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賃貸アパートの大規模修繕はいつ何をすれば良い?費用相場も解説

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2022.02.25
  • 賃貸経営得情報

賃貸アパートは、定期的・継続的に大規模修繕が必要です。

大規模修繕とは、建物の劣化を防止するための、大掛かりな補修工事のこと。

具体的には

・外壁塗装

・屋上の防水工事

・給排水設備の交換

・エレベーターや貯水槽の交換

などがあります。

しかし大規模修繕を怠ると、賃貸アパートの見た目が悪くなったり、設備に不具合が生じるだけでなく。

・入居率が下がって収益低下

・アパートの資産価値が低下

外壁落下事故などが起きた場合、賃貸オーナーが損害賠償請求や刑事訴追を受ける可能性

といったリスクが生じます。

健全な賃貸経営には、適切な大規模修繕が不可欠です。

そこで、賃貸アパートの大規模修繕について

■実施時期や内容

■費用相場

■大規模修繕の6つの重要性

■スムーズな大規模修繕のコツ

を徹底解説。

賃貸アパートの大規模修繕について、

「いつ何をするべき?」

「費用はどれぐらいかかる?」

「効率的かつスムーズに行う秘訣は?」

といったオーナー様の疑問にお答えします。

賃貸アパートの大規模修繕の実施時期と内容は?

賃貸アパートの大規模修繕の実施時期は、

初回築10年前後
2回目以降前回から10〜15年に1度の周期

が目安です。

また賃貸アパートの築後年数や期間に応じて、次のような修繕工事が必要です。

5年ごと廊下や手すりの塗装、防水処理、給排水管の高圧洗浄
5~10年目ベランダ、階段、廊下の塗装、室内設備の修理、排水管の高圧洗浄   
10年ごと建物外壁装の塗装、防水処理、給水ポンプの交換
30年以上給排水管や貯水槽の交換

修繕間隔は目安であり、劣化部分や損傷がある場合は、さらに短い期間での修繕が必要です。

また鉄骨造や鉄筋コンクリート造など、アパートの構造によって工事の周期や内容は多少異なります。

分譲マンションと賃貸アパートの大規模修繕の違い

元々、建物の大規模修繕計画の策定は、分譲マンションから始まったものです。

分譲マンションでは、デベロッパーが修繕の周期や工事内容・費用などについて、新築後30年程度の長期計画を策定します。

策定された長期の修繕計画に基づいて、マンションの管理組合が主体となって外壁塗装、屋上の防水、給排水管の取り換えなどの大規模な補修工事を実施します。

賃貸アパートの大規模修繕も、おおむね分譲マンションに準じた内容で行います。

分譲マンションでは修繕に必要な費用は居室の購入者が負担しますが、賃貸アパートではオーナー様の負担になります。

そのため賃貸アパートのオーナー様は、大規模修繕に備えて計画的な資金準備をしておくことが必要です。

またデベロッパーが修繕計画を策定し、費用を算出した分譲マンションでさえ、思わぬ災害・予想外の劣化といった原因から、実際の大規模修繕費用が計画より大幅に膨らむことも多々あります。

大規模修繕に備えた費用は、余裕をもって準備しておくことも大切です。

賃貸アパートの大規模修繕の費用相場

1棟10戸程度の小規模なアパートで大規模修繕を実施する場合、修繕費の相場は以下の通りです。

築5〜10年約100万円
築11〜15年約300万円
築16〜20年約200万円
築21〜25年約300万円
築26〜30年 約200万円

築後30年間のトータルでは、1棟あたりの修繕費用は1000万円を超えます。

上記以外にも、給湯器の交換や電気・ガス・消防設備のメンテナンス費用が必要になります。

また、台風や豪雨などの自然災害の発生も考慮すると、実際には1棟あたり1500万円程度の修繕費用を見込んでおいた方がよいでしょう。

大規模修繕の費用はどのように準備すればよい?

賃貸アパートの大規模修繕には、1回あたり数百万円規模の費用がかかります。

資金準備が整わず、修繕が後回しになれば

→入居率が下がり収益が減る

→大規模修繕のための資金捻出がさらに難しくなる

という悪循環に陥ってしまいます。

こうなると賃貸経営の継続に支障が出るだけでなく、アパートの資産価値が低下して、売却が困難になってしまうこともあります。

適切な賃貸経営のための大規模修繕に備えるには、計画的な資金準備が必要です。

大規模修繕の費用を計画的に準備する方法には、おもに

1.積み立て

2.リフォームローンの利用

の2つがあります。

修繕費を積み立てる

大規模修繕費の準備に最も多く採用されているのは、毎月一定額を積み立てる方法です。

国土交通省の調査によると、60%以上のオーナー様が計画的な積立によって修繕費を準備しています。

国土交通省住宅局2017年3月「民間賃貸住宅の大規模修繕等に対する意識の向上に関する調査検討報告書」より)

家賃収入の一定割合を金融機関に積み立てるのが一般的ですが、損害保険会社が販売している積み立てマンション保険などを利用することもできます。

リフォームローンを利用する

大規模修繕の費用をまかなうために、金融機関から借り入れを行うこともできます。

金融機関や住宅金融支援機構では、住宅の改修や増築のためのリフォームローンを取り扱っています。

リフォームローンはサラリーマンなど以外に、賃貸アパートのオーナー様も利用可能です。

リフォームローンの多くは借入金の上限が500万円ですが、担保を提供すれば1,000万円以上の借り入れができる場合もあります。

ただしリフォームローンを利用する際に、建築時の借入金が残っていると返済額が増加してしまいます。

修繕のために追加借入をする際には、返済余力や資金繰りに問題が生じないかを十分に確認することが必要です。

リフォームローンなどを利用する際には、こうした点を踏まえて金融機関と十分に相談するようにしましょう。

アパートの大規模修繕が重要な6つの理由

賃貸アパートの大規模修繕が重要な理由は、6つあります。

1.アパートの入居率が向上する

2.オンラインでの客付けで有利になる

3.減価償却の対象になる

4.アパートの資産価値を維持できる

5.事故を防止する

6.アパートの稼働年数が伸びる

それぞれの理由について詳しくご紹介します。

1.アパートの入居率が向上する

大規模修繕を実施すると、外観や居住性が改善されるため、アパートの入居率が向上します。

大規模修繕では、

・屋上の防水

・外壁のひび割れや色あせの補修

・手すりの錆止めや塗装

・居室の内装や水回り設備の更新

などの補修工事を行います。

10年程度の間隔でこうした工事を実施すれば、築年数が古いアパートでも、十分なクオリティと美観が維持できます。

大規模修繕には高額な費用がかかりますが、長い目で見れば、高い入居率と安定した家賃収入につながるでしょう。

2.オンラインでの客付けで有利になる

近年、賃貸物件の情報収集にはインターネットが広く使われています。

コロナ禍の影響もあり、

・非対面ニーズから、物件訪問による内見件数が減少

・不動産業者が、ZoomやVRなど、ITツールを活用した物件情報提供に注力

といった動向も見られます。

オンラインによる客付けでは、建物や付帯設備の外観など、アパート外観の印象が重要になります。

メンテナンスが不十分で外観が老朽化したアパートは第一印象が悪く、オンラインによる内見で敬遠され、空室が埋まらなくなってしまいます。

そのためには日常の補修・メンテナンスに加えて、定期的に大規模修繕を行う必要があります。

適切な補修工事を実施すれば、築年数が古いアパートでも、入居希望者に好印象を与えられます。

築年数の浅い競合物件とも対抗できるでしょう。

3.減価償却の対象になる

大規模修繕の費用は、物件の価値を向上させる資本的支出とみなされ、新築時と同様に減価償却の対象になります。

例えば大規模修繕にかかった費用は

・鉄筋コンクリート造りのアパートは法定耐用年数の47年間

・木造アパートは法定耐用年数の22年間

にわたって不動産所得から控除されるので、大きな節税効果が得られます。

4.アパートの資産価値を維持できる

建築資材や施工技術は年々進歩しており、適切な補修工事を行えばアパートの劣化を抑えることが可能です。

また、建物や付帯設備の耐久性や居室の断熱性の向上も可能になっています。

そのため大規模修繕によって、築年数が古いアパートでも綺麗な外観や快適な居住環境の提供が可能になり、アパートの資産価値を維持できます。

アパートの資産価値が維持できれば、

・賃料や入居率の低下が抑えられ、収益力を維持できる

・将来アパートを手放す場合にも高値で売却できる

というメリットが見込めます。

たとえば近年注目が集まるZEH賃貸など、省エネ住宅への改修を同時におこなえば、光熱費削減など入居にとってのメリットも生まれます。

大規模修繕は、資産価値向上の機会としてうまく活用することもできるのです。

【関連記事】ZEH(ゼッチ)は賃貸経営に有効?メリットから補助金まで徹底解説

5.アパート事故を防止できる

築年数が古くなると、建物の老朽化によってして見栄えが悪くなるだけでなく、事故が発生するリスクが高くなります。

具体的には

・外壁が剥離して落下する

・さびや腐食によって階段や手すりが破断する

・鉄筋の劣化やコンクリートのひび割れによって地震への耐久度が低下する

といった事故の発生が懸念されます。

建物のメンテナンスや補修が不十分な状況で事故が発生して死傷者が出ると、賃貸オーナー様が損害賠償請求や刑事訴追を受ける可能性があります。

適切な大規模修繕を行えば、アパートの劣化を抑止して安全性を向上させ、事故の発生を防止することが可能です。

6.アパートの稼働年数を伸ばせる

定期的に大規模修繕を行うことで、建物の劣化を防ぎ、アパートの稼働年数を伸ばすことができます。

逆に、大規模修繕などのメンテナンスが不十分であれば建物の寿命は短くなり、RC造りの建物でも30年未満で建て替えを余儀なくされます

賃貸経営は長期的な安定性と継続性が重要なので、アパートの耐用年数を伸ばして長く稼働させることは重要なポイントです。

アパートの大規模修繕には多額の費用がかかりますが、長期的に見れば事業の収益性を高めてくれます。

スムーズな大規模修繕のコツは「建物診断」

賃貸アパートの大規模修繕をスムーズに行うコツは、建物診断を受けることです。

建物診断は建築会社や専門の建物検査会社が行っており、アパートの現状把握や劣化状況を調査・診断してくれます。

また、調査・診断結果に基づいて

・劣化防止のために必要な補修工事の提案

・補修工事の内容と実施スケジュールの策定

・補修工事に必要な費用の見積もり

を提言してくれます。

その時点で最適な大規模修繕を効率的に実施することができ、長期的な修繕費用の節約を図ることも可能です。

建物診断の費用は10〜20戸程度の小規模なアパートなら6〜10万円程度です。

中古アパートの購入時の建物診断

中古アパートは、物件によって建物や設備の劣化状況が異なります。

そのため建物の現状を把握するために、中古アパート購入時は必ず建物診断を行うことをおすすめします。

新築アパートは、建築時に大規模修繕計画策定を

賃貸アパートを新築する場合は、大規模修繕計画をあらかじめ組み込んでおくことをお勧めします。

アパートの設計や建設を行う業者は、建物の構造や設備の耐用年数を把握しています。

そのため、将来必要な修繕工事の時期や工事内容についても、詳しい見積もりをとることができます。

今後、新たな賃貸アパートを建築する際は、建築費用とともに

・将来の修繕箇所と修繕工事の予定や内容

・必要になると見込まれる修繕費用

もあらかじめ見積もっておくとスムーズです。

まとめ

アパートの大規模修繕は、賃貸経営の収益性・安全性を向上させるために不可欠です。

■実施時期は、初回10年目・2回目以降は10〜15年ごとが目安

■費用は、1回100〜300万円が目安

■費用は、積立やリフォームローンで計画的に準備

■費用は、減価償却費として計上できる(RC47年間・木造22年間)

入居率アップ、建物の資産価値・安全性向上などのメリットがある

「建物診断」がスムーズな実施のコツ

適切な時期に適切な内容の修繕を実施することによって、築年数が古くなっても、アパートの機能や美観を維持することができます。

またコロナ禍によって、オンラインによる賃貸物件選びが広がる中、アパートの外観や第一印象が入居決定の大きなポイントにもなっています。

しかし大規模修繕には多額の費用がかかるため、長期的な資金計画が重要になります。

大規模修繕計画の策定には、国土交通省が賃貸オーナー向けに発行しているガイドブックが大変参考になります。

国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」

国土交通省「民間賃貸住宅計画修繕ガイドブック(事例編)」

長期修繕計画用のチェックシートもあるため、ぜひ活用してみてください。

国土交通省「長期修繕計画作成時の賃貸住宅経営のセルフチェックシート【新築時から40年間】」(Excelファイル)

国土交通省「長期修繕計画作成時の賃貸住宅経営のセルフチェックシート【新築時から60年間】」(Excelファイル)

計画的かつ適切な大規模修繕をおこなって、ぜひより良い賃貸経営を目指しましょう。

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