賃貸物件で立ち退きの正当事由とは?参考となる過去の判例も紹介
blog02
- 賃貸経営得情報
東京で賃貸管理業をおこなう(株)アブレイズパートナーズです。
老朽化した賃貸物件を所有しているオーナー様、
「取り壊して建て替えたいが、入居者の退去見通しがたたない」
など、お悩みはありませんか。
賃貸物件の立ち退きを依頼する際にも、
「立ち退きの依頼からトラブルに発展するのが嫌だ」
「立ち退きの依頼はどのようにするの?」
「立ち退き料を求められたらいくらが相場?」
など、不安に感じる点も多いですよね。
賃貸物件の立ち退きを依頼するには、
・正当な事由があるか
・いつまでに依頼する必要があるか
・立ち退き料を求められた際の金額提示
など、多くの注意点が必要です。
そこで、今後賃貸物件の立ち退きを依頼したいと考えているオーナー様向けに
■立ち退きを依頼する際の正当事由
■立ち退き料の相場
■入居者にはいつまでに依頼すべきか
■立ち退きを依頼する手順
■立ち退きに関する判例
などをご説明します。
賃貸物件の立ち退き依頼は、慎重に行う必要があります。
立ち退きをめぐるトラブルにつながると、解決までに長い年月と費用がかかる可能性も…。
ぜひ最後までご覧いただき、賃貸物件の立ち退きを円滑に進める参考にしてください。
賃貸物件の立ち退き依頼には、正当事由が必要
賃貸物件のオーナー様から立ち退きを求めるには、正当事由がなければ賃貸契約の解除は認められないとされています。(借地借家法第28条)
正当事由とは、オーナー様から入居者に明け渡しを求めるにあたって、一般社会の常識的な理由を指します。
具体的な正当事由として、
・老朽化により建物が倒壊する恐れがあるための建て替え
・賃料の未払い
・ほかの入居者への迷惑行為などの契約違反
などがあります。
賃貸物件の立ち退き理由の老朽化の基準
賃貸物件の立ち退きを依頼する代表的な正当事由である建物の老朽化。
建物が老朽化することで、
・倒壊
・設備故障
・修繕するには膨大な費用
など、賃貸経営にも危険な影響を及ぼします。
建物の老朽化を判断する基準として、耐震基準の確認がおすすめです。
耐震基準の確認方法
1981年5月31日以前に建築確認申請がおこなわれた賃貸物件は、震度5強程度の地震でも耐えられる構造設計です。(旧耐震基準)
一方、1981年6月1日以降に建築確認申請がおこなわれた賃貸物件は、震度6強から7程度の地震でも倒壊しない構造設定となっています。(新耐震基準)
平成28年4月に発生した熊本地震では、旧耐震基準で建てられた木造家屋に大きな被害がありました。
旧耐震基準で建てられた賃貸物件は、震度6強から7程度の大地震が直撃すると倒壊する危険性が非常に高いとされています。
旧耐震基準の賃貸物件を所有されているオーナー様は、1度耐震診断することをおすすめします。
とくに築古の賃貸物件は、
・老朽化
・旧耐震基準での建築
などの理由から倒壊の危険性が高いため、立ち退きを依頼する正当事由として認められることが多いです。
賃貸物件の立ち退き料の相場は?
賃貸物件の立ち退き料の相場は、賃料の6~8か月分と想定しておきましょう。
立ち退き料の相場は、入居者が次の賃貸物件へ移転するために必要な費用として算定します。
しかし立ち退き料には、「この金額であれば問題ない」という決まりがありません。
賃貸物件の立ち退きを依頼する際の、参考程度に押さえておきましょう。
また、立ち退き料は必ずしも支払うものではありません。
実際に立ち退きを依頼した際に、立ち退き料を支払わずに退去してもらえることもあります。
しかし正当事由などがあっても、立ち退きに強制力はないので、立ち退き料を支払うことが多いのが現実です。
立ち退き料は正当事由が不十分の際に、正当事由を補う側面もあります。
賃貸物件の立ち退きはいつまでに依頼するべきか
賃貸物件の立ち退きを依頼する際には、事前に入居者に通知する必要があります。
賃貸契約が
・普通借家契約
・定期借家契約
のいずれかにより、立ち退きを依頼できるタイミングは異なります。
詳しく解説していきます。
普通借家契約は退去希望日から6か月間の期間を設ける
普通借家契約は、正当な事由がある場合に限り、退去希望日の最低6か月前までに依頼しなければなりません。
普通借家契約とは、一般的な賃貸契約の方法です。
契約期間は1年以上で設定され、期間満了後は入居者が希望すれば更新が可能。
入居者が手厚く保護される契約形態であり、オーナー様からの一方的な都合による立ち退きは認められません。
そのため立ち退きを依頼する際は、正当な事由+立ち退き料の支払いが必要になるケースが多いです。
定期借家契約は契約期間満了の1年前から6か月前
定期借家契約は、契約期間満了の1年前から6か月前までにオーナー様から入居者に対して、契約を終了する旨を通知する義務があります。
定期借家契約とは、契約期間があらかじめ決められている賃貸契約です。
賃貸契約の更新には、オーナー様と入居者の双方の同意があれば可能。
賃貸契約の期間中は、オーナー様から入居者に対して立ち退きの依頼をすることは、原則不可能です。
賃貸物件の立ち退きを依頼する際の手順
賃貸物件の立ち退きを依頼する際の手順をご説明します。
トラブルなく立ち退きに応じてもらえるよう、入居者への提案などもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
手順1.入居者へ立ち退きに関する通知
初めに入居者に対して、賃貸物件の立ち退きを依頼します。
賃貸契約の方法が普通借家契約の場合は、退去希望日の1年から6か月前。
定期借家契約の場合は、契約期間満了の1年から6か月前までに依頼しましょう。
また、依頼についても「内容配達証明郵便」にて記録に残すことをおすすめします。
手順2.代替物件の提案
立ち退きの依頼をしたあとに、入居者へ連絡しましょう。
賃貸物件を退去してもらえるか確認しておく必要があります。
入居者が移転先の物件が見つからない場合は、代替物件を提案することをおすすめします。
手順3.立ち退き料の交渉
立ち退きに必要な費用を入居者と交渉します。
立ち退き料の相場は、賃料の6~8か月程度とご説明しましたが、より高額な請求があるかもしれません。
入居者が立ち退きを拒否することで、オーナー様にも不利益が生じる場合は、入居者が納得する立ち退き料を支払うことも覚悟しなければなりません。
賃貸物件の立ち退きは、お互いの事情を考慮する必要があります。
賃貸物件から立ち退いてもらう状況や事情など、誠意をもって説明しながら円滑に解決することが重要です。
賃貸物件の立ち退き交渉での注意点
賃貸物件の立ち退きは、入居者にとっても慣れ親しんだ住宅を退去するため、交渉がスムーズに進まないことも想定されます。
賃貸物件の立ち退き交渉の注意点として、
・立ち退きを依頼する理由を丁寧に説明する
・入居者側の事情もしっかりと受け止める
・事前に譲歩できる点を考えておく
・文書により解決案を提示する
などがあります。
とくに立ち退き交渉の際には、入居者も感情的になるケースもあるためオーナー様も丁寧な対応が求められます。
また文書を活用して立ち退き交渉を進めることで、
・交渉手段の切り口を変えられる
・特定記録郵便などを活用することで記録にも残せる
などのメリットもあるため、おすすめです。
賃貸物件の立ち退き拒否には弁護士相談がおすすめ
オーナー様から入居者へ立ち退きを依頼しても拒否されることもあります。
立ち退きを依頼する正当事由が明確であっても、入居者との賃貸契約が解除できない限り立ち退きは成立しません。
入居者が賃貸物件に居座り続けた場合は、立ち退き交渉を弁護士へ依頼することで、入居者との交渉がスムーズに進むケースもあります。
弁護士は立ち退き料の相場や過去の判例などの知識も豊富であるため、立ち退きをめぐるトラブルの早期解決が期待できるんです。
また賃貸物件の老朽化により、倒壊するなどの正当事由が明確な場合、弁護士へ訴訟手続きを依頼することも可能。
訴訟により立ち退きを依頼する「正当事由」を立証できれば、立ち退き交渉を進めやすくなります。
立ち退きを求めて訴訟する際には、
・立ち退き料の確認
・いつまでに退去するか
・期日までに退去しなかった場合の損害賠償
なども明確に決めておきましょう。
賃貸物件の立ち退きに関する過去の判例
ここからは、賃貸物件の立ち退きに関する判例をご紹介します。
立ち退きに関する立ち退き料などでトラブルにつながる可能性もありますので、ぜひ参考にしてください。
判例1.立ち退き料をめぐるトラブル
オーナー様は、築40年の老朽化した木造アパートを取り壊して、マンションの建築を計画していました。
また、木造アパートの隣接地にオーナー様所有のアパート跡地も存在しており、土地を有効活用する観点からも立ち退きを依頼。
オーナー様は、入居者に対して立ち退き料200万円を提示しましたが、立ち退き交渉は決裂しました。
オーナー様から入居者に対し賃貸契約の解約申し入れをしましたが、立ち退きに応じないことから提訴したケース。
今回のケースで判決の要点は、
・賃貸物件の木造アパートが建築から40年が経過している
・マンションの建築計画には合理性がみられる
・立ち退き料は、移転実費分および現賃料と転居後賃料の差額の1~2年分程度が妥当
などになります。
訴訟の判決として、オーナー様の立ち退きを依頼する事由が認められ、
・オーナー様から入居者へ約200万円の立ち退き料
・入居者からオーナー様へ賃料相当損害金の支払い
などが命じられました。
参考:東京地裁 平成12年3月23日
判例2.賃貸物件が倒壊する恐れがあるという契約解除の正当事由が否定される
築45年の賃貸物件を耐震診断したところ、「倒壊する可能性が高い」という診断を受けました。
オーナー様は賃貸物件を取り壊したいため、入居者へ立ち退きを依頼。
しかし賃貸物件の補強工事を施せば、倒壊する恐れはなくなるため、入居者は補強工事を依頼し、立ち退きを拒否しました。
オーナー様が賃貸契約の解除を求めて提訴したケース。
今回のケースで判決の要点は、
・賃貸物件の築年数が45年と老朽化がみられる
・補強工事を施せば、賃貸物件が倒壊する恐れはなくなる
などになります。
訴訟の判決として、オーナー様の正当事由は否定され、賃貸物件の補強工事を命じられました。
賃貸物件の立ち退きを依頼する際の正当事由として、「老朽化による建て替え」があります。
しかし正当事由として重要なのは、入居者を立ち退かせてまで賃貸物件を使用する事情です。
今回の判決で示されているように、補強工事により建物の安全性が保たれるのであれば、オーナー様は補強工事を実施する義務が生じます。
参考:東京地裁 平成22年3月17日
まとめ
賃貸物件の立ち退きに関する
・立ち退きを依頼する際の正当事由
・立ち退き料の相場
・入居者にいつまでに依頼すべきか
・立ち退きを依頼する手順
・立ち退きに関する判例
などをご説明しました。
賃貸物件の立ち退きを依頼する際には、お互いの事情を考慮し、譲り合うことが重要です。
オーナー様や入居者のどちらかの意向だけを尊重すると、立ち退きも円滑には進みません。
オーナー様も日ごろの賃貸管理から入居者と良好な関係を築いておく必要があります。
入居者との良好な関係を築くためにも、
・現状復旧作業などは迅速に行う
・日頃のあいさつなど、コミュニケーションをとる
・クレーム対応も親切な態度を心掛ける
など、賃貸管理で気を付けるべき項目は多くあります。
賃貸経営は実施すべき作業も多く、長期的な目線で維持管理を進めるなど大変な面が多いです。
また、賃貸物件が老朽化のため建て替えが必要となる場合も、中長期の計画を作成しておけば計画的に立ち退きの交渉が可能です。
(株)アブレイズパートナーズでは、日ごろの賃貸管理から立ち退き交渉まで、オーナー様の健全な賃貸経営を全力でサポートします。
賃貸管理なら、(株)アブレイズパートナーズにおまかせください。