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外国人(非居住者)オーナー物件の落とし穴!税務・契約・管理の実務ポイント|賃貸アパート経営・マンション経営の知識

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2025.08.03
  • 相続・税金

はじめに:新たなビジネスチャンスに潜むリスク

円安や日本の政治的・社会的な安定性を背景に、近年、海外の投資家が日本の不動産に寄せる関心は飛躍的に高まっています。都心部のタワーマンションや一棟収益物件、リゾート地のコンドミニアムなどが、アジア、欧米をはじめとする外国人投資家の間で活発に取引されており、これは不動産業界にとって大きなビジネスチャンスであることは間違いありません。

 

しかし、この新たな市場に潜む「落とし穴」を正しく理解しないまま安易に足を踏み入れると、思わぬトラブルや金銭的損失に見舞われる危険性があります。外国人オーナーの物件は、国内のオーナーと同じ感覚で仲介・管理業務を行うことはできません。そこには、言語や文化の壁以上に、法律、税務、そして実務における特有のルールとリスクが存在するのです。

「本人確認はどうすれば?」「家賃から何か税金を引く必要があったのでは?」「トラブルの時、すぐに連絡が取れなかったらどうしよう?」 これらの疑問に一つでも不安を覚えた方は、ぜひ本コラムを最後までお読みください。

 

本稿では、不動産仲介・管理のプロフェッショナルが直面する「外国人(非居住者)オーナー物件」の課題を、「①契約・法律面」「②税務面」「③管理実務面」の3つの観点から、具体的な事例と共に深掘りし、その対策を分かりやすく解説します。これらの落とし穴を事前に把握し、適切に備えることで、リスクを管理し、大きなビジネスチャンスを確実に掴み取ることができるはずです。

第1章:契約・法律面の落とし穴

まず、取引の入口である「契約」の段階で待ち受けるハードルについて見ていきましょう。

「本人確認」の高い壁と法的責任

国内の取引であれば、運転免許証やマイナンバーカードでスムーズに進む本人確認。しかし、相手が海外に住む外国人の場合、この最初のステップから大きな壁に突き当たります。

非居住者の本人確認で必要となるのは、一般的に以下の書類です。

  • 身分証明書: パスポートの写し
  • 住所証明書: 本国の公的機関が発行した住所がわかる書類(公共料金の領収書、納税証明書など)
  • サイン証明書(またはそれに準ずるもの): 契約書等への署名が本人のものであることを、本国の大使館や公証人(Notary Public)が証明する書類

これらの書類の取得は、オーナー本人にとっても手間と時間がかかります。特に「サイン証明書」は、国によっては制度自体がなかったり、取得方法が煩雑だったりします。また、外国語で書かれた書類は、当然ながら日本語への翻訳が必要となり、その費用と手間も発生します。さらに、その書類が本物であることを証明するための「アポスティーユ(付箋による外務省の証明)」や「公印確認」が必要になるケースも少なくありません。

なぜ、ここまで厳格な本人確認が求められるのでしょうか。それは、**「犯罪による収益の移転の防止に関する法律(犯収法)」が、不動産事業者に対して取引相手の厳格な本人確認(取引時確認)を義務付けているからです。これを怠り、万が一取引がマネー・ローンダリングなどに利用された場合、不動産事業者は厳しい行政処分(是正命令など)や刑事罰(2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金など)**の対象となる可能性があります。

「手間がかかるから」「オーナーが良い人そうだから」といった安易な理由で本人確認を省略することは、会社の信用を揺るがす重大なコンプライアンス違反に直結するのです。

意思決定のタイムラグとコミュニケーションコスト

時差や言語の壁は、想像以上に業務の足かせとなります。例えば、日本時間の昼間に発生した漏水トラブルについて報告しても、オーナーが住む国は深夜。返信が来るのは早くても日本の翌営業日ということになりかねません。

このような迅速な判断が求められる場面での意思決定の遅延は、被害の拡大を招き、入居者や近隣住民との新たなトラブルに発展するリスクを孕んでいます。

また、契約書や重要事項説明書といった専門用語が並ぶ書類の取り扱いも重要です。単に日本語の契約書を翻訳ソフトで英訳して渡すだけでは、法的なニュアンスが正確に伝わらず、後々のトラブルの原因となります。かといって、専門家による正確な翻訳を依頼すれば、数万円から数十万円のコストが発生します。この翻訳コストを誰が負担するのか、事前に明確な取り決めをしておかなければ、契約締結の段階で揉めることになりかねません。

海外送金の複雑さとリスク

無事に契約が締結できても、家賃の送金や売買代金の決済という次のハードルが待っています。オーナーが日本国内に銀行口座を持っていない場合、海外送金を選択せざるを得ませんが、これには複数の課題が伴います。

  • 高額な手数料: 送金手数料、中継銀行手数料、受取手数料など、一度の送金で数千円から一万円以上のコストがかかることも珍しくありません。
  • 為替変動リスク: 送金時の為替レートによって、オーナーの手取り額は常に変動します。円安が進めばオーナーは喜びますが、円高に振れれば手取りが減り、不満の原因となる可能性があります。
  • 着金までの時間: 海外送金は、国内送金のように即時・当日着金とは限りません。経由する国や銀行によっては、着金までに数日から1週間以上かかることもあります。

これらのコストやリスクを誰が負担するのか、事前に合意形成しておくことが不可欠です。

 

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第2章:税務面の落とし穴【最重要】

数ある落とし穴の中でも、最も重大かつ見落とされがちなのが「税務」に関する問題です。特に「源泉徴収」の知識不足は、不動産会社や取引の相手方に直接的な金銭的損害をもたらすため、絶対に押さえておかなければなりません。

知らないと自腹を切る「源泉徴収」の罠

日本の所得税法では、非居住者に対して国内で発生した特定の所得を支払う際に、支払う側が所得税を天引き(源泉徴収)し、国に納付する義務を定めています。不動産取引においては、主に「賃料」と「売買代金」の2つが対象となります。

 

【ケース1:賃料の源泉徴収】

非居住者であるオーナーに賃料を支払う**「賃借人(借主)」**には、原則として源泉徴収義務があります。

  • 源泉徴収税率: 支払う賃料の20.42%
  • 納付期限: 賃料を支払った月の翌月10日まで

しかし、ここには非常に重要な例外があります。 賃借人が「個人」であり、かつその物件を「自己またはその親族の居住用」として使用する場合は、源泉徴収義務が免除されます。

つまり、問題となるのは以下のケースです。

  • 賃借人が「法人」の場合(社宅契約など)
  • 賃借人が「個人」であっても、店舗や事務所など「事業用」として使用する場合

これらの場合、賃借人は支払う賃料から20.42%を差し引き、税務署へ納付しなければなりません。例えば、月額賃料が30万円であれば、58,740円(※計算簡略化)を源泉徴収し、残りの約24万円をオーナーに支払うことになります。

《落とし穴ポイント》 管理会社がオーナーから賃料全額を預かり、そこから管理費等を差し引いてオーナーへ送金しているケースは非常に多いでしょう。この時、賃借人が法人であるにもかかわらず、管理会社が源泉徴収の知識なく賃料の満額をオーナーに送金してしまうとどうなるか。後日、税務署からの指摘が入るのは、納税義務者である**「賃借人(法人)」**です。賃借人は本来納めるべき源泉徴収税額を追徴されることになり、管理会社に対して「なぜ教えてくれなかったのか」と厳しいクレームが入ることは必至です。管理会社が信義則上の責任を問われ、立て替え払いをせざるを得なくなるケースも十分に考えられます。

 

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【ケース2:売却代金の源泉徴収】

非居住者であるオーナーから不動産を購入する**「買主」**には、原則として売買代金に対する源泉徴収義務があります。

  • 源泉徴収税率: 支払う売買代金の10.21%
  • 納付期限: 代金を支払った月の翌月10日まで

例えば、5,000万円で物件を購入した場合、買主は代金支払いの際に10.21%にあたる510.5万円を源泉徴収し、税務署へ納付。残額の4,489.5万円を売主である非居住者オーナーに支払います。

《落とし穴ポイント》 このルールを知らずに、仲介会社が「売買代金5,000万円を売主様の口座へお振り込みください」と買主に案内し、買主がその全額を支払ってしまったらどうなるでしょうか。納税義務はあくまで**「買主」**にあります。税務署は買主に対して、510.5万円の納税を要求します。すでに全額を支払ってしまった買主が、海外にいる売主からこの510.5万円を返してもらうのは、極めて困難と言わざるを得ません。結果として、買主が二重払いの形で税金を負担することになります。当然、買主の怒りの矛先は、適切なアドバイスをしなかった仲介会社に向けられ、損害賠償請求に発展する可能性が非常に高い、最も恐ろしい落とし穴の一つです。

※売却代金の源泉徴収にも例外(売買代金が1億円以下で、買主が個人の自己居住用の場合など)はありますが、実務上は「非居住者からの購入は源泉徴収が必須」と覚えておくべきです。

縁の下の力持ち「納税管理人」の重要性

非居住者オーナーは、日本国内に住所がないため、納税に関する手続きを自身で行うことができません。そこで、オーナーに代わって確定申告書の提出や税金の納付、税務署からの書類受領などを行う代理人として**「納税管理人」**を選任し、税務署に届け出る必要があります。

固定資産税についても同様で、市町村(東京23区は都)に対して納税管理人の届出が必要です。これを怠ると、納税通知書がオーナー本人に届かず、税金を滞納してしまい、最悪の場合、物件が差し押さえられるという事態にもなりかねません。

実務上、不動産管理会社がこの納税管理人を引き受けるケースが多く見られます。しかし、これは単なる「書類の受取人」ではありません。確定申告のサポートや納税の管理といった責任が伴います。安易に納税管理人を引き受け、万が一申告漏れや納税遅延が発生した場合、その責任を問われるリスクもゼロではありません。納税管理人を引き受ける際は、業務の範囲と責任の所在、そして報酬について、オーナーと書面で明確に合意しておくことが極めて重要です。税務申告自体は、必ず提携する税理士に依頼する体制を整えるべきでしょう。

第3章:管理実務面の落とし穴

契約と税務のハードルを越えても、日々の管理業務において特有の難しさが待ち受けています。

トラブル発生時の対応遅延リスク

漏水、騒音、設備の故障といったトラブルは、賃貸管理において日常茶飯事です。国内オーナーであれば、電話一本で状況を報告し、修繕の承認を得て、迅速に対応することができます。

しかし、オーナーが海外にいる場合、前述の通り、連絡がつくだけで半日以上のタイムラグが生じます。やっと連絡が取れても、現物を見られないオーナーに被害状況や修繕の必要性を理解してもらうのには時間がかかります。写真や動画を送付し、複数の見積もりを提示して…と手続きを踏んでいる間に、被害が拡大し、入居者や隣人から損害賠償を請求される事態に発展しかねません。

また、緊急修繕で管理会社が費用を立て替えたものの、オーナーがその金額に納得せず、支払いが滞るといった金銭的なトラブルも起こり得ます。

「管理委託契約書」が命綱になる

こうしたリスクを回避するためには、オーナーとの間で締結する**「管理委託契約書」**の内容が決定的に重要になります。通常の契約書に、非居住者オーナー向けの特約を盛り込むべきです。

  • 修繕に関する事前承認の範囲: 「〇万円以下の軽微な修繕については、管理会社の判断で実施し、事後報告とする」といった条項を設ける。
  • 緊急時の対応権限: 漏水など、緊急性が高く、放置すれば被害が拡大する恐れのある事案については、管理会社が必要な応急措置を講じる権限を持つことを明記する。
  • 連絡不能時の措置: 「〇日以上連絡が取れない場合は、管理会社が合理的と判断する方法で対応できる」といった条項も、万が一の備えとして有効です。

どこまでを管理会社に委任してもらうのか。その権限と責任の範囲を、契約時に一つひとつ丁寧にすり合わせ、お互いの共通認識を書面に残しておくことが、将来のトラブルを防ぐ最大の防御策となります。

退去・リフォーム・再募集の壁

入居者の退去が発生した際も、課題が山積みです。

  • 原状回復と敷金精算: 原状回復費用の見積もりをオーナーに提示し、承認を得なければ敷金精算が進められません。この承認に時間がかかれば、退去者とのトラブルに繋がります。
  • リフォーム・設備交換の提案: 日本の賃貸市場の感覚では「この機会にエアコンを新しくしましょう」「壁紙をこのデザインにすれば次の入居者が決まりやすいです」といった提案も、現物を見られない、かつ文化や価値観の違うオーナーの理解を得るのは一筋縄ではいきません。丁寧な説明資料の作成が不可欠です。
  • 再募集の条件設定: 新しい賃料や募集条件を決めるのにも、オーナーとのやり取りに時間がかかり、結果として空室期間が長期化するリスクが高まります。

これらの業務を円滑に進めるためには、日頃からオーナーとの信頼関係を構築し、「プロとして最適な提案をしてくれている」と認めてもらうことが何よりも重要です。

まとめ:リスクを制する者が、チャンスを制する

外国人(非居住者)オーナーの物件は、本稿で見てきたように、契約、税務、実務の各段階で、国内案件にはない複雑な落とし穴が数多く存在します。特に、源泉徴収義務をはじめとする税務リスクは、知識がないまま関わることの危険性を如実に示しています。

しかし、これらのリスクは、決して乗り越えられない壁ではありません。重要なのは、以下の3つの原則を徹底することです。

 

  1. 安易に引き受けない: 自社に専門知識と対応体制が整っているかを見極め、難しいと判断すれば断る勇気も必要です。
  2. 専門家と連携する: 税務に関しては、必ず非居住者の案件に精通した税理士と連携する体制を構築する。法務に関しても、必要であれば弁護士に相談する。
  3. 事前にルールを決める: 管理委託契約書等で、権限、責任範囲、費用負担、緊急時の対応などを可能な限り詳細に定め、オーナーとの間で明確な合意を形成しておく。

 

これらの準備を怠らず、正しい知識で武装すれば、落とし穴は「管理可能なリスク」に変わります。そして、リスクを適切に管理できる不動産会社は、多くの競合が参入をためらう市場で、外国人投資家から「信頼できるパートナー」として選ばれ、大きなビジネスチャンスを掴み取ることができるでしょう。本コラムが、皆様の今後の業務の一助となれば幸いです。

 

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