ZEH(ゼッチ)は賃貸経営に有効?メリットから補助金まで徹底解説
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- 賃貸経営得情報
ZEH(ゼッチ)とは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略称。
高い省エネ性能や太陽光発電によってエネルギー収支をゼロ以下に抑えた、省エネ住宅の中でも最高基準をクリアしている住宅のことです。
ZEH住宅は、国のエネルギー政策の中で普及促進に向けた様々な補助事業が打ち出されています。
また環境に優しい住宅として、SDGsの観点からも注目を集めています。
賃貸経営オーナー様が、経営する賃貸住宅をZEHにすると、
・入居率アップが見込める
・物件の資産価値が上がる
・国から補助金が出る
・融資審査が通りやすくなる
・売電収入が得られる
といった多くのメリットが見込めます。
ただし賃貸物件をZEHにするには、知っておくべきポイントがあります。
そこで、
■ZEH賃貸の要件
■ZEH賃貸のメリット・デメリット
■ZEH賃貸の補助金
■ZEH賃貸のデベロッパーの選び方
について徹底解説。
賃貸物件を新築やリフォームでZEHにして
「ライバル物件と差別化をはかりたい」
「時代の最先端をいく賃貸経営がしたい」
とお考えのオーナー様は、ぜひ参考にしてください。
ZEHとは
ZEHは2014年に閣議決定された国のエネルギー基本計画に基づいて定められた、住宅分野でのCO2排出削減・省エネルギー推進施策の一つです。
2018年にはZEHの定義や仕様が定められ、「2030年までに新築住宅はZEHを標準にする」というロードマップが策定されました。
これにより、建築費の助成制度など、ZEHの普及促進に向けた施策が推進されるようになりました。
省エネ仕様の住宅には様々な種類がありますが、ZEHは最高水準の省エネ機能を備えています。
さらに、太陽光発電でエネルギーを創出するシステムを導入しているのが特長です。
ZEH賃貸住宅の3つの要件
ZEHは、快適な室内空間を維持しながら、省エネ・創エネによってエネルギー消費量をおおむねゼロ以下におさえられる住宅です。
ZEH住宅の要件を満たすポイントは、
・高い断熱性能
・省エネ設備
・太陽光発電によるエネルギー創出
です。
ここからは、それぞれのポイントについて詳しく説明します。
高い断熱性能
ZEH賃貸住宅には、高い断熱性能が求められます。
例えば
・外壁や内装に、高機密・高断熱の断熱材を使用する
・窓枠に、断熱サッシや複層ガラスを使用する
ことで室内が外気の影響を受けにくくなり、夏は涼しく・冬は暖かい環境を維持できます。
冷暖房使用の必要性が減ることで、エネルギー使用量やCO2排出量などを抑えることができます。
冷暖房の使用頻度を低くできるため、環境への配慮や光熱費削減はもちろん。
冬の風呂場でのヒートショック現象を抑えるといった、健康効果もあります。
省エネ性能に優れた設備
ZEH賃貸住宅には、省エネ性能に優れた設備が求められます。
例えば
・高機能エアコンや床暖房
・エネファームやエコキュートなど、エネルギー効率の高い給湯器
・LED照明
など、少ないエネルギーで機能発揮できる省エネ設備や。
・住宅用エネルギー管理システム「HEMS(ヘムス)」
の導入によって、家庭内での電気・ガス・水道などのエネルギー消費量を「見える化」し、エネルギー使用量を最適管理する体制も求められます。
エネルギーを創り出す機能
ZEH賃貸住宅は、建物の屋上や屋根に
・太陽光発電を行うためのソーラーパネル
を設置する必要があります。
太陽光発電によって、住宅で使用する電力を自給すると共に、余った電力は売ることができます。
集合住宅にはZEH-M(ゼッチ・マンション)基準がある
ZEHの普及は新築戸建住宅から始まりましたが、現在は分譲・賃貸の集合住宅でも普及が進められています。
ZEHの要件を満たす集合住宅はZEH-M(ゼッチ・マンション)と称されています。
ZEH-Mの省エネ基準
マンションなどの集合住宅は、ソーラーパネルを設置できる屋上部の面積が狭いため、太陽光発電の発電量が制約されます。
そのため、1戸あたりの太陽光発電の創出量が戸建住宅より小さくなってしまうのです。
こうした点を踏まえ、ZEH-Mでは戸建住宅より省エネ基準が緩和され、高層になるほど太陽光利用によるエネルギーの利用要件が緩和されています。
集合住宅へのZEH普及
集合住宅へのZEH普及を促すため、2018年から政府は次の事業を開始しました。
・住宅部分が6階以上集合住宅に対する高層ZEH-M(ゼッチ・マンション)実証事業
・住宅部分が5階以下の集合住宅に対する低・中層ZEH-M支援事業
これらの事業によって、ZEH-M要件の明確化と認定物件への補助金交付が始まり、集合住宅へのZEH普及が促進されるようになったのです。
賃貸物件をZEHにする5つのメリット
賃貸物件をZEHにすると、オーナー様には次のようなメリットがあります。
1.競合との差別化や入居率アップにつながる
2.賃貸物件の資産価値が上がる
3.融資の審査をパスしやすい
4.補助金が受けられる
5.売電による収入が得られる
それぞれのメリットについて詳しくご紹介します。
1.競合との差別化や入居率アップにつながる
高い断熱性・気密性と省エネ設備を備え、快適な居住空間を叶えるZEH賃貸住宅は、入居者へのメリットが大きい住宅です。
そのため入居率アップが期待できます。
ZEH賃貸住宅の入居者へのおもなメリットは
・冷暖房使用の頻度が減り、光熱費が抑えられる
・冬の風呂場でのヒートショックなど、寒暖差による事故を防ぐ
・室内に湿気がこもりにくいのでカビが発生しにくい
・遮音性が高い
・太陽光で発電した電気を貯蓄できるため、災害時に安心
といったもの。
入居者にとって最大のメリットは、やはり通常の集合住宅より光熱費を安くできることでしょう。
国土交通省の試算では、ZEH基準の高断熱材を使用した住宅は、年間光熱費が約50%削減できるというデータもあります。
このように、ZEH仕様に対応した賃貸物件は入居者にとっても魅力的です。
またZEH要件を満たした賃貸物件は、入居募集時に「ZEH-Mマーク」を表示できるため、競合との差別化にもつながります。
環境に配慮した「SDGs」や「コト消費」に敏感な世代にもアピールでき、 新時代に即した賃貸物件として競争力を高めることができます。
2.賃貸物件の資産価値が高くなる
賃貸物件を国が定めたZEH仕様にすることで、 資産価値を高めることができます。
ZEH賃貸は高い省エネ機能を備えているので、賃貸市場での価値が上昇し、相場より高めの家賃を設定することも可能です。
また、築年数が経過しても通常物件より賃料の下落幅を抑えられます。
さらに将来物件を売却する場合でも、 ZEH賃貸であれば 、通常より高い値段で売ることもできるでしょう。
3.融資の審査をパスしやすい
ZEH仕様に対応した賃貸物件は、通常物件より資産価値が高く、築年数の経過による家賃の下落幅も小さくできます。
そのため、賃貸収益を長期的に安定させることが可能です。
ZEH物件にはこうした特長があるので、金融機関の貸し出し審査をパスしやすくなります。
また担保価値が高いので、通常より多額の融資を受けることも可能です。
ZEH物件は建築費用が高くなるので、融資額を増やせるのは大きなメリットになります。
4.補助金が受けられる
ZEHの普及促進は、国が定めたCO2排出量削減政策の一環として行われており、建築費に対する助成制度が設けられています。
ZEH仕様に対応した建物の建築費は通常物件より高くなりますが、補助金を受給できれば実質的な建築コストを抑えることができます。
ZEH賃貸の補助金について詳しくは、後述します。
5.売電による収入が得られる
ZEH物件にはソーラーパネルを設置して、余剰電力を売電できるシステムが導入されています。
売電で得られる収入はオーナー様の収益にできる他、建物の共益費などに充当して、入居者に還元することもできます。
売電収入を入居者に還元する仕組みを導入すれば、賃貸市場での人気度が高まり、物件のさらなる入居率向上が見込めるでしょう。
ZEH賃貸の2つのデメリット
ZEH賃貸のデメリットは、
1.建築コストが高い
2.太陽光発電による光熱費削減・売電収入が不安定
の2点です。
1.建築コストが高い
ZEH賃貸物件には、次のように高い省エネ性能や省エネ機器の設置が必要です。
・ZEH要件に適合した設備や機材の設置
・太陽光発電や外部への売電システムの導入
このため、通常の賃貸物件より建築コストが高くなります。
さらに建築コストが高いことで、
・建設予定地の形状や広さによって、建物の設計や省エネ機器の設置などに余分な費用が生じる
・金融機関からの借入金が膨らみ、建築費を回収するために相場より高い賃料の設定が必要になる
・賃料が相場から乖離すると、入居希望者が減って空室率が高くなる
といったデメリットも考えられます。
2.太陽光発電によるメリットが不安定
ZEH賃貸物件では、ソーラーパネルによって発電した電力によって光熱費を削減したり、売電して収入を得られることがメリットの1つです。
しかし太陽光発電による発電量は、日照時間に応じて決まります。
そのため、
・天候などの気象条件
・物件周辺の建物の状況
によっては、太陽光発電に必要な日照を確保できないこともあるのです。
こうした場合は発電量が不足して、思っていたような光熱費削減効果・売電収入が得られない可能性もあります。
ZEH補助金の種類と申請方法
ZEH賃貸には補助金制度があり、建築費の負担を軽減することができます。
ZEH物件の補助金には年度ごとに予算枠があり、申請は募集期間内に先着順で受理されます。
ZEHの補助金額
例えば2021年度のZEH仕様の賃貸アパート・マンション(以下ZEH-M)に支給される補助金は、建物の階数に応じて以下のように定められています。
住宅要件 | 補助金額 | 補助金額の上限/件 |
住宅部分が5階以下 | 60万円×戸数 | 6億円 |
住宅部分が6階〜20階 | 経費の1/2以内 | 8億円 |
住宅部分が21階以上 | 経費の1/3以内 | 10億円 |
ZEH補助金の申請手続き
ZEH住宅の補助金は年度ごとに募集期間と予算枠が設定されており、募集期間中で予算枠内であれば比較的容易に支給されます。
ただし、補助金の申請額が予算枠を超えた場合は、審査を経て支給対象が決定されます。
そのため、申請が遅れると受給できない場合があるので注意が必要です。
さらに補助金は、ZEHの普及促進という政策目標のために、国が期間を限定して支給しています。
そのため、今後の社会情勢やZEHの普及状況によって補助金が減額されたり、制度自体が無くなってしまう可能性もあります。
補助金を利用してZEH賃貸物件の建築を検討している場合は、なるべく早めにデベロッパーに相談して申請手続きを進めるようにしましょう。
ZEH賃貸物件のデベロッパーの選び方
ZEH賃貸の集合住宅を受注可能なデベロッパーは、「ZEHデベロッパー」として登録・公開されています。
例えば、東京都でZEHデベロッパーとして登録されているのは大手住宅メーカーなど30社程度です。
ZEH賃貸物件のデベロッパーを選ぶ際には、次の点に注意してください。
実績のあるデベロッパーを選ぶ
ZEH賃貸物件の建築は、実績のあるデベロッパーに依頼しましょう。
ZEH賃貸物件は建物の規模が大きく、賃貸特有の設計・施工技術や建築プランの策定ノウハウが求められます。
建築実績があるデベロッパーは、様々な条件に応じた建築プランの策定に長けています。
ただしデベロッパーは得意な分野が異なることもあるため、できれば複数の業者に相談することをお勧めします。
建築プランの策定能力が重要
賃貸アパートの経営は長期にわたるため、事業の安定性と継続性を重視した建築プランの策定が重要です。
建築プランの策定にあたっては、次のような点について、様々な条件を設定して比較検討する必要があります。
・補助金を含めた実質的な建築コスト負担
・建物や設備機器の補修費用の見込み
・借入金負担と返済予定
・家賃設定と稼働率に応じた収益見込み
ZEH賃貸物件は、通常物件よりも建築費が高くなるため、場合によっては収支バランスが崩れてしまうこともあります。
そうした場合はZEH仕様にこだわらず、通常の賃貸物件にした方がコストパフォーマンスに優れる場合もあるのです。
ZEH賃貸の建築実績が豊富なデベロッパーであれば、状況に応じたベストな建築プランを提示してくれるでしょう。
ZEH登録デベロッパーの例
ここからは、ZEHデベロッパーとして登録されている主な大手デベロッパーをご紹介します。
積水ハウス
ZEH賃貸の建築実績No.1を誇る積水ハウス。
長期安定経営につながる仕様が、全国オーナーに選ばれ続けている理由です。
旭化成ホームズ
ZEH対応ヘーベルメゾン(ZEH MAISON for LONGLIFE)
ZEH賃貸住宅の必要性として、
・高断熱な住宅を体感して育った若い世代が、これからの賃貸住宅入居者のメインターゲットになること
・今後「住宅の光熱費が見える化」され、省エネ・ZEH対応が住まい探しのポイントになること
を挙げています。
セキスイハイム
ソーラー賃貸住宅・集合ZEH-M「Letoit Smart Power Station」
太陽光発電の売電スタイル(入居者還元型・オーナー様売電型など)によって、賃貸経営のメリットを最大化する実例が豊富です。
大東建託
デザイン性にもこだわったZEH仕様の賃貸住宅。2021年4月からは、オリジナル「蓄電池搭載型」のZEH-M賃貸住宅も新発売しています。
トヨタホーム
トヨタホームのZEH-M賃貸について詳しくはこちら
パナソニックホームズ
パナソニックホームズのZEH-M賃貸について詳しくはこちら
大和ハウス
大和ハウスのZEH-M賃貸について詳しくはこちら
まとめ
ZEHはCO2排出削減対策の一環として設けられ、高い省エネ性能と太陽光発電で電力を生み出す機能を備えた住宅です。
近年集合住宅にも「ZEH-M」として要件が定められ、適合すれば補助金が受けられるなど、普及が拡大しつつあります。
賃貸物件をZEH仕様にすることで、
・競合物件との差別化
・入居率アップ
・資産価値向上
・融資が受けやすい
・光熱費削減や売電収入
と言ったメリットがあります。
一方ZEH賃貸は
・建築コストが高い
・太陽光発電によるメリットが不安定
といったデメリットがあります。
こうしたデメリットを軽減するためには、
・ZEH補助金を早めに申請する
・信頼できるデベロッパーを選ぶ
ことが重要です。
賃貸経営に、「環境に優しい」という時代に合った付加価値をプラスするZEH賃貸。
今後の賃貸経営に、 時代の最先端をいくZEH賃貸を検討されてはいかがでしょうか。