請求が認められるケースがほとんどです。

例えば原状回復費用は、入居者の故意による棄損であれば、入居者(もしくは連帯保証人)の負担になりますが。

故意でない場合は大家さんが負担するものと、原状回復のガイドラインによって定められています。

自殺は入居者の故意であるため、特殊清掃や原状回復費用は、入居者側(連帯保証人)に支払義務が生じます。

【関連記事】賃貸オーナーが知っておきたい原状回復のガイドラインや費用負担ルール

また過去には、入居者の自殺によって家賃を値下げしたことで生じた損害賠償責任を、連帯保証人が負うことを認めた判決も多く出ています。

入居者死亡が自然死・不慮の事故の場合

自然死・不慮の事故死の場合は、入居者故意ではないため、損害賠償請求が認められないケースがほとんどです。

2021年10月の事故物件ガイドラインでも、自然死・不慮の事故死の場合は告知不要とされているため、今後も損害賠償請求は難しいと考えるのが妥当です。

事故物件リスクに備える保険

入居者死亡の際の特殊清掃や原状回復費用は、通常の原状回復より高額で、数百万円に及ぶケースも多いと言われています。

仮に入居者死亡の理由が自殺で、損害賠償請求が認められたとしても、連帯保証人や相続人に支払能力がなければ、損失金額を回収できない可能性もあります。

また入居者死亡が自然死や不慮の事故であれば、諸々の損失は大家さんが負担するしかありません。

死は、年齢や立場に関係なく、誰にでも平等に起こり得るリスクです。

賃貸アパートが事故物件となった場合のリスクに備えるには、大家さん向けの「孤独死保険」がおすすめです。

孤独死保険は、入居者の自殺・他殺を含む孤独死が起こった場合の

・特殊清掃や原状回復費用

・家賃の損失

などを補償してくれます。

保険料も手頃なのが特徴です。

まとめ

人が生活を営む賃貸住宅を経営する以上、人の「死」に出逢うことは一定避けられないでしょう。

そして人の死というのは、死亡した人にとっても、新たな入居者にとっても非常にデリケートな問題。

ガイドラインでは、事故物件の調査や告知に関する留意事項として

「亡くなった方やその遺族等の名誉及び生活の平穏に十分配慮」

する必要があるとし、これらを不当に侵害することのないよう慎重な対応を求めています。

事故物件は確かに、賃貸経営としてはリスクです。

人が亡くなった部屋に住みたいかと言われれば、はいと答える人の方が少ないでしょう。

しかし安心かつ納得感のある賃貸借契約のためには、ガイドラインに則って、事故物件について正しく告知することが必要です。

また「死」を一括りで忌み嫌うのではなく、誰にでも起こりうる自然死・不慮の死を事故物件から切り離すことで、亡くなった人や遺族の尊厳を守りながら、不動産取引も円滑にする効果が期待できます。

経営する賃貸アパートの入居者に不幸があったときは、ガイドラインを基に適切な対応を行うとともに、損害賠償請求や保険などによって適切なリスク管理も行いましょう。

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