近年、私たちの生活はIoT(Internet of Things)技術の進化により、急速に便利になりつつあります。その中でも、スマートロックは、賃貸物件のオーナー様にとって、物件の価値向上と管理の効率化を実現する強力なツールとして注目を集めています。
「鍵の紛失」「入居者入れ替え時のシリンダー交換」「内見時の鍵の受け渡し」など、従来の鍵管理が抱えていた煩雑な課題をスマートに解決してくれるスマートロック。しかし、新しい技術であるがゆえに、「本当に自分の物件に導入して大丈夫だろうか?」と疑問や不安を抱えているオーナー様も少なくないでしょう。
本コラムでは、賃貸物件へのスマートロック導入を検討されているオーナー様が、その判断を下すために必要な、導入のメリット・デメリット、そして適切な製品選びと運用に関する具体的なアドバイスを、徹底的に解説していきます。
1. スマートロックとは何か?賃貸物件における基礎知識
まず、スマートロックとは何かを明確にしておきましょう。
1-1. スマートロックの定義と仕組み
スマートロックとは、既存のドアのサムターン(内鍵のつまみ)などに後付けしたり、錠前ごと交換したりすることで、スマートフォンや専用のリモコン、暗証番号、ICカードなどを使って鍵の施錠・解錠を電子的に行うことができる機器の総称です。
多くの製品は、BluetoothやWi-Fiといった無線通信技術を利用しており、スマートフォンアプリからの操作や、遠隔地からの操作を可能にします。
賃貸物件で主流となるのは、主に以下の2種類です。
| 種類 | 概要 | 設置の容易さ | 特徴 |
| 後付け型(サムターン式) | 既存のドアに粘着テープなどで貼り付け、サムターンを機械的に回すタイプ。 | 非常に容易 | 工事不要。原状回復が容易で、賃貸物件に最も適している。 |
| 交換型(錠前一体型) | 既存のシリンダー錠や暗証番号錠などと交換するタイプ。 | 専門的な工事が必要 | 高いセキュリティ性。デザイン性が高い。 |
賃貸物件のオーナー様にとっては、原状回復の義務や工事の簡便さの観点から、**後付け型(サムターン式)**の製品が最も現実的な選択肢となります。本コラムでも、この後付け型を中心として議論を進めます。
1-2. 従来の鍵との決定的な違い
従来の物理鍵とスマートロックの最大の違いは、**「鍵のデータ化」**にあります。
- 物理鍵: 「モノ」であるため、紛失すれば交換が必要。合鍵の複製・受け渡しに手間とコストがかかる。
- スマートロック: 「アクセス権限」がデータ化されており、スマートフォンなどで管理される。遠隔で権限の付与・剥奪が可能。
この「鍵のデータ化」こそが、賃貸管理のあり方を大きく変える可能性を秘めているのです。
2. 【オーナー様にとっての】スマートロック導入の7つのメリット
賃貸物件にスマートロックを導入することで、オーナー様は以下のような多大なメリットを享受できます。これは、物件の**「資産価値向上」「管理効率化」「コスト削減」**に直結します。
2-1. メリット1:鍵交換・シリンダー交換コストの削減
🚪 入居者入れ替え時のコストゼロへ
従来の物理鍵の場合、防犯上の理由から入居者退去時には必ずシリンダー交換を行うのが一般的です。その費用は1回あたり1万5千円~2万円程度。
スマートロックであれば、入居者入れ替え時に行うのは**「旧入居者のアクセス権限の削除」と「新入居者へのアクセス権限の付与」のデータ操作のみです。シリンダー交換という物理的な作業が不要になるため、この交換費用がゼロ**になります。
特に、入居者入れ替えの頻度が高い物件(例:マンスリー・ウィークリーマンション、学生向け物件)では、その経済効果は計り知れません。
2-2. メリット2:内見・退去立ち会いなどの効率化
🏡 現地に赴く手間を削減
賃貸管理において、内見時や退去時の立ち会いなど、鍵の受け渡しや開錠のためにオーナー様や管理会社が物件に赴く手間は大きな負担です。
スマートロックを導入すれば、以下のことが可能になります。
- 内見: 不動産業者や希望者に、内見時間帯のみ有効な**「一時的なアクセス権限(ワンタイムパスワードなど)」**を遠隔で発行できます。物件前で待ち合わせる必要がなくなり、機会損失の減少にもつながります。
- 清掃・修繕: 清掃業者や設備業者に、作業時間内のみ有効な鍵を発行でき、現地での鍵の受け渡しが不要になります。
- 退去立ち会い: やむを得ず立ち会いができない場合でも、遠隔で鍵の施錠状況を確認できます。

2-3. メリット3:セキュリティ・防犯性の向上
🛡️ 不正な合鍵作成のリスクを排除
従来の鍵では、入居者が勝手に合鍵を複製し、退去後に複製した鍵が不正に利用されるリスクがありました。
スマートロックはデータ管理であるため、物理的な合鍵の不正作成は不可能です。オーナー様(管理者)がアクセス権限を完全にコントロールできるため、セキュリティ性が大幅に向上します。
また、多くのスマートロック製品には**「オートロック機能」**が搭載されており、ドアが閉まると自動で施錠されるため、入居者の「鍵のかけ忘れ」による空き巣被害のリスクも低減できます。
2-4. メリット4:入居者満足度の向上(物件の魅力アップ)
✨ 最新設備で競争力アップ
特に若年層やテクノロジーに抵抗のない層にとって、スマートロックは**「便利で新しい設備」**として大きな魅力となります。
- 手ぶら解錠: スマホを持っていれば、鍵をポケットから探す必要がない。
- 鍵の紛失リスク軽減: 物理鍵を紛失する心配がない。
- 生活のスマート化: 他のスマートホーム機器(スマートスピーカー、照明など)との連携も期待できる。
競合物件との差別化を図り、入居率の向上や家賃維持の一助となります。
2-5. メリット5:履歴の確認(ログ管理)
📝 「いつ」「誰が」「鍵を開けたか」がわかる
多くのスマートロックは、**「誰が、いつ、鍵を開けたか(施錠・解錠したか)」**という履歴をアプリ上で確認できます。
これは、管理上非常に重要な情報となります。例えば、以下のようなケースで役立ちます。
- 業者作業の確認: 依頼した業者が約束の時間に作業を始めたかを確認できる。
- トラブル対応: 万が一の盗難や入居者間トラブルが発生した際、事件性の有無を判断するための情報の一つとなる。
2-6. メリット6:鍵の紛失リスクの軽減と対応の容易さ
🔑 物理鍵の再発行不要
入居者が物理鍵を紛失した場合、オーナー様や管理会社は鍵の交換費用を請求するか、入居者に費用負担を求める必要があり、関係性がギクシャクすることもあります。
スマートロックであれば、スマートフォンを紛失した場合でも、管理者側で即座にそのスマートフォンのアクセス権限を削除できます。そして、新しいスマートフォンにアプリを再設定するだけで済み、物理鍵の交換のような緊急対応や高額な費用は発生しません。
2-7. メリット7:賃貸契約の柔軟化(ショートステイ対応)
スマートロックは、短期賃貸(例:民泊、短期出張者向け)や、シェアハウスなど、入居者の入れ替わりが頻繁な物件管理に最適です。
期間を限定したアクセス権限を自動で設定・失効させることができるため、鍵の引き渡しや回収の手間を完全に排除し、無人でのチェックイン・チェックアウトを実現できます。
3. 【オーナー様が知っておくべき】スマートロック導入の4つのデメリットと対策
スマートロックは非常に便利ですが、導入前に認識しておくべきデメリットも存在します。これらのリスクを理解し、適切な対策を講じることが重要です。
3-1. デメリット1:電池切れ・故障のリスク
🔋 動作の電源はバッテリー
スマートロックの最大の弱点は、**電源(バッテリー)**に依存していることです。電池が切れると、解錠できなくなるリスクがあります。
【対策】
- 通知機能の活用: ほとんどの製品には、電池残量が少なくなるとスマートフォンに通知が来る機能があります。入居者や管理会社に対し、通知を無視しないよう周知徹底します。
- 非常用電源の確保: 製品によっては、外部からモバイルバッテリーなどで給電できる「非常用電源ポート(例:Micro USB)」が搭載されています。この機能がある製品を選び、入居者にその存在と使用方法を説明しておきます。
- 物理鍵の併用: 後付け型は、ほとんどの場合、従来の物理鍵も併用可能です。万が一に備え、入居者には物理鍵を常に携帯してもらうよう義務付けます。
3-2. デメリット2:スマートフォン操作への依存
📱 入居者のITリテラシーへの配慮が必要
スマートロックはスマートフォンでの操作が前提です。
- スマートフォンを持っていない入居者
- スマートフォンの操作が苦手な高齢者
- アプリの不具合やスマホの充電切れ
上記のような場合、鍵の利用に支障をきたす可能性があります。
【対策】
- 複数の解錠方法の提供: スマートフォンだけでなく、暗証番号(テンキー)やICカード(FeliCa、Mifare)、専用のリモコンキーなど、複数の解錠手段を持つ製品を選定します。
- 導入物件の選定: 高齢者向けの物件や、IT機器の利用に慣れていない層が多い物件への導入は慎重に検討するか、物理鍵をメインとし、スマートロックを補助的な手段とする運用を検討します。

3-3. デメリット3:初期導入コストと通信環境の整備
💰 製品購入費用とWi-Fi接続の必要性
物理鍵の交換費用は削減できますが、スマートロック自体の製品購入費と設置費用という初期投資が発生します。製品にもよりますが、ドア1枚あたり1万円~4万円程度が目安です。
また、遠隔操作や履歴確認を行うためには、物件内に安定したWi-Fi環境が必要です。後付け型の場合、ほとんどがBluetooth接続ですが、Wi-Fiを経由させるための**「Hub(ハブ)**」と呼ばれる中継機を別途設置する必要があります。
【対策】
- 費用対効果の検証: シリンダー交換費用を何回分削減できるかで、投資回収期間を計算します。
- Wi-Fi環境の整備: 遠隔管理が必要な場合は、Wi-Fi環境をオーナー費用で提供するか、入居者にWi-Fi設置を求める必要があります。物件全体にWi-Fi設備を導入すれば、前述の「入居者満足度の向上」にも寄与します。
3-4. デメリット4:設置に関する法的・規約上の問題
📜 管理規約と原状回復義務の確認
賃貸物件では、勝手にドアに穴を開けたり、既存の設備を撤去したりすることはできません。
【対策】
- 管理規約の確認: マンションなどでは、管理組合の規約で「共用部分である玄関ドアへの加工」が禁じられている場合があります。事前に管理組合に確認を取ります。
- 後付け型の選定: 前述の通り、粘着テープで貼り付けるタイプの後付け型を選定することで、ドア本体への加工は不要となり、原状回復の義務を容易にクリアできます。
4. 賃貸物件オーナーのためのスマートロック製品選びと運用のポイント
スマートロックの導入を決断した場合、成功に導くための製品選びと運用方法が重要になります。
4-1. 製品選びの3つの重要チェックポイント
| No. | チェックポイント | 選定理由とオーナーにとってのメリット |
| 1 | 対応する解錠方法の多様性 | スマホ、暗証番号(テンキー)、ICカードなど、複数の方法に対応していると、入居者の利便性が高まり、ITリテラシーの個人差に対応できる。 |
| 2 | 遠隔操作(Wi-Fi Hub)の機能と価格 | 遠隔での権限付与・剥奪、履歴確認は、管理効率化に不可欠。Hubが必須か、セット価格はいくらかを確認する。 |
| 3 | 日本の住宅規格への適合性 | 日本のドアは欧米と構造が異なることが多い。日本の主要メーカー(例:Qrio、Sesame、RemoteLOCKなど)の製品は、日本のサムターン形状に対応しているか、また、ドアとの相性(デッドボルトの位置など)を確認する。 |
4-2. 入居者への説明とルール設定
スマートロックを導入する際は、入居者との間で明確なルールを設定し、トラブルを未然に防ぐことが不可欠です。
- 物理鍵の保管義務: 「物理鍵は必ず非常用として携帯・保管すること」を賃貸契約書や重要事項説明書に明記します。
- 電池交換の責任: 「電池が少なくなった際の交換は入居者の責任で行うこと」を明確にし、交換する電池の種類も指定します。
- 故障時の連絡先: スマートロックが作動しない場合の緊急連絡先と、手順を周知徹底します。
- オートロック機能の周知: オートロック機能をONにする場合は、「鍵を持たずゴミ出しに行くと閉め出される」といった注意点を事前に伝えます。
4-3. 既存設備との連携を考慮する
もし、物件にオートロック機能付きの集合玄関機がある場合は、スマートロックの導入で、エントランスと玄関の2つの鍵を持つことになります。
エントランスの鍵もスマートフォンで解錠できるシステム(例:特定のメーカーが提供する「非接触キー」対応システム)と連携できれば、入居者の利便性はさらに向上します。将来的な設備投資計画を見据え、システム連携の拡張性も視野に入れると良いでしょう。
5. まとめ:スマートロック導入は「未来への投資」
「賃貸物件でもスマートロックで快適生活!!?」という問いに対する答えは、**「イエス」**です。
スマートロックは、単に鍵を電子化した機器ではなく、オーナー様の**「時間」「コスト」「安心」**を創出する、**賃貸管理のDX(デジタルトランスフォーメーション)**を担う重要なツールです。
- ✅ コスト削減: 鍵交換費用や現地移動時間の削減
- ✅ 管理効率: 遠隔での鍵管理・内見対応
- ✅ 物件競争力: 最新設備による入居者満足度の向上と差別化
もちろん、電池切れや操作への依存といったデメリットはありますが、これらは**「非常用物理鍵の携帯義務付け」や「暗証番号・ICカードの併用」**といった適切な運用で、ほぼ解決が可能です。
スマートロックの導入は、一時的な初期投資ではなく、**物件の将来的な競争力を高め、オーナー様の管理負担を軽減する「未来への投資」**と捉えることができます。
まずは、管理会社と相談し、導入しやすい後付け型の製品から、物件の一部に試験導入を検討されてはいかがでしょうか。この小さな一歩が、貴社の賃貸経営を大きく進化させるきっかけになるはずです。
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