【オーナー様向け】原状回復費用で損をしない!今からできる退去費用を抑えるコツとは|アパート経営・マンション経営の知識
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- リフォーム・原状回復
目次
はじめに:原状回復費用はオーナーにとってなぜ重要か?
不動産賃貸経営を行うオーナー様にとって、「原状回復費用」は避けて通れない重要な経営コストです。入居者の退去が発生するたびに、次の入居者を迎えるために数十万円、場合によっては百万円を超える費用が発生することもあります。
この費用負担が大きくなればなるほど、賃貸経営のキャッシュフローは圧迫されます。空室期間を埋めるための家賃収入が数ヶ月分、一気に吹き飛んでしまうケースも少なくありません。
しかし、この原状回復費用、「仕方のない出費」と諦めてはいないでしょうか?
「入居者の使い方が悪かったから仕方ない」 「管理会社や工事業者から提示された見積もりだから、こんなものだろう」
もし、そうお考えであれば、オーナー様は知らず知らずのうちに「損」をしている可能性があります。
原状回復費用で「損をしない」とは、単に費用を値切ることではありません。本来オーナー様が負担する必要のない費用を入居者に適正に請求すること、そして、そもそも高額な修繕が発生しないよう「予防」すること、さらには、発生した工事を「賢く発注」すること、この3つの側面があります。
原状回復は、単なる「修繕」ではなく、物件の資産価値を維持し、次の入居者に選ばれるための「投資」であり、賃貸経営の根幹をなす「戦略」の一つです。
この記事では、不動産オーナー様が原状回復費用で損をしないために、「今からできる具体的なコツ」を、法律的な基礎知識から、入居中の対策、退去立会いの現場、工事発注のテクニックまで、徹底的に解説していきます。オーナー様の経営に役立つ情報をお届けしますので、ぜひ最後までお付き合いください。
【基礎知識編】そもそも原状回復とは?オーナーと入居者の負担割合
原状回復費用を抑える第一歩は、「誰が、何を負担すべきか」というルールを正しく理解することです。この基準が曖昧なままでは、入居者との交渉も、工事業者への発注も適正に行えません。
ここで最も重要な指針となるのが、国土交通省が定めている**「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(以下、ガイドライン)**です。これは裁判の判例などに基づき、トラブル防止のために作られた指針であり、現在の賃貸借契約における原状回復のデファクトスタンダード(事実上の標準)となっています。
原状回復の「誤解」と「正しい定義」
まず、よくある誤解が「原状回復=入居者が借りた当時の状態(新品同様)に戻すこと」というものです。
これは間違いです。
ガイドラインにおける原状回復の定義は、以下の通りです。
「賃借人(入居者)の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」
簡単に言えば、「入居者がわざと壊したり、不注意で汚したり、手入れを怠ったりした部分を元に戻す」ということです。
オーナー負担 vs 入居者負担(具体例)
では、何がオーナー負担で、何が入居者負担になるのでしょうか。ガイドラインに基づき、具体例を見ていきましょう。
A:オーナー様負担となるもの(経年変化・通常損耗)
これらは、入居者が「普通に生活していても」発生する汚れや傷、時間経過による劣化です。これらを修繕する費用は、オーナー様が受け取る「家賃」に含まれていると解釈されます。
- 壁紙(クロス):
- テレビや冷蔵庫の裏側の黒ずみ(電気ヤケ)
- 日光による日焼け、色あせ
- 画鋲やピンの穴(下地ボードの張替えが不要な程度)
- 床(フローリング、クッションフロア):
- 家具の設置による凹み、設置跡
- 日照による変色
- ワックスがけによる摩耗
- その他:
- 網戸の劣化、自然な摩耗による破れ
- 畳の裏返し、表替え(特に傷みがない場合)
- 設備の自然な故障(エアコン、給湯器など)
B:入居者負担となるもの(故意・過失・善管注意義務違反)
これらは、入居者の「不注意」や「怠慢」、「通常とは言えない使い方」によって発生した損耗です。
- 壁紙(クロス):
- タバコのヤニ汚れ、臭い(※最もトラブルになりやすい項目です)
- 落書き、子供のいたずらによる傷
- 釘やネジの穴(下地ボードの張替えが必要な程度の深い穴)
- 結露を放置したことによるカビ、シミ(※)
- 床(フローリング、クッションフロア):
- 飲み物などをこぼした跡のシミ(手入れ不足)
- 引っ越し作業や家具の移動でつけた引きずり傷
- ペットによる傷、柱のひっかき傷、尿によるシミ・臭い
- その他:
- 掃除を怠ったことによる水回り(キッチン、浴室、トイレ)のひどい水垢、カビ、油汚れ
- 鍵の紛失・破損による交換
- ガラスの破損(熱割れなど自然発生を除く)
(※)結露自体は建物の構造上の問題である場合、オーナー負担とされます。しかし、入居者が換気や拭き取りを怠ったことでカビが拡大した場合、善管注意義務違反として入居者負担となるケースがあります。
最重要ルール:「経過年数(減価償却)」の考慮
入居者負担となる損傷であっても、オーナー様は「全額」を請求できるわけではありません。ここで「経過年数」の考え方が入ってきます。
建物や設備は時間とともに価値が減少していきます(減価償却)。
ガイドラインでは、特に壁紙(クロス)やクッションフロアについて、耐用年数を6年とし、6年経過時点でその価値(残存価値)を1円(または10%)と考える基準を示しています。
<具体例> 入居者が壁の一部に大きな傷をつけてしまい、その面の壁紙張替えに1万円かかるとします。
- ケース1:入居者が入居して1年で退去した場合
- 経過年数1年。残存価値は 5/6 (約83%)。
- 入居者負担:1万円 × (6年 – 1年) / 6年 = 約8,333円
- オーナー負担:約1,667円
- ケース2:入居者が入居して6年以上で退去した場合
- 経過年数6年以上。残存価値は 1円 (または10%)。
- 入居者負担:1万円 × 10% = 1,000円(または実質0円)
- オーナー負担:9,000円
つまり、入居者がいくらひどく汚したり壊したりしても、その設備がすでに対応年数を過ぎていれば、オーナー様は修繕費用の大半(または全額)を負担しなければならないのです。
このルールを知らないと、「入居者が壊したのだから全額請求する」と主張し、トラブルに発展し、結果的に裁判などで請求が認められず、時間と労力を無駄にすることになります。
「特約」はどこまで有効か?
契約書に「ハウスクリーニング代は入居者負担とする」「畳の表替え費用は入居者負担とする」といった「特約」を設けているオーナー様も多いでしょう。
ガイドラインはあくまで指針であり、両者が合意すれば異なる特約を設けること自体は可能です。しかし、裁判例では「消費者(入居者)に一方的に不利な特約」は無効とされる傾向が強いです。
特約が有効と認められるには、以下の3要件を満たす必要があるとされています。
- 特約の必要性があり、かつ、暴利的でない客観的・合理的理由があること。
- 賃借人(入居者)が特約によって通常の原状回復義務を超えた義務を負うことを認識していること。
- 賃借人(入居者)が特約による義務負担の意思表示(=署名捺印)をしていること。
特に重要なのが「2」の認識です。契約書に小さな文字で書いてあるだけでは不十分で、「契約時に、この特約はガイドラインとは異なり、あなたに追加の負担をお願いするものですよ」と口頭で説明し、理解を得ていることが求められます。
「ハウスクリーニング代」は、入居者が変わるごとに必ず行うものであり、相場も明確なため、特約として有効とされやすい傾向にあります。しかし、「理由の如何を問わず、退去時の壁紙張替え費用は全額入居者負担」といった特約は、ほぼ無効となると考えてよいでしょう。
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【入居中からできる対策編】将来の費用を抑える「予防」策
原状回復費用で損をしないための最善策は、「高額な修繕が発生しないようにする」ことです。つまり「予防」です。退去時に慌てるのではなく、入居中から対策を打つことが、オーナー様の資産を守る鍵となります。
契約時:「原状回復のしおり」で意識付け
入居者の「知らなかった」を防ぐことが、故意・過失による損傷を減らす第一歩です。
- ガイドラインと特約の丁寧な説明: 契約時、重要事項説明の際に、「基礎知識編」で解説したオーナー負担と入居者負担の区分、そして「経過年数」の考え方を、管理会社任せにせずオーナー様自身(またはオーナー様の意向を汲んだ担当者)から説明することが理想です。
- 「原状回復のしおり」の作成・配布: 契約書とは別に、A4一枚でも構いません。「タバコは室内・ベランダ共に禁止です(ヤニ汚れは全額請求対象となります)」「壁への釘打ちは禁止です(画鋲はOK)」「換気扇はこまめに清掃してください」といった、その物件独自のルールや注意点を、写真やイラスト入りで分かりやすくまとめた「しおり」を渡しましょう。
- 入居時現況確認書の徹底: 「入居時からあった傷だ」という主張を防ぐため、入居時にオーナー(管理会社)と入居者双方で室内の状況を確認し、「入居時現況確認書」に写真付きで記録を残し、双方が署名して1部ずつ保管します。これは退去立会い時の「証拠」として絶大な効力を発揮します。
入居中:コミュニケーションによる「善管注意義務」の促進
入居者は「善良なる管理者としての注意をもって」物件を使用する義務(善管注意義務)を負っています。これを促進するのは、オーナー様との良好な関係性です。
- 定期連絡と情報提供: 家賃明細や共用部の掲示板などを利用し、季節に合わせた注意喚起を行います。 (例:「梅雨時期です。カビ防止のため、浴室の使用後は必ず換気扇を回し、窓を開けて換気しましょう」「冬場は結露が発生しやすいです。放置するとカビの原因となりますので、こまめに拭き取ってください」)
- 不具合の早期報告を促す: 「水漏れが少しある」「エアコンの効きが悪い」といった小さな不具合を、入居者が「面倒だから」「怒られるかも」と放置することで、被害が拡大し、結果的に高額な修繕費につながることがあります。 「小さなことでも構いませんので、すぐに報告してください。早期対応が物件を守ることにつながります」というメッセージを平時から伝えておき、報告しやすい雰囲気を作ることが重要です。
設備投資:費用対効果の高い「予防」設備
初期コストはかかりますが、長期的に見て原状回復費用を大幅に削減できる「予防的」な設備投資も有効です。
- 高耐久素材の採用: ペット可物件であれば、通常のクロスではなく、傷に強い「スーパー耐久クロス」や、消臭機能付きのクロスを採用する。床もクッションフロアではなく、傷がつきにくく部分補修が容易な「フロアタイル」にする。
- 水回りのコーティング: 新築時や入居者が入れ替わるタイミングで、浴室やキッチンに防カビ・防汚コーティングを施工しておくと、清掃が楽になり、ひどいカビや水垢の発生を抑制できます。
- 室内物干し設備の設置: 室内干しによる壁や床への湿気ダメージを防ぐため、浴室乾燥機や、窓際・天井設置型の室内物干し(ホスクリーンなど)を設置する。
【退去立会時編】トラブルを防ぎ、適正な費用負担を確定させるコツ
退去立会いは、原状回復費用の負担割合を確定させる「交渉の最前線」であり、最も重要な場面です。ここで曖昧な対応をすると、後で必ずトラブルになります。
立会いは「必ず」「双方」で行う
管理会社に任せきりにしたり、入居者が不在のまま一方的に査定したりするのは厳禁です。必ずオーナー様(または信頼できる管理会社の担当者)と入居者本人が、同時に室内を確認します。 管理会社に任せる場合も、「ガイドラインに精通し、オーナー様の立場で交渉できる担当者」かどうかを見極める必要があります。
必須アイテム:「入居時現況確認書」と「ガイドライン」
立会いの場で感情論になってはいけません。必要なのは「客観的な証拠とルール」です。
- 「入居時現況確認書」の突き合わせ: 入居時に作成した写真付きの確認書(コピーで可)を持参し、「この傷は入居時からありましたね」「このシミは入居時にはありませんでしたね」と、一つずつ指差し確認していきます。これにより、「言った・言わない」の不毛な争いを防げます。
- ガイドラインの携帯: タブレットや印刷物でガイドラインを持参し、入居者から「これは普通に使っていても付く傷だ」と主張された場合に、「ガイドラインでは、このケース(例:タバコのヤニ)は通常損耗とは認められず、入居者様の負担とされています」と、根拠を示して冷静に説明します。
その場で「合意書(退去時室内状況確認書)」に署名をもらう
確認した内容は、その場ですぐに書面に落とし込みます。
- 損傷箇所
- その原因(故意・過失 or 経年変化)
- 負担区分(オーナー or 入居者)
これらをリスト化した「合意書(確認書)」を作成し、確認した内容に間違いがないかを入居者と確認し、その場で双方が署名・捺印します。
この「合意書」こそが、後日、敷金精算を行う際の最も強力なエビデンス(証拠)となります。
※注意点: この時点では、正確な工事見積もりが出ていないことがほとんどです。そのため、金額欄は空欄にするか、「後日見積もりを送付の上、敷金と相殺する」旨を明記します。金額をその場(概算)で提示する場合は、あくまで概算であり、本見積もりで変動する可能性があることを必ず伝えてください。
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【工事発注編】原状回復費用そのものを圧縮するテクニック
入居者との負担割合が決まったら、次はいよいよ「工事」です。ここでオーナー様が負担する費用(オーナー負担分+入居者負担分から経過年数を引いた差額)をいかに圧縮するかが、腕の見せ所です。
管理会社(リフォーム会社)の見積もりを鵜呑みにしない
多くのオーナー様が、管理会社から提示された見積もりをそのまま受け入れてしまいがちです。しかし、その見積もりには、管理会社のマージン(紹介料・手数料)が上乗せされていることが一般的です。
- 必ず「相見積もり」を取る: 最低でも2~3社からは見積もりを取りましょう。管理会社経由の見積もりと、オーナー様が直接探した工務店やリフォーム会社の見積もりを比較するだけで、数万円~数十万円の差が出ることも珍しくありません。
- 「分離発注」を検討する: 管理会社に「一括」で丸投げするのではなく、「クロス張替えはA社」「ハウスクリーニングはB社」「エアコン清掃はC社」と、得意分野ごとに別々の業者に発注(分離発注)する方が、トータルコストは安くなる傾向があります。手間はかかりますが、費用削減効果は絶大です。
工事内容を「本当に必要か?」と精査する
業者は「商売」ですから、必要以上の工事(=高額な工事)を提案してくることがあります。
- 「全面張替え」は最終手段: 壁紙が一部汚れているだけなのに、「一部だけ替えると色が合わないから」と、部屋全面の張替えを提案されるケースは非常に多いです。 しかし、汚れが一面だけなら、その一面だけを「アクセントクロス」として色や柄の違う壁紙に変えてしまえば、コストを抑えつつ、むしろ物件の魅力を高めることも可能です。
- 「クリーニング」や「リペア」で済ませる: フローリングの傷や建具の穴。「交換」や「張替え」をすると高額になります。しかし、専門の「リペア(補修)」業者に依頼すれば、数分の一のコストで、見た目にはほとんど分からないレベルまで修復できる場合があります。 「交換ありき」ではなく、「補修でどの程度まで回復できるか」という視点を持つことが重要です。
オーナー様の「DIY(自主施工)」を取り入れる
すべてを業者任せにせず、オーナー様ご自身でできることは行うのも有効な手段です。
- 電球の交換、網戸の簡単な補修
- ハウスクリーニング(特に空室期間が短く、汚れがひどくない場合)
- 共用部の簡単な塗装や清掃
ただし、注意点があります。DIYはあくまで「プロと同等」のクオリティが出せる範囲に留めるべきです。素人仕事の雑な仕上がりは、内見時の印象を著しく悪化させ、結果的に「空室期間の長期化」という最大の損失を招きかねません。
信頼できる「パートナー業者」を見つける
最も理想的なのは、安さだけでなく、品質、スピード、対応の誠実さを含めて、長期的に付き合える信頼できる工事業者(パートナー)を見つけることです。
相見積もりを繰り返す中で、「この業者は対応が早い」「見積もりの内訳が明瞭だ」「こちらの要望(リペアでの対応など)に柔軟に応えてくれる」といった業者を見つけたら、関係性を構築していきましょう。 継続的に仕事を発注することで、単価の交渉がしやすくなったり、急な退去時に優先的に対応してくれたりといったメリットが生まれ、長期的な賃貸経営の安定につながります。
まとめ:原状回復は「守り」と「攻め」の経営戦略
原状回復費用を抑えることは、単なるコストカットという「守り」の側面だけではありません。
ガイドラインの知識を身につけ、入居者と適正な交渉を行うことは、オーナー様の「当然の権利」を守る行為です。 入居中から予防策を講じ、退去時にリペアやアクセントクロスなど「賢い修繕」を行うことは、物件の資産価値を維持・向上させ、次の入居者に選ばれるための「攻め」の投資でもあります。
原状回復費用で損をしないためのステップは、以下の4つに集約されます。
- 【知識武装】:ガイドラインを学び、「誰が何を負担すべきか」の基準を明確にする。
- 【予防】:契約時・入居中から入居者の意識を高め、高額な修繕の発生を防ぐ。
- 【交渉】:退去立会いでは証拠に基づき冷静に交渉し、その場で「合意」を得る。
- 【賢い発注】:相見積もりと工事内容の精査、リペア技術の活用で、工事費自体を圧縮する。
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